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今日もぱっくんサメ日和  作者: 朝日奈徹
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嘘かほんとかサメぱっくん

こんな神社があったらいいな、と思う人はきっとたくさんいる。

あざらく神社。

それがどこにあるのか誰も知らない。

誰もわからない。

でも、どこかに、あざらく神社はきっとある。

 俺はあいつが憎くて憎くて憎くてたまらない。

 どれくらい憎いかというと、叩き潰してひねり潰して踏みにじっても足りないくらい憎い。

 ……あいつというのは、うちの店長だ。

 店長という肩書きだけど、いつも事務所で足を投げ出して休んでたり、机に向かっているかと思えば漫画を読んでたり、要するに働いているところなんかまともに見たことがない。

 本部に提出する書類だって、俺が書いているんだぜ。

 本部からの電話を受けて動くのだって、大抵は俺だ。

 言っておくけど、俺は店の正社員じゃないんだ。

 悔しいけど、ただのパートだ。

 これだけ働かすなら正社員にあげてくれとか思うけど、うちの店は吝くて、ちっともそういう音沙汰がない。

 でもまあ、それはまだいい。

 店長だ。俺が許せないのは。

 あいつさえいなくなれば、もっと一緒に働いてやりがいを感じさせてくれる店長が来てくれれば。

 そんな時、俺はネットでこの神社の噂を聞いたのだった。

 裏手にあるサメの石に名前を赤で書けば、その相手は死ぬ。

 本当だろうか?

 たしか、呪いは実証できないため、ほんとうに呪った相手が死んでも殺人罪に問うことはできない、と聞いたか読んだ覚えがある。

 だから……いいんだ。

 名前を書くだけでも、俺の気持ちは少しすっきりするんだ。

 俺はサメの口の中に、持参した赤いフェルトペンで、店長のフルネームと生年月日を赤で書き込んだ。


 それから一週間。

 今日は本部の部長が店舗巡回にやってくる日だ。

 いろいろと言われる事があるだろうから、憂鬱だ。

 でも珍しく店長が事務所にいたので、ま、部長が来たら店長に任せるぜ、と思っていた。

 通常の業務にせいをだし、部長がやって来た時には何食わぬ顔で、

「あ、店長は事務所です」

 と、案内してやった。

 案の定、部長は店長を連れて店舗内を歩きながら、細々、叱責したり改善点を指摘したりし始めた。

 いちいちごもっともなんだけど、あれは聞いて言うとおりにするのって結構大変なんだ。

 その時だ。

 店の陳列棚がいきなり、コンビニの冷蔵庫みたいに、ぱかっと開いた。

 そんな構造じゃないんだぜ。

 だってうちは書店なんだから。

 ぱかっと開いた扉の中から何が出てきたと思う。

 サメだ。

 でっかいサメだ。

 俺が呆然と見ている前で、サメはぱかっと口を開けた。

 でかい!

 赤い!

 怖い!

 そしてサメはそのままぱっくんと店長を飲み込んだ。

 そして、粛々と薄れて消えていった。

 あとには血の一滴もこぼれていない。

 部長も呆然としていた。

 俺は部長と目が合ってしまった。

「きみ、今の……今のを……」

 俺は黙って頷いた。

 店長が消えてしまったことは、なぜかどちらも口にしなかった。

 今のはいったいなんだったんだ。

 部長の顔には明らかにそう書いてある。

 でも、応えてはいけない気がした。

 だから俺は何も言わなかった。


 消息不明となった店長のことがどう処理されたのか、俺は知らない。

 でも、本部の人事異動で、今までよりははるかにましな店長がやってきて、俺の毎日は少し楽になった。

 ほんの少しだけどな。


いかがでしたでしょうか。

日常空間にいきなりこんなものが出現したら、かなりシュールで怖いのではないでしょうか。

でも、もしかしたらお近くの書店であったことかもしれませんねえ。

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