幻怪研の夏
あそこがあざらく神社じゃないか、という仲間の話にのって、幻怪研の面々は小さな神社にやってくる。
裏には確かに石らしきものが置いてあったが、どうみてもサメには見えなかった。
ところがそこで仲間の一人が行方不明に?
あざらく神社裏のサメ石を探し、口の中に死んで欲しい人の名前と生年月日を赤で書く。そうしたら、そいつは消えてくれる。
もうネットでは有名な都市伝説だけど、あざらく神社というのがどこにあるのかは全く資料がない。
「でも、あそこじゃないかと思うんだ」
弘の奴が、あそこじゃないかって言い出したのがちょうど夏休み前。俺たち、幻怪研は、それじゃみんなで行ってみようぜってことになったんだ。
あざらく神社(仮)は、学校の裏をちょっと入ったところにある、やけに狭くて急な階段を登った上にあった。ひとけはなく、社務所みたいなものなんか見当たらず、森閑としていた。
梅雨はまだあけてなかったけど、それはもう暑い日だった。
自販機ねえの、とか文句言いながら本殿の後ろにまわってみると、確かに大きな石が、でん、と据えてある。
「なあ、これサメなのかよ」
「ちがくね?」
「ただのながっぽそい岩みたいじゃね?」
なんかもう階段を登っただけで終わった気になってたんだな。ところが、義男だけが譲らない。
「これさあ、やっぱ俺サメだと思うよ。だってこっち側から見たら、口みたいな線が走ってるじゃん」
えー、マジかよとか言いながら義男のいる側に回ってみたけど、どうしてもサメには見えなかった。そもそも、口の中に名前を書かなきゃいけないっていう話なのに、線があるだけじゃ何にもならない。
俺も一応スマホで写メはとっておいたけど、あくまでも一応ってつもりだった。
その時、義男が石の端っこにかがみこんで何かしたんだ。
その時、いきなり目の前に巨大な口が現れて
政夫は結局、行方不明ということになった。
いきなりいなくなってしまったんだから、そう思うしかない。
あざらく神社(仮)の境内で何があったのか、俺たちには全く見当がつかなかった。
ただ、いつまでたっても戻ってこない政夫を待ちくたびれて,政夫が落としていったスマホを誰が拾ってきたんだったか。
たぶん、弘かな。
「で、結局あれってサメ石だったのかな」
「違うだろ」
めんどくさそうに義男が言う。
あの時、みんな神社でサメ石をスマホで写メったけど、後で見ても、のべっとした平たい石が置いてあるだけにしか見えなかった。
でも、政夫のスマホをいじっていた弘が、いきなりへんな声をあげたんだ。みんなでのぞきこんで見ると、登録画像のサムネイルの一番最後にあったものは、凄く奇妙な幾何学図形みたいなものだ。
弘がそれをタップした。
すると液晶一杯に映し出されたのは、どう見てもサメの口だったんだ……。
サメはいきなりどこへでも現れるのです。ご用心下さい。サメぱっくん。
但し、出現頻度はそんなに高くありません。