表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春の樹木と薬術師  作者: 白いキリン
6/6

第六話 ☆(天性)


三話連続投稿の三話目になります。


これで本日の投稿は以上です。



読んでくださる方もいらっしゃるので、とても嬉しいです。

これからもよろしくお願いいたします。



―――――――――――――――――――――――





「ん…朝か……っ!!??? あ、そういえばそうだった。」




 自然に目が覚めてあたりを見渡すと、まったく知らない部屋に居た。 ――わけではなく、ここはフェリとファラさんの家の一室だ。 昨日この知らない世界…異世界にやってきて、一夜明けて初めての朝、2日目だ。




 窓を開けるとまだ少し肌寒い。 窓からの風で部屋の空気が入れ替わるのを肌で感じる。 振り返って部屋を見渡すと、机の上にはこの地域のものらしい男物の服と、「お父さんのお古だけど、使ってね」と書かれたメモが置いてあった。 ずっとこのシャツとジーパンを着続けるのは嫌だし、ありがたく使わせてもらった。 少し大きいぐらいのサイズだが、わがままは言えない。



 着替えが終わり、ふと窓から外を見てみると、家の近くの林 ―青々とした木々に囲まれながら、枯れてしまったような一本の木が見えた。 何故周りの木は青々としているのに、その一本だけが枯れているのだろうか。



 そしてそこへ向かう一人の女性、ファラさんの姿が見えた。 その姿を見ていると、ファラさんはその枯れてしまった木に何かを振りかけ、願いを込めるように手を組んだ。 その枯れ木は何か特別な木なのだろか…。




「ハルキ、起きた? そろそろ着替えて朝ごはんを食べましょう!」



「起きてるから大丈夫。 いま行くよ。」



 朝からお嬢様は元気満々である。 もう既に着替えてあるので、簡単に顔回りをチェックして、朝食へと向かう。



「あらあらハルキくん、おはよう。 お父さんの服も似合うわねぇ…惚れ惚れしちゃうわ。」



「…鼻の下伸ばしてるんじゃないわよ」



 丁度戻ってきたファラさんに、借りた服を褒められてしまう。 そしてギロリと睨むフェリ。 褒め言葉に少し照れただけじゃないか…そんな鋭い目はやめてほしい。 その目は獲物を狙う肉食獣の様な目だ。




――――――――――





「そろそろ行ってくるわ。 昼前までには帰ってくる。」



「気を付けて行ってくるのよ。 ハルキくんも、気を付けてね?」



「ギルドに行くだけだから大丈夫ですよ。 行ってきます!」




 朝食を頂き、ファラさんに見送られながらフェリと出かける。 向かうのは家から徒歩で20分ぐらいの村のギルド支部に向かう。 この村で居候することになるため、住民登録のようなものが必要らしい。 合わせて武器や防具もギルド支部で手に入るそうだ。 



 村の一角。 フェリはそこで立ち止まり、「ここよ」と案内してくれた。 他の家々と同じような大きさの建物が、そのギルド支部のようだ。 何かの紋章が飾られたドアをくぐると、活気のある声が聞こえてきた。




「いらっしゃいませ! あら、フェリさん今日もお疲れ様ですっ! そちらの方は…初めて見るお顔ですが、お知り合いですか?」



 カウンターの奥には、白い髪から犬耳が生えた女性が元気そうにこちらを見ていた。 フェリと同じ[獣人族]のようだ。 ドアに飾られていた紋章と同じものがついたエプロンを身につけているため、ギルドの職員なのだろう。



「パールもお疲れ様。 話は村長から聞いてないかしら? 昨日からこの村に住むことになったハルキよ。 今日はギルド登録とステータス確認、あと適正を見て武器と防具が欲しいわ。」



「あぁ、確かおじいちゃんがそんなこと言ってたような言ってなかったような…。 まぁいいや! ともかく、ギルド登録とステータス確認ね。 ちょっと待ってて!」



 どうやら村長のお孫さんでパールというお名前のようだ。 確かに村長と同じ白い髪に犬耳だから、そう言われれば納得も出来る。 だが村長と違い、賑やかそうな人だ。





 少しすると、何やら石のようなものを持って戻ってきたパールさん。 そしてカウンターの上にあった箱型の機械の様な物の上にそれを置くと、パールさんがカウンターを超えてこちらにやってきた。



「ここに、手を置いてね!」



 その機械の前面には、不思議な穴が空いていた。 空いた穴には、ちょうど手形のようなくぼみがある。 パールさんに腕を取られ、若干無理やりそこに手を置かれると、なんと先ほど置いた石が光りはじめた。…と同時に、手のひらから何かが引き抜かれるような感覚を感じた。



