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儀遊階梯プレアンガイア  作者: 紺野縁
5/6

第一話―5

生産活動

 ゲーム用語でプレイヤーがアイテムを作成することをさす。魔物や自然から採取し集めた素材をレシピに沿って新たな製品に変えるシステムだ。

 このゲームでは、アイテムの形に素材の属性を掛け合わせるタイプで、出来上がる武具や道具は素材の品質によって違いがでる。アイテムのグラフィックと武具の強さは個別に設定もでき、性能のよい武具に自分の気に入った細工のされたデザインをかぶせるような仕組みになっている。

 そのデザインの種類は長い年月を得て膨大な量になり、様々な姿になることが出来る。楽しみ方の一つに有名な作品の登場人物に扮する、いわゆるコスプレをするものがよく行われるという。もちろんそれ以外にもデザインの掛け合わせでセンスのある衣装を生み出されていることは言うまでもない。



 流星装備は攻撃魔法を扱う魔法使いの究極装備の一種だ。その全能力強化のセットを作り出す根気強い生産者がいるとは、とその現物を見て貞治は驚いた。

 インガにつれられてやってきたのはプレイヤー自治区の一つだ。


 プレイヤー自治区とは、集落をつくることができる区画のことで、そのエリア内では決められた数の建物を建てる事ができる。毎月決められた金銭を支払うことで建物を所有することができる。そこでは取得した素材や自分が作成したアイテムを売ることが出来る。アイテムに金額を添えた自動販売機のような仕組みだ。それ以外に家を飾って見栄えのよい物に仕立てる遊び方もある。


「確かに三千万だな」レアンは現物の値段を確認した。

「検索かけたら偶然見つかってさ。買い時だとおもったんだよ」とインガは軽く言ってくる。

「誰も作らないから相場がないようなもんだけど、成功率から逆算すると若干高いかな」と出来上がりにかかる原価を簡単に計算した。しかしながら作り出される稀さから考えればこの値段で買っていいとも思った。

「いやいや、あるうちに買わないと」と続けてきた。

 レアンは、それもそうかと考え装備を購入する。これだけの高額商品を買うのは久しぶりだったが、不思議と高揚感はなかった。あまりに高すぎて神経が麻痺しているのか、金銭のやり取りに慣れすぎたのか。多分両方なのだろうと結論付ける。


 プレイヤーが作ったアイテムは強化することが出来る、出来上がったアイテムに素材を追加することでその素材に対応した能力値が伸びていく。流星装備は強化できる能力値が多いため強化回数が多く、強化する度にその成功率は落ちていく。そして強化に失敗するとそのアイテムはなくなってしまう。それが強化の良し悪しだ。素材が潤沢にあれば数多く作成し強化できるが、その素材を集めるのは骨が折れるし、そうしたアイテムは高価だ。それがこの値段に反映されている。


 インガから送られたゲーム画面を撮った画像データから見えるアイテムのアイコンを見て交換する素材を見繕った。その一つ一つが取得確率の低い稀少アイテムばかりだ。


 インガは俗に言うスーパープレイヤーだ。常人が出来ないような繊細で正確な操作をしてキャラクターを自在に操り強い魔物を倒す遊び方を好んでやっている。ワザと弱い武具を扱い魔物を倒すというような制限プレイも行うため飽きずに同じ魔物と戦い続けている。

 その成果がコレだ。リストにある物の三割と交換すれば充分元が取れそうだった。

「使えそうなやつある?」とインガはアイテムの交換を急いだ。もうレアンの手元にあるのだから焦る必要はないのだが、はやく現物が欲しいようだ。

「六天素材を十二セットで交換しよう」と若干得なレートで交換を持ちかけた。

「それで済むのか? また溜めとくよ」と気づかずのインガ。

 そうして、素材と装備を交換した。

「あんたらの金銭感覚が怖いわ」とガイアが言ってくる。

レアンとインガはそれに、そうなのかと返した。

「こっちの金策の半年分なんだ」ガイアはそう告げた。

インガはそれを解さずに既に流星装備に着替えていた。流れ星を意匠したファンシーな雰囲気を与えるデザインだった。インガのような目つきの悪い細面で細い体格には似つかわしくない。

「だっせぇ」とすかさずガイアは言い放つ。

インガは自分の衣装を見返して、一つうなづいた。

「これはキツイ。前の装備を上書きするか」

と外見を前の物にした。デザインを上書きするには、上書き枠に見せたい装備を差し込む。装備を余計に用意しなければならないので費用がかさむのだが、今はダブっているので調度よかった。

 レアンは素材をどう売り込むか考えていた。高級素材は高く売れるが需要がなければ結局売れないのである。しかし、安売りするには入手難易度は高い。そうしたジレンマとの戦いが高額品を扱う商法なのだ。

