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14.文化祭前日

色々すっ飛ばしましたが、明日は文化祭です。



「女の子みんな可愛いわ!」

先程からテンションMAXの舞子さんが男子より遥かに盛り上がっている。

「恥ずかしいけどいっかぁ」

「あとで写メ撮ろー♪」

メイド服に身を包んだホール担当の女子達も満更ではない様子で、準備は万全だ。


「響は着ないの?」

蝶ネクタイを付けた慎一がからかってきた。

「私はこれが衣装なんです」

響はジャージの上にエプロンを着て三角斤を被っていた。舞子さんの手管(口技)に負け、あれよあれよと調理責任者にされてしまった。

それにしても昨今の女子はあんなにも料理と無縁なのか。スコーンやサンドイッチの作り方を教えても、砂糖と塩は間違えるわ、コンロの火がつけられないわで結局響が一人でやった方が早かった。


おかげで響は寝不足で大不調である。昨日はスコーンを100個作った。今日はサンドイッチの下ごしらえをしなくてはいけない。…寝られるだろうか。


「わー準、チョー似合う」

「これで集客期待できるね」

黄色い声に囲まれて微笑む、執事風のスーツを着た緒方を眺めるのが響の癒しだった。

「おい女子、他の男子を無視すんな」

「明日の接客次第よ」

軽口を叩き合いながら、クラスは一丸となっていた。


「響ちゃん、酷い隈ね」

舞子さんが響の頬をさする。

「はい、でも大丈夫です」

昨夜も朝方まで寝られなかった。文化祭の仕事があるからと言って家事がなくなることはなく、全て終わってから手を付けるしかなかったのだ。

「無理をさせてごめんなさい」

美人迫力の舞子さんも、日に日にオーラが薄くなっている。彼女も響以上に働き回って疲れているのだ。全ては、このクラスの出店を成功させようという強い気持ちの現れ。そんな彼女を目の前にして文句は言えなかった。

「舞子さんも同じでしょ?明日頑張りましょうね!」

響なりの笑顔を向けると、舞子さんの眉が下がり、豊満な胸に抱き締められた。

彼女はれっきとした日本人だが、プロポーションといい、スキンシップの仕方と言い、絶対祖先に異国の血が入ってると思う。


「では明日!皆さん力を合わせて成功させましょう!」

舞子さんの声でクラスが更に奮起し、そのまま各自解散となった。



「響さん、帰ろーぜ」

最近何故か毎日のように那須が迎えにくる。文化祭の準備期間はアルバイトを休んでいて放課後は暇らしい。

「だったら残って作業すればいいじゃん」

と言うと、

「うちのクラスはオバケ屋敷で、俺はオバケ役だから当日頑張ればいいの」

と甘ったれるのでしっかり説教しておいた。


「なんか顔色悪ぃな。大丈夫かよ」

そんなに隈が目立つのだろうか。ぱしぱし両手で顔を叩いた。

「平気!明日終わったら爆睡するもん」

「寝不足か」

そう言って那須は空を仰いだ。もう日が落ちて、少し薄暗い。

「響さん、明日どうすんの?」

「明日?サンドイッチ作るよ」

「自由時間ないの?」

言われてふとどうだったかな、と首を傾げた。ホールはシフト制になっていたが、調理の方は人も足りないし、ずっと裏にこもっているつもりだった。

「分かんない」

「俺2時から暇なんだ。一緒に周ろうよ」

「えー?でも自由時間あるか分かんないよ。せっかくだし他の友達誘ったら?」

「他の友達って…」

那須が肩を落とす。その様子に罰が悪くなる。

「…ごめん、友達いなかった?」

「いるわ!」


バシッと頭をはたかれた。お約束のように響はバランスを崩し、那須の腕が支えた。

「いったぁ!手加減しなさいよ!後輩のくせに」

と、その後輩に支えてもらいつつ文句を言う。那須はジロッと響を睨んだが、そのまま腰を低くして響の視線まで体を屈めた。右腕は掴まれたまま、初めて那須の顔をこんなに近くで見た。


「じゃあ、時間取れたらでいいから。予約しといていい?」

その神妙な言い方が、ドラマかなんかの『お嬢さんをください』みたいなシーンと重なり、何をそんなにと笑ってしまった。

「いいけど」

「けどってなんだよ」

友達とケンカでもしたのかな。だから私のとこまでくるんだ。

口を尖らす那須に、響はそっと微笑んだ。

「友達ならちゃんと!フツーにいます!」

「はいはい」

「だぁっ!信じてねぇ」

このボケボケ女とケンカを売ってきたので鞄で一発お見舞いしてやった。

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