第一話―6
後発プレイヤー
ある程度の期間がたってからゲームを始める者を指す。
最近のゲームは配信直後は難易度やコンテンツが大味になることが多い。
それを嫌ったり、単純にあとから知ったり、ゲームの評判が良い、と始めるプレイヤーを大雑把にそうまとめることがある。
初心者や新規等の呼称とされることが多い。
眼下に見下ろすは転送装置。
はじめてこのゲームを始めたプレイヤーは初期装備でその装置の入口に立つのだが、そうした者はそうそう見ることは無い。それは彼らのために用意されているわけではなくどんなプレイヤーも使う物だからだ。先ほどから着飾ったプレイヤーがその恰好を確認できる程度の頻度で往来している。
それを、眺めるか目に焼き付けるかをしているのはレアンにポゼッションした平貞治だ。彼は、ファッショブルな服装を発見するという先進的な感性は持っていない。その服装がセンスに合う、か多くのプレイヤーが選んでいる装備を確認しているだけだ。
やはり青髪には深緑メインで線はカーキ色がいいのだろうかと、次の季節に向けた染色候補を探していたが、よく考えたら青髪のキャラはいなかったことを思い出した。
頭を払い、またも惰性のまま半眼で転送装置を見つめていた。そうして幾人の往来を流していくと初期装備のキャラクターが現れる。
フォーマル種族の女性、青髪で青い瞳の幼そうな表情をしている。名前はアリソン。
目を見開き周りを探っている、人を探しているようだ。
下火続きのゲーム故に何事もなく始める動機は薄いのだから、友達からの紹介で来たのだろうなと思い眺めていた。
待ち合わせしているところに声をかけるのも無粋だとそのままにしていると、突然雑音が走る。
「君、初心者さんだよね。私が色々教えてあげるよ」わざわざ音声を入れてアリソンに話しかけている。
確かに音声のほうが自分を認めてもらいやすいのだが、今日はじめたプレイヤーにすることではないし何より声をかけているのは、あまり評判の良い人物ではない。
レアンはすぐに高台から降りて、身なりは整い顔は奇麗だがだみ声の男に適当なエモートを連打する。
振り向いた男に一番の笑顔をし手を振った。
男は露骨に顔を歪める。
それを意にせずアリソンに
「こんばんわ」と声をかけた。
そしてしばしの間のあと男はアリソンに
「友達からに呼ばれちまった」と言ってその場を去った。
男が見えなくなってから改めてアリソンに目を向ける。
「友達と待ち合わせ?」というレアンに、アリソンは「はい」と返す。そして
「とりあえず音声で話しかけてくるのとは距離を取ったほうがいいですよ」と伝える。
「なぜですか」ときたので
「悪目立ちしたがる人が多いから、でさっきの人は上下関係にうるさくて評判悪いし」とテルで返した。
それを聞いてしばし考える表情をした彼女が言った。
「知らない人の評判をわざわざ伝えるあなたもあまりいい印象を受けません。控えたほうがいいですよ」と発言してきた。
こちらとしては男のことを周りに言いふらすのはマナー違反だからテルで伝えたのだが、どうも噛み合わない。そして、初めて話す人にここまで言い放たれるとは思わなかったので面を食らった。
「確かに彼には悪いわね」それと同時にログが流れる。
「こんばんわ アリソン」
ログを見るとロシータが発言したのだとわかり、周りを見るとちょうど転送装置から現れた人物がそのようだ。エルダー種族の女性、細見で長身のそれがよく似合う衣装、それなりにこのゲームをやっていなければ持っていないような装備をしている。
そして近くにいたレアンにお辞儀をしてくる。
「わたし彼女の知り合いでして、見てもらってありがとうございます」とテルが来る。
レアンはそれに首を横に振り
「なにも教えてないですよ」と返した。
支援プレイヤーだと思われたのだろう、実際は支援プレイヤーを撃退した者なのだがこれで悪いことにはならなさそうだ。
「レイドで見かける人ですよね、フレンドになりませんか」とロシータ
断る理由もないので了承し、フレンド登録を行う。
アリソンの方を見ると彼女の視線が下に向いていた、スマホ等の外部ツールでやり取りをし始めたのだろう。ロシータもアリソンもしばらく黙っていた、アイギアの機能で目線に応じて首が多少動いている。
「それじゃこれで失礼しますね」そう残してこの場から離れることにした。
ロシータはそれに気づいてこちらに手を振った。アリソンもそれに続いて「ありがとう」とレアンに告げる。
7年が経過しリアルの技術が進歩してアイギアなどと言っていたが、フェイスリグ(Animaze by FaceRig)が来て、音声認識による音声合成ソフトも来る。
MMOのプレイフィールも移り変わり新たな認識と回帰的な思想が織り交ざり、数年はMMO感のエントロピーも急激に拡大しそうに見えます。
未来を全然読めてなかった!
しかし楽しみだな。