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儀遊階梯プレアンガイア  作者: 紺野縁
4/6

第一話―4

魔法

 ファンタジーに付き物な不思議な力だ。このゲームではマジックポイントを消費して使う特技になっている。魔法はコマンドを入力することで発動する。マウスやキーボード、アイギアでも反応するように出来ている。

 それを使った曲芸に左右の眼球動作をずらして魔法を発動させるという動画が上がり、ときおりバラエティでも取り上げられていた。

 実際は、キーボード入力が速くて正確なのでマウス・アイギアを使う魔法使いはいない。

 しかし、魔法発動にはもう一つ条件がある、待ち時間だ。強力な魔法ほど待ち時間が長い。そのために、キーボード以外の入力方法で遊ぶ者もいる。


 貞治はレアンにポセッションした。ガイアに誘われて、久しぶりのレイド戦をするためだ。


 レイド戦はゲーム用語だ。英訳で襲撃から来た造語で、大多数のプレイヤーが協力して敵と戦うことを言う。 このゲームでは参加したプレイヤー全員に報酬が支払われるイベントだ。エリア毎にレイド戦がありそれぞれ様相の異なるボスが現れる、現実の時間経過やそのエリアで一定数の魔物を倒すことでイベントが発生する。発生前には予兆が表れ、それに合わせて報酬目当てのプレイヤーが集まりレイド戦が始まるというデザインだ。


 レアンは魔法使いだ。回復と援護に特化したタイプで、勝ち戦をしているときは強い効果を発揮し、敗戦時には最後まで生き延びるが役に立たない不遇のポジションが約束されている。

 今回も普段着同然の格好で立っている。髪は結い上げて視線を遮らないような雰囲気を見せるが、キャラクター物の顔がついた耳当てを付け、縦セーターにマフラー、下はボンタンに地下足袋、という魔法使いどころかファンタジーを思わせるような風貌がない。ガイアもそれには慣れているのでツッコむこともしなかった。自分の武具の耐久値を確認している。レアンにもそれを促した。

「杖がまともだし大丈夫でしょ」とレアンはのんきな表情で身体をほぐす体操をしている。

「それならいいか」とガイアは相槌を打った。いつもどおりの甲冑と手には相手の攻撃を大きくはじくヒーターシールドに片手槍を握っている。

「あ、足りねぇ」とレアン。すぐさま修復財と工具を取り出し修理をはじめた。それを見てガイアは言っておくものだとつぶやいた。

 周りには参加するプレイヤーが大挙している。今いるエリアはエルメキシア大陸の中央に位置する深い森になぜかぽっかりと明いている原っぱだ。本来は一つのエリアに一つのイベントが置かれるのだが、ここは強く報酬の良いボスが登場するということで毎回激しいラグとの戦いがあった。それを鑑みてボス専用のエリアを隔離したという経緯がある。つまりは激戦が起きる場所なのだ。

 まとめ役を買って出たプレイヤーがカウントダウンを始める。レアンも援護魔法を発動して周りのプレイヤーに施していった。ガイアには丹念に施した、例えやられたまま戦闘が終了しても報酬は手に入るのだが、ガイアは倒れると非常に発言が多くなるタイプで後にほぼ酔っ払うのでボスにやらせるわけにはいかなかった。

 ほどなくして、ボスが現出する。ライオンを基にしてその大きさを十倍し肩部分から二本の腕を生やし、尾も長く太い獣だ。前腕でプレイヤーを掴み、他プレイヤーに投げつけ尾を払って攻撃してくる。掴まれたプレイヤーはその時点でライフが空になり蘇生が必要になる。尾の払い攻撃も当たれば防御特化でなければ即座にやられる。単純ながらその単純な攻撃が強力なボスだ。

 しかし、攻略は既に知られているので、知る者はドンドン前に向かっていった。

 このゲームでは蘇生に必要な時間は最大ライフポイントが高いほど多く必要になる。そのため、掴まれる相手は最大ライフが少ないものと決まっている。掴む優先順位は挑発行動や率先して攻撃していくことで決まっているので最初の攻撃は囮役がすることになっている。そして尾の攻撃は、それをしている状態では移動しないという特徴があるので、できることなら優先的に起こすように仕向ける方法がとられている。尾の攻撃範囲内に十名以上のプレイヤーがいる時に尾を振る仕組みとなっているため、防御特化したプレイヤーが盾になって足止めする。彼らの回復と補助をするのがレアンの役割だ。

