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今日もぱっくんサメ日和  作者: 朝日奈徹
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LINEで広まる噂

授業中LINEでまわってきたURLを見ると、そこにはあざらく神社の場所が示されていた。

半信半疑で放課後そこへ向かった語り手は、赤いフェルトペンで憎たらしい教師の名前をサメ石に書き込むが……。

『ねえねえ、あざらく神社の噂って知ってる?』

 授業中にLINEまわってくるから、通知はマナーモードにしてる。

『なにそれ』

『死んで欲しい人の名前書いておくと、サメが出て来てぱくって食べちゃうって』

『何いってんの』

『あり得ないでしょ。てか、単なる都市伝説じゃね』

 あたしも聞いた事はあった。聞いたっていうか、ネットで読んだっていうかね。

 あざらく神社っていう神社の裏に、サメに似た石があって、その口の中に死んで欲しい人の名前と生年月日を赤で書くんだったかな。

 その時、いきなりURL貼った奴がいた。

『その神社ここだろ』

 ……え。

 思わず、休み時間になってからこっそりそのURLのぞいてみた。

 そうしたら、意外にも学校の近くの小さな神社、らしい。

 ふうん。そうなんだ。

 人を殺したいとか思った事は、あたしにはない。

 でも、なんか凄くもやもやすることはある。

 うるさい親とか。

 あ、でもさすがに、親に死んで欲しいとかは思わないよ。

 うん、あとはやっぱり教師かな。どうしても嫌いな教師っているよね。

 あたしの場合は、英語の別田っていう先生。

 女子生徒にはねちねち、粘着するんだよあの先生。知らない?

 男子は知らないかもしれないね。

 それで、あたしはこっそりその神社に行ってみる事にした。一度駅の近くまでいって、百均で赤いフェルトペンだって買っていった。

 なにかこういうのってさ。

 一人で誰にも見られないようにやらないとだめって感じがするじゃない。

 少なくとも、あたしは、そうだ。

 神社の建物の後ろに回ってみると、確かに石らしいものが置いてある。ちょっと離れてみれば、サメに見えなくもない、かも。

 誰もいないことを何度も確認して、サメの口と思われるあたりにあたしはしゃがんだ。

 口の部分は、少しへこんでいる。

 誰かが名前とか書いたあとはない。

 ほんとにこれなのかな。

 まあ、いいや。

 冗談だと思って。

 あたしはスマホのメモを呼びだし、別田のフルネームと生年月日をフェルトペンで石に書き込んだ。


 それから一週間、何も起こらなかったけど、翌週の別田の授業の時だった。

 あたしはのっけから当てられちゃって、教科書の文章を和訳しないといけなくなった。

 ちぇ、こういう時に限って予習とかしてきていないんだもん、厭になるよ。

 さっきも言った通り、ちょっとでも間違えたりツッコミどころがあったりすると、ねちねちうるさいんだよ。

 今回も少しつっかかったところでねちねち始まったんだけど。

 いきなり、別田はしゃべるのをやめた。

 あたしはどうしたんだろうと思って、別田を見つめた。

 教室のみんなもしーんとなって、別田を見つめていた。

 あたしの席は教室の前から二番目だ。

 だから、見えた。

 とっても、よく見えた。

 あたしの指くらいの大きさの銀色のサメが、群をなして別田を喰っていくのを。

 まるで、一昔前のゲームのキャラが、エラーでポリゴン崩壊していくところみたいだった。

 血なんて一滴も出ない。

 音もしない。

 ただ、さあっと波が引くみたいに、小さなサメの群に食い尽くされていく。

 こうして、別田は教壇から消えたんだ。

 世間的には、たぶん、失踪ってことになったんだと思う。

 あたしを含めて、誰も本当の事は言わなかったから。

 言っても、信じてもらえないじゃん。

 あなただったら、信じる?

 面と向かってこんな話されたら信じないでしょ。

 だから、あたしは、ネットに書き込んだ。

 ネットでなら、嘘かほんとかわからない話が氾濫してる。

 信じたい人だけが信じればいいんだ。

 そして、死んで欲しい相手がいる人が、試せばいいよ。

『ねえ知ってる、日本のどこかに、あざらく神社っていう神社があってね……』


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