第一話―2
貞治が操るプレアデスが探すのは回復アイテムの材料である。名をツルーホワイトという。
白色の森は太陽光の光をそのまま照り返すというコンセプトで作られており、時間帯によりその様相を変化させる場所だ。白色という名は夜明けの輝きにより森の葉がすべて白く見えることからきている。
そして、ツルーホワイトが夕方でなければ見つからない理由は、夕日の赤さの中でもそれは色彩を変えることがないから。だという話である。
プレアデスはその性質を手がかりに探している。隠密スキルを使い森を徘徊する魔物に見つからない様にだ。
深度は難易度と同意であり、その数値が高ければそれだけ生存することは難しくなる。数値は一から七まであり、四からは魔物がプレイヤーを発見すると同時に襲ってくるようになる。プレアデスは、それを避けるために隠密スキルを使っている。
スキルは数十種類あり、そのどれもが個性的である。
隠密スキルは自分の姿を完全に隠す技能である、姿は透明になり外部からは発見されない。しかし、探知スキルやそれに類する魔法やアイテムで看破されることはある。そして、全ての敵には探知スキルがあり、スキル値が少なければ簡単に見つけられてしまう。
予期せぬタイミングで姿を看破されれば致命的な状況に追い込まれる危険性の高いスキルである。ただ、その効果は続いている限りとても強力だろう。
採取するアイテムの出現位置は完全にランダムだ。
運が悪ければ、かなりの距離を移動しなければならなくなり、そうなると敵に見つかる確率が上がっていく。とはいえ、この深度で見つかるようなスキル値ではない。
この森を徘徊している敵はこの森と同じように太陽光により色彩が変化していく特徴を持っている。その特徴どおりに相手は隠密スキルを保持していてこちらの探知スキルが高くなければ不意をうって襲い掛かってくる。
アイギアを通してディスプレイを見ると、その中に白い枝葉を見つける。ツルーホワイトだ。
運がいい。採取マクロを発動して失敗なくそれを取得する。
そのまま十数分ほど探索と採取を繰り返し、目的の数までツルーホワイトを取ることができた。
そのまま、危険ではない場所まで移動してリターンの術譜を破く。画面を黒が包み、その数秒後には、自分が所持する家の前に立っていた。
戸を開け、帰りを告げる。
「ただいまー」
レアンが振り返り、おかえりなさいと告げる。俺はレアンに目を向けてうなずいた後に、一息つくために席に着いた。そうすると、レアンはそっと飲み物を差し出してくれた。スタミナ回復の効果があるアイテムだ。安価で多くのプレイヤーが使っている。
それを使い、スタミナ回復の増幅効果を確認して俺も休憩した。
探すことはシステムも支援してくれるが、あくまでもマップで簡易のナビがつくだけで実像は自分の目を持って確認するしかない。そうすると目が疲れてくる。現実でもゲームでも疲れることに変わりがないことに、ため息が出ることがある。だが、現実でないものを見続けているというのは、本当は疲れることなのだとも思うようになった。
二杯目の茶を淹れるために、電気式ケトルに水をいれスイッチをかける。数十秒後には沸騰した湯が出来上がり、それを湯飲みについで軽く温度を下げる。ある程度時間を置いて急須に流し込み、二番煎じとした。
お茶を飲み、ゲームに戻る。とってきたツルーホワイトを使い回復薬を作る。
調合マクロを発動して回復薬を作る。今のスキル値でポセッションしている状態なら必ず成功するため、安心して作成のボタンを押す。
ほどなくして、回復薬が出来上がる。ツルーホワイトを使ったそれはホワイトポーションとなった。
これで依頼されていた分量の薬が出来上がった。依頼主である友人にメールを送る。その返信が来るまで、俺は現実の仕事の準備に取り掛かることにした。
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