「金のこと考えてる顔ですよアレは」ガイアのつっこみはこちらにもきた。

「習慣とは恐ろしいね」レアンは表情を変えずに返した。

インガとガイアはそれを見て、怖いとつぶやいた。


 一通り素材の振り方を考え終えた後、ログを見る。怖いとあったので、レアンは話をそらすことにした。

「インガがレイド戦に来るのは珍しいな」そう切り出した。

「確かに、珍しい。というか久しぶりに会った気がする」とガイアも乗ってきた。

インガは「久しぶりにこの時間に一人になれたからな。それにタイミングがあったんだ」と言う。

「家族サービスとかしないんだ」とガイアは続けた。

「あっちのお父さんが出張ってきたから、席がなかった。車二台で行くのもあれだし」

ガイアは笑う。と同時に着信が鳴る。インガはそのまま電話に出た。

「今から帰る? それじゃ気をつけて帰ってね。はーい」と切った。

「相変わらずだな」とレアンは関心と呆れを合わせた表情をした。

「気にしすぎじゃない?」とインガは返した。ガイアもそれにうなづいた。インガが続ける。

「二十分あるし軽くどこか行こうか」

「なんでそんなにギリギリを目指すんだ」レアンは呆れた顔をする。が久しぶりにパーティーを組んで遊ぶのも悪くない。行く場所を決めることにした。

「兜率天のボス権利があるからそれにしよう」とインガは提案してきた。


 ボス権利はダンジョンに居るボスだけと戦える権利のことだ。そのダンジョンのボスを倒すと一定の確率で得ることができる。


「そいつなら覚えてるからなんとかなるかも」とガイアも了承した。

「それじゃ移動しようか」レアンはテレポテーションを唱え、「ダンジョン:兜率天・ボス」を選ぶ。

 全ての背景が白に染まり転移先の入り口が現れる。それをくぐった先には白亜色の広い部屋だ。

 目の前には巨人がいた。全長訳八メートルの衣を纏った人型だ。名前をミログという。元ネタは仏教用語でそれ以上の意味は無い。

「相変わらずでっかいねー」レアンは相手の顔まで見上げる。

「レアンは覚えてたかな?」とインガは聞いてくる。一人でも倒せるボスではあるが、パーティーで動くと挙動がぶれるため確認してくる。

「私は回復だからガイア優先で基本動かないでいいんだよね」思い出すような表情で返した。

インガはうなずき、ガイアも武器を構えた。

 ミログは顔と足のつま先が弱点だが、顔ばかり狙うと手を払って遠隔攻撃を反射してくる。そのため、顔と足の攻撃を交互に行って体力を削るのが定石だ。弱点に当たるとひるみ攻撃を遅らせることができるため、タイミング良く攻撃しつづけると封殺することができる。実際は三人も要らないボスなのだ。

 インガは開幕に最大火力の魔法を唱え、顔にぶつける。流星装備の効果で攻撃魔法の威力とエフェクトが変わりファンシーな流れ星が手から放たれる。

 ガイアはそれに思わず笑ってしまう。それは白亜の部屋にこだました。

「つぼった。きつい」と笑いながら足に向かって走っていく。

 インガもそのエフェクトに若干照れる表情をしていた。

 星は顔に当たりボスはひるむ。ひるみの時間が終わると同時にガイアは足先に攻撃を入れた。頭を大きく揺らし足を止める。

 インガは揺れる頭が止まる先を予測しながらタイミングギリギリで放てる威力の高い攻撃魔法を唱えながら標準を定めた。

 レアンは寝釈迦のポーズを取り、ついでに声援も送った。

「キャラの姿勢と魔法のキャストは独立してるが、それはどうなんだ」とインガはつっこんでくる。

「回復がサボれるのは二人が優秀だからですよ」と手を振り言葉を続けた。

「兜率天の素材ってどう集めたんだ?」レアンは符とした疑問をインガに投げかけた。

「フラガと一緒にやってた」とインガは返した。

「今は一緒にやってない?」

「さすがに子供が小さいうちはな。俺も寝てからようやくだ」とインガは短くため息をついた。

ガイアはボスのひるみの時間が終わるまで攻撃を続けていた。

 顔と足への連続攻撃。その押収の末に、ミログは倒れた。結局ふたりともベストなタイミングで攻撃を続けて封殺してしまった。

 勝利のファンファーレと共に報酬のログが流れる。当たり前のように三人ともレアは出なかった。

「使った感じどうだった」レアンはインガに装備の感想を聞く。

「一番の火力というわけじゃないが、便利になってやりやすい装備だ」と言ってインガは礼を言う。

「買った甲斐があったな。また遊ぼうか」

 インガはそうだなと言い、テレポテーションを促した。最寄の街に照準を合わせて発動する。

 それで今日の集まりは解散した。

 家路に着き、レアンは今日最後の生産をする。インガが良く使っているエフェクトに変換する細工だ。持っている資材で出来上がらせ手紙と共に送った。

 インガが照れるということは、それはあったほうがいい物だからだ。

ここまで山なしの文章を書くと思わなくて自分でびっくりです。

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