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今日もぱっくんサメ日和  作者: 朝日奈徹
3/6

スケートリンクのサメ

サメがぱっくんと人を飲み込んでいく、それも地上のどこででも!

そんな話を真面目に信じる人がどれだけいるだろうか。

でも「僕」はそれを目撃してしまったのだ。

 どうしてもどうしても死んで欲しい。そんな人が身の回りにいるといのが僕には想像できない。だから、ネットに流れるサメの噂も、ほんとに話半分に聞いていた。

 だって、海の中ならともかく、町中でもどこでも、いきなりサメが現れて人を食べていくなんてそんな話、ギャグでもなきゃ、あるかよ。

 僕の仲間内でもみんなそう思ってた。

 でも、その日、僕らは見てしまったんだ。

 今年リンク開きしたばかりのスケートリンク。暑い夏を涼しくすごしたい、それにはエアコンだけじゃだめだ! それで夏休みに誘い合わせて、その屋内リンクへ行くことにしたんだ。

 スケート靴を借りて、リンクに降りたって、まあスケートがうまい奴もいれば、初めての奴もいるし。

 そこはわいわいと楽しく滑ってた。

 もっとも、暑い夏のこと、同じ考えの人は多くて、リンクはけっこう混み合っていたと思う。

 僕はちょうど、友達と巻き込まれ転倒をして、お互いにぎゃあぎゃあ笑い合って、そのまま尻で滑れるんじゃね、なんて冗談言ってたんだけど、突然その友達が真顔で僕の腕をつかみ、リンクの中央を指さすんだ。

 僕は振り返った。

 そして、見たんだ……!

 リンクの真ん中が波打ったかと思うと、あり得ないものが出現したのを。

 大きなサメの頭が下から現れ、手をつないで滑っていたカップルをぱくっと飲み込んだ。

 そのまますうっと空中へ浮かび上がるというか跳び上がるというか、よくイルカがやるじゃない、あんな風に空中へ。

 そして薄れて消えていった。

 あとのリンクは何事もなかったように艶々として、ひび割れひとつ見当たらなかった。

 僕と友達はそこまで滑っていって確かめたんだから、間違いない。

「おまえ、見た?」

 友達の声は震えていた。

「俺の見たものなんか言ったって、おまえ信じないだろ」

 僕は想わず身構えた。

 いつまでも、顔を見合わせていた。

 口には出さなかったけど、お互いに何を見たのかわかっていたし、信じてもいた。

 サメがカップルを飲み込んで、消えたんだ。

 もうそれ以上スケートを楽しう気分じゃなくなって、僕たちは引き上げたし、僕はそれ以来スケートをしようという気になれない。

 何だったんだろう。

 あのサメはいったい、何だったんだろう……?

 気になると、時々、夜も眠れなくなる事がある。やっぱり、どこかであのカップルが死ねばいいと思った奴がいて、そして噂通り、あざらく神社の裏に行き、サメ石に名前と生年月日を書いたんだ。

 そして噂通り、サメがあそこで出現したんだ。

 なら、いつどこで、誰が,僕の名前を書くかもわからない。

 そんな事を思うと背筋がぞわっとしてくるんだよね。

 でも、あまりにもばかばかしいし、こんな話、したって信じてくれるのはあの友達以外いないだろうと思う。

 話して、馬鹿にされるのも厭だしな。

 だから。

 頼む、誰か教えてくれ。あのサメのことを目撃して、信じているという人間はこの日本にどれだけいるのかってことを。


第三のサメぱっくんはスケートリンクでした。

サメは全国どちらへも出張いたします。

ただし、気が向いたらですが。

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