王国改革編・第三章「炭火の砦、最後の守り」
異世界クシルガルドの王都・中央城郭から北へ十里。
炭火亭の総本山にして、殿様松平源之助が築き上げた**“炭火の砦”**は、今まさに戦の炎に包まれようとしていた。
石造りの高き城壁に、ねぎまとつくねの旗がはためき、
炭火の香りが立ち込める防衛拠点。
「殿様!魔物軍、ついに包囲を完了しました!」
串治安隊の隊長ガルドが駆け込む。
「数は?」
「確認できるだけで三千!中型魔獣が百、魔導兵も多数!しかも…奴ら、闇の呪符串を使っています!」
タケシ精霊が蒼白。
「まずいぜ殿、あれはこっちの炭火を呪いの炎に変える代物だ!」
源之助はねぎまノ串を手に取り、天に掲げた。
「炭火の誓い、今こそ示す時!この串を抜かずして余は泰平を語らず!皆の者、準備を!」
串による防衛線
串本陣の兵たちは