 ガイアも後ろに回っていた。前で相手にするとよく掴まれるのとライフ特化の構成にしているため蘇生が遅くなる、という二重の理由で尾の攻撃捌きをやっていた。

 相変わらずレアンの回復は遅いとガイアはレアンを叱咤した。

「死んだら反省会だぞ、おら。きいてんのか」

「きーこーえーてーまーすよー」と待ち時間にあったコマンドをレアンは打ち込む。

「発動早くならんのか」ガイアはつづけた。

「いーやーこーれーがー適切なんだって、早くはなして不発するより多少余裕持たせたほうがいいって」とレアンは説得した。それと同時にボスは尾を払う、ガイアのライフは底ギリギリになっていた。

「はい、発動」とレアンは回復魔法を発動させた。ガイアは全快する。

「むぅ」

「いや、さすが僕だと関心するよ」とレアン。調子のいいことを言うと思ったガイアではあるが今回は援護のタイミングが最適だったので黙ることにした。

 押さえ役が働き、足が動かないボスに強力な攻撃魔法が刺さる。一人で戦闘する時では待ち時間と威力の兼ね合いから使われづらいタイプの魔法もこうした相手では重宝される。

 光の柱や炎を纏った岩石が落ち、凍てつく光線や暴風吹き荒らし雷が魔法使いから放たれる。数十人の魔法使いから放たれる強力な魔法によってボスのライフはドンドン底に近づいていく。

 そしてボスのライフが一割を切ったところで、様子が変わる。ボスはライフの割合によって行動を変える、こいつもまた強力なラストアタックを仕掛けてくる。その巨体を活かした突進攻撃だ。一旦跳躍しエリアの中央を陣取る。そしてこの戦闘で一番ダメージを与えたプレイヤーに向かって突撃するのだ。

 これの捌き方は、攻撃に参加していないプレイヤーは集まり、それ以外はまばらに散らばる、その間もボスはプレイヤーに向かって顔を向けるのでその動きで判別する。判別した後はそのプレイヤーをマークして人身御供になってもらう。このレイド戦の華にしてトリである。熱い拍手で見送られ、突進を食らった後はその隙をついて残りプレイヤー一丸となってボスに攻撃して終了となる。

 ガイアもレアンも役割上標的にはならないので、今回の代償を見つけることにした。判別が遅れ、マークがついたのは突撃開始とほぼ同時だった。マークされたプレイヤーは立ち止まり残りは雲散する。


 その後の光景はレアンがはじめて見るものだった。マークされたプレイヤーは生き残っていたのだ。数秒後にもライフが底になるアニメーションが起きない事でラグでないのだと解った。同じように動揺するプレイヤーもいたが、総攻撃の号令を連打されたことで気を取り直し攻撃を開始する。魔法と武器攻撃のエフェクトがボスに注がれるそのすぐ隣にはマークされたプレイヤーがいる。

 知り合いだった。レアンとガイアの共通の知り合い。インガだった。端正な顔にふてぶてしい表情をした若い男性、片手に衣装の凝らしたナイフを持ち魔法使いが着る華美な衣装をしている。

 レイド戦は終わった。そして参加者全員に報酬が配られる。報告ログも流れてネトゲ特有の戦場の後を生み出す。それと同程度に生き残ったインガを賞賛するログも流れる。

 レアンはインガに手を振るエモートをした。インガもそれに気づいて返してきた。

「いまのなにあれ」とレアンは疑問を投げかけた。

「なにってパリィ」とインガは回答し思い出すように魔法を発動する。パリィだ。相手の攻撃をはじく効果があるが大量の消費マジックポイントに短すぎる待ち時間と効果発揮時間が相まって玄人向けの魔法に位置づけられている。

「噂だと十ミリ秒単位のタイミングで当てないとダメじゃなかったっけ」うろ覚えの過去情報を思い出して、その実現率を訝しんだ。

「そーだよ。やってみるもんだね。できたわ」と笑ったインガはつづけて

「金くれ、三千万でいいから」平然と切り出した。

「なんだその返さない宣言は」レアンは半眼エモートを飛ばす。ギャラリーもその額と宣言に若干引いていた。

「この俺が生んだ産物の報酬ってことでどうよ」周りにかまわずまくし立てている。

「いいけど、なんに使うんだ」レアンは当然の問いをかける。周りも当然気になるのかざわめいていた。

「装備が欲しい。流星装備セット強化全」とインガ。

「また、金がかかるのを見つけたもんだ。そっちなんかレア材料ない?」そしてレアンは相場を思い返していた。

「後でスクショ送るわ」そうしたいつもの流れになり

「オッケー」指で銃をつくり打つエモートをしたレアンと、その応対を見ていたガイアは他人を装うように距離を開けていた。

三人称を心がけ。出来た感想ですが、同人ゲームの攻略記事書いてる気がしてきた。

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