葬列
俺は、今日、7回目の死を、経験したのでアる。
何度と無く、俺を苦しめ続ける、この恐ろしいコトこの上なき、ゲンジツの世界におさらばすべく、俺は、山の中の小さな小屋で、首を吊ったノデあった。
確かに、俺は、確かに、俺は、死んだハズであった。台を蹴って足が空に浮くカンカク。首に強固なナワが食い込むカンカク。痛いカンカク。股間に人生最後の大いなる力がみなぎるカンカク、最後のアガキと何かが発射されるカンカク。
そうしたスベテの要素が俺に死を宣告して、死神とも天使とも知レヌ者に導かれたハズであった。
そのハズが、俺は眠ってイタ。
いつも通りにベッドに仰向けにナッテ、額が寝汗でべた付いて、顔には燦燦たる日の光と小鳥のさえずりを受けテ。
俺はゲンジツを疑った。朝、覚醒するト何度も何度も疑っタ。そして朝飯もソコソコニ、かつて死んだハズの小屋へ赴き、宙吊りにナッタ死体の確認するのだった。
確かに俺がソコにあった。首を丈夫なナワで絞められて、舌を無様にベロンと垂らして、股間をジクジクと濡らして……。
死ンデいたハズなのに……。ダカラ、俺はもう一度首を吊ったノダ。
シカシ、やはり俺は死から確実に目覚めてしまウ。だから死ンダ確認をするタメにまた例の小屋へ行くのだ。スルト、やはりソコでは俺が死んでいた。今度は2体ダ。俺は今一度死んダ。今度の俺は、3体目にナッタ。
「何度も死んで、何度も生キル」
もはやソレガ、俺の日課になったのだッタ。ダカラ、今日、6体の宙吊り死体を前ニして、俺は小屋の中デ7度目ノ首吊りを敢行シた。
アアアア……これで……ついに……と思う間もなク…………。
俺はマタモヤ、ベッドの上で阿呆面晒して寝息を立ててイタ。
俺は悲しンダ。
何故死ねないカ。何故。それともこれは夢であろウカ。自殺しては蘇生を繰り返す奇妙なユメ……。
その日は、首を吊らなかッタ。
代わリに街へと繰り出しタ。遠くの方で、
「オオオオォォォォォ――――ン……カン、キンンン……グウウウウウゥゥゥゥゥゥ――――――ゥゥゥゥゥン」
という、鉄の忙しく立ち働く工事の音がしタ。
行き交うヒト、ヒト、ヒト。スレ違う人、人、人。
アア、何ダ。みんなミンナ、死んだヨウナ顔をシテイルジャナイカ。……俺は、死人の世界で……ただ一人生きる生者カ……?
ふと小さな店先のショーウィンドウを見、俺の顔の様子を確かメタ。
何と無様なカオをシテイルのか……俺は。
死にたイ……………。
俺は気が付く頃には、窓に頭を打ち付けて、真ッ赤な血を吹いて倒れていた。割れ残った縁のガラスが首にも刺さっテ、痛く苦しかった。
ああ、人々が、死人の顔をした連中が集まってきて俺を見……何ダ、みんな俺じゃないカ……。
ミンナ俺の顔をしている。上も下も真っ黒で、首を吊った時の引きツッタ顔をして。黒イのはキット喪服だなァァァ……ァ。
沢山の俺ハ息も絶え絶エの俺をグルリと取り囲み、何事カ、唱エ始メタ。
腹かラ、生まれるラシキ低い低い唸りハ、遠くの方かラ響いてくル機械の音と混ざり合ッテ、大きナ大きな塊にナッテ行った。
「オオオオオオ――――オオオオゥゥゥゥゥオオオォォォンンンン―――――……」
「ムウウウ―――――ウウウウウウゥゥゥゥ……」
「ルルルウウウウエエエエェェェ―――――スウウウゥゥゥ―――エエエ……」
その塊ハ、マルデ、お経か何カのような荘厳さを以って俺ヲ包む。
沢山の俺。機械の響き。街全体が、俺を弔ッテいたような気がしタ。