「こ、これ大丈夫なんですか!?」



「大丈夫大丈夫。 気にしなーい!」



 驚きのあまりとっさに手を引こうとしたが、パールさんに腕ごとガッシリ掴まれて動けない。 意外に力が強いんだなこの人…。 しばらくすると石の光がゆっくりと消え、機械からクリスタルの結晶板のようなものが出てきた。



「はい、おーわり! これ、あなたの『ギルド登録証』ね!」



「ありがとう…ございます。」



 そう言って機械から出てきた結晶板を手渡された。 その結晶板をよく見ると、見たことが無い言語だが、なぜか読める文字で俺の名前が書いてあった。 それ以外には何も書いていないが、クリスタルの輝きがとても綺麗だった。 その輝きに見惚れていると、隣から声がかかった。



「ほらハルキ、それをここに置いて。」



 フェリにそう言われたところには、また別のミニサイズのテーブルのようなものが置いてあった。

 言われた通り、テーブルの上に結晶板を機械の上に置くと、テーブルが光りはじめ、文字が浮かび上がった。 数字と思われる文字や記号が各所に書かれているため、おそらく、これが俺のステータスになるのだろう。





名前 ワタヌキ ハルキ

Lv 1


体力 4

魔力 8

腕力 4

知力 4

敏捷 3

器用 6

 運 2


スキル

☆<<薬術>> F





「なぁフェリ、この☆が付いているのはなんだ?」



「それは天性のスキルよ。 あなたが生まれ持ってきたスキルにはその☆がつくの。 天性があるスキルはスキルレベルが上がりやすくて、上達しやすいらしいわ。」



「そうなのか。 ついでだが、このステータスは…高いのか?」



「そうね、平凡……というよりは更に下ね。 魔力の値は平均よりは高いから、魔力保有量は多いのかもしれないけれど。」



「そうか…。」




 はっきりと『平凡よりも更に下』と言われて凹む。 せっかく“こういう”世界に来たのだから、よくある勇者のようなステータスを期待していたが…そんな奇跡はやはりありえないようだ。






「って、よく見たら<<薬術>>じゃない!! お母さんと同じ薬師になれるわよ! これでウチの経営も安定するし…お母さんに報告しなきゃね。」



 俺が天性で<<薬術>>を持っていたためか、ニコニコ上機嫌なフェリお嬢様に苦笑いを返すしかない春樹。 まぁ、役に立てることが一つでもあるなら、お邪魔虫にならずに済みそうだ。 家に帰ったら本棚の本でも読んで勉強することにしよう。



 ついでに、初心者用の装備らしきもの ―銅色をしたショートソード、採集や剥ぎ取り用のナイフ、皮で作られた胸当てとグローブ・ブーツ、薄い革製のリュック・ウエストポーチをもらった。 戦闘用の道具もあるってことは、やっぱり戦わなきゃいけないんだな…。



「もし【ウォルフ】とかの魔物が出てきたらどうするかなぁ…」



「一先ずは戦ってみるのがいいわ。 自分の限界を知って、無理なら逃げ出しなさい。 意外にああ見えて【ウォルフ】は足が遅いから、あなたでも逃げられるわ。」



 確かに、この前必死に逃げた時には振り切れたし、そこまで足は速くないらしい。 しかし、戦わなければならない場合も時にはあるだろう。 俺自身のためにも、ためしに戦ってみるか…めちゃくちゃ怖いけど。






「それじゃぁ、お母さんに<薬師>の卵の話もしなきゃいけないし、午後は私も仕事があるから戻るわよ。 パール、今日はありがとう。」



「いえいえ御気になさらず! 私は私の仕事を果たしたまでですから! でも、最近じゃ来てくれる人も少ないので、良かったらまた来てくださいね! 特にハルキさん、あなたは初心者なんだから来なきゃだめですよ? というか来なさい!!」



「あはは…またお邪魔させて頂きますね。」




 ぐいぐいと押されてまた来る約束をしてしまったが、このギルドというのは自分では不要になった魔物の素材や、鉱石・薬草なども買い取ってくれるらしい。 これからおそらくファラさんの手伝いで、そういった物を手に入れる機会は出来るだろうし、お世話になりそうだ。 必要な道具も手に入ったし、これからファラさんの素材集めも気を引き締めて行こう。





―――――――――――――――――――――――



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


ご指摘やご感想を頂けましたら、幸いです。


また数日後、三話分を投稿します。


それでは、またお会いしましょう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