第一話 プロローグ
なろうへの初投稿となります。
至らない部分が多々あるかと思いますが、見つけられた際にはご指摘をお願いいたします。
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「ふぅ…あっちぃ…」
雲一つない空から日差しが照りつける。 梅雨入り前の6月の青空はとても綺麗だ。 いつもだったらこの時間は友人達とカラオケなりゲーセンなりに遊びに行っている時間だが、今日は丁度何も予定がなかった。
では何をするかと言えば、うちの庭にある家庭菜園の作物を収穫する。 庭いじりは嫌いじゃないし、どちらかと言えば好きな方だ。 だがこの暑さは参ってしまう…強い日差しのせいで、気温はいつも以上に高い気がする。
暑いけど、一度収穫し始めると止まらなくなってしまった。 今日収穫した野菜はナス、ピーマン、トマト、葉ネギ。果物はブルーベリー、ボイセンベリーだ。 家の庭はそれなりの広さがあり、ちょっとした畑の様な状態になっている。 それもこれも母親が趣味で家庭菜園を始めたと思ったら凄まじいスピードで広がっていったからだ。
「今年も良い出来だな。」
その中でもひときわ大きいナスを発見し、なんだか嬉しくなってしまう。 近くのスーパーに行っても、これだけ立派なナスはなかなか見ないだろう。 我が家で採れた野菜と果物は軒並み大きくて瑞々しい。 それが何故なのかは分からないが、まぁ良いことに越したことはないだろう。 母親の育て方が良いのかもしれない…と思ったが、あの大ざっぱさから言えば、それはなさそうだ。
タオルで汗を拭いながら、庭の脇に置いてある石に腰掛ける。 黒い髪は汗を吸って重くなり、毛先から汗が滴っている。 気温自体はそこまで高くないだろうが、日差しもあるし、しゃがんだり立ったり運んだりを繰り返すこともあり、かなりの体力をもっていかれる。
汗を拭っていると、ちょうど近くにやってきた”黒いの”に手を近づける。
「よしよし…今日も大漁だぞ? 少し食うか?」
黒い毛並の犬『カカ』は野菜が好物だが、一番の好物は俺が初めて家庭菜園で育てた果物、ブルーベリーだ。 味を占めてからは見つけるとすぐねだられる。 しつけの為にも、あまりあげないようにはしているのだが、そうするとすぐ「クゥーン」と子犬のように鳴きはじめる。 それが可愛くて、ついついあげてしまうのだ。
このブルーベリーを初めて育てたときはプランターだったし、勝手も分からず四苦八苦し、母親にいろいろ小突かれながらどうにか実に生ったのが、この果物だった。 それからというもの、母親と一緒になって家庭菜園をいじるのが最近の楽しみだったりする。 今日は母親と父親は仕事で家には居ないが、土曜日で予定もないため、思う存分にいじりまわしている。
「あ…おい、カカ!! それはダメだ!」
カカが籠の中から野菜を一つ加えて行ってしまった。 しかもそれは動物に与えてはいけないネギ。 もし食べてしまったら、体調を壊してしまうのは既に一度経験しているため知っていた。 急いで取り戻す必要があるのだ。 そうこうしているうちにカカはネギをくわえて走って行った。
「カカ、待て! それはお前が食っちゃダメなんだって!!」
必死になって追いかけているが、俺自身は運動しているわけでもないし、むしろ疲れているせいか、一向に近づけず、庭を走り回る。 おそらくカカは遊んでいる気分なのだろう。 走り回るカカは尻尾を振りながら楽しそうにこちらを見ながら走っている。 主人は必死になっておいかけている。 傍から見たらお笑いものだろう。
「おい! 外は危ないって!! ―――クソッ」
寸でのところで交わされ続け、しまいには庭から外へ走り出て行こうとした。その時、横からトラックが走ってきているのが見えた。 トラックはカカに気づいていないのか、スピードが落ちる様子もない。
スローモーションのような感覚の中、必死にどうすれば良いかを考えたが、次の瞬間には全力で飛び出していた。 死なせるわけにはいかない。 そう考えながら必死に走り、そのままカカを抱えて道路脇に飛び出す…算段だったが、水分も取らずに走り続けていた影響か、体が石のように重く、思ったように動けなかった。
―― キィィイィイイイッ…
人が見えて急ブレーキを踏んだのだろう。 金切り声のような音を立てたトラックだが、間に合う訳もなく、鈍い音を立てて俺は背中から衝突した。 体中から空気が抜けるような感覚の後、ゴロゴロとカカを抱えたまま転がって衝撃を殺す。 意識が朦朧とする中、腕の中からカカが抜け出し、顔を舐めるのが分かる。 徐々に意識が薄くなっていく。 残った体力で『死にたくない』と叫んだが、その声が口から出てくることは無かった。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
一応、数話書きためてあるので、連続で投稿いたします。
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