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見たことがある風景

作者: ふゆのてん
掲載日:2025/12/31



 ネットで有名な心霊サークルといえば……。検索すればすぐ出てくるのは、『心霊オカルトサークル・エス』


 それは僕が所属しているサークルだ。








 古のインターネットでは掲示板というサイトが流行した時期があった。




 現在においては『動画』や『SNS』がその文化の主流で掲示板にいるのは老境の民ばかりだ。といっても40歳代くらいであるが、流れの早いネット分野において年寄りであることは疑いようもない。




 しかし、僕はまだ高校生。正直周りの同年代で掲示板を見ている奴はいない。かなりマニアックな趣味といえる。別に若気の至りだとかカッコつけて言っているわけではない。  


 その掲示板界隈に入り浸るちゃんとした理由がある。




 それは情報のディープさが群を抜いているからだ。いや、新鮮さかもしれない。ともかく『ホラー』『都市伝説』の界隈をあさるのなら、この掲示板が一番だということだ。もちろん幽霊や怪異が撮影された動画に出くわすこともある。




 無論、フェイクもある。しかしそれを見破るのも掲示板が一番早い。集団による知識、いわゆる集合知がそうさせるのだろう。




 最近はやりの30秒や1分の動画を無限に垂れ流すSNSをやっていたところで僕の好奇心は満足しない。インフルエンサーには役に立つかもしれないがより早くホンモノの怪奇に出会うためにはそんなものやっている暇はないのだ。




 そもそも僕はホラー映画。殺人鬼が襲ってくるのが好きだった。初めて見た時は、僕はもちろん子供だったし疑うこと無く恐怖とスリルを味わいその手の映画にのめり込んでいった。


 しかしそれはだんだんと作りものであることが分かってきた。当然だ。監督がいて、カメラがいて、その他スタッフがいて、台本があって、演者がいる。血だって特殊効果の偽物だし、武器だって偽物、CGであったりする。映像は作れるということを知ると冷めていくものを感じた。僕が求めているのはそういうのじゃないんだ。




 リアリティ。自分でありありと感じるその現実感だ。それがほしい。




 今日も掲示板に集った仲間たちから心霊写真や動画の真偽について話し合い、誰からともなく示された問題提起について論じていく。こういう瞬間が楽しい。




 もちろん集まっている仲間たちは僕より詳しく、年季も入っている自称研究者、まあ、愛好家ともいえる人たちだ。なにげない世間話でも「近畿地方のどこのトンネル」とか「海岸線のホテルが最近廃墟になっていて」とか心霊や怪奇現象に結びつきそうな話ならなんでもどんどん流れてくる。玉石混交ではあるが、そういった中でアンテナを張り巡らせるのがいいのだ。そのうち何か……




ピコン。




 ふと、新しい写真の投稿がアップされた。


ひとこと「この場所知りませんか。たすけて」という文章が添えられていた。




 ふむふむと僕は写真を開き、独学の鑑定に入る。気分はすっかりオカルト研究の大家である。




 どうやら日本。古びれた2階建てのアパートだ。文化アパートというのだろうか。ちょっと古くてピンとこないがとにかく今はだれも住んでいなさそうだ。




 アパート前に雑草が生い茂っている。120センチはありそうなほど雑草というか茂みになっている。




 杉のような針葉樹が三本ほど植えられているが、それも伸び放題。人間の管理が入っていないどころか、数年間、人間が歩いた形跡もないように思える。




 アパートの2階に登る階段もだいぶ錆びていて登ると階段の踏み面が抜けそうだ。手すりだって一部朽ちて落ちている。二階には二部屋、一階も二部屋。玄関はカメラ側を向いている。窓を見ても一応閉じているが人の住んでいるようにはみえない。




「廃墟写真……だな。よくあるタイプの」




 第一印象はそんな感じだった。こういう場合の典型は、窓の近辺に幽霊らしき影があって、カメラを睨みつけているというパターンが心霊写真が定石ではあるが。




「……そんな感じでもないな」




 なんだ。ただの雰囲気だけの心霊写真もどきか……。




 掲示板の住人たちも、




『なんにも写って無くて草wwww』『めちゃくちゃ草は写ってるだろww』『おもんなww』『みんな草好きだなww』『草wwww』




と、取るに足らない写真に対して、バカにしつつもそれなりに楽しんでいるようだ。




 しかし僕は思った。確信はないが……この場所どこかで……。








 やっぱり、ここだ。あの草、あの木、あの廃墟のアパート。




 ぜったいそうだ。コンクリートの道は劣化してはいるがあの写真と同じだ。昨日、気になって調べ、自信はなかったが、それらしき場所に来てみて正解だった。




 僕はケータイのカメラを構えて確認する。うん。間違いない。ここから撮ったんだ。いやもう少し後ろからか。




 あの構図をさがして、僕はケータイを構えながら後ろに下がる。とたんにガクッと足を踏み外す。足元から揺らいだみたいだった。あわてて後ろを確認する。




 岩がごろごろとあった。その1つの石ころを踏み損ねたようだ。




 石がなぜ? さっき僕は普通の道路……普通のコンクリートの上に……。




 よく見る。全く整備されていない。人の手が入っていない岩の山だ。草一つ、植物一つ見当たらない。首が冷たくなった。




 おかしい。僕は回りを良く見る。険しく切り立った崖だ。




崖?




なんでだ?




数メートル先は何も見えない。




霧。霧だ。




霧がかかっている。




寒い! 寒いぞ! なんで……?




 明らかにおかしかった。さっきまでの街ではない。




 いかに街から外れた廃墟のあるところだと言っても、こんな所ではなかった。傷んではいたがコンクリの道だった。




ふと気づく。




 ケータイのカメラごしから見た画像はあの草原、あの木、あのアパートのままだったのだ。




 突如、僕は、何かに腕を掴まれる。しかしなにもみえない。抗いようのない力が勝手に僕の腕を伸ばす。




 なんだ? 僕の意思に反してケータイを構えさせられているっていうのか?




 何かによって、腕を動かされ、カメラをあの構図にさせられた。




 あっ! あの写真!




 ネットで昨日見たあの写真の構図そのものだ。




 指が僕の意思とは関係なく動く。




 撮らされる……。どうしてだ……。




 嫌な予感がする。撮らないほうが良い……。


 


 いやだ! 撮りたくない!




 でも、勝手に指は動く。




 パシャ。




 電子音が響き、写真が撮られた。




 なおも指は僕の意思に反してケータイを操作する。




 サイトを開き、あのサークルの投稿画面へ。




 いま撮った写真を投稿する気か!




 勝手に指がタップしていく。そして文字を打ち始める。










 なんだよこれ……!


 止まれ、止まれ。こんなのどうかしてる!




 途端にリプライが付く。




『二枚目じゃん、つまんね』


『ちょっと古くなってるかもな』


『誰だよこんなのセンスねえな』


『あれ? オレ見たことあるかもしれねえな』


『まじかよ。実はオレもなんだ』


『ちょうどそっちに撮影行こうと思ってたし探してみようかな』




 そうか。これは罠だ。




 おい! 見たら駄目だ。探したら駄目だ。これ、見たら終わりなんだ。僕みたいになる。




 一体こんな事誰が。いやそもそも人間にこんなことができるわけない……。




――――ア、アアーーーーアハハハハハハハハ……ハハハハハッ……




 そうか……これってマジの写真だったんだ。




 そうか……。あんなのを見たばっかりに……。




アアアーーーーハハハハハッ――――




 ……僕は喰われた。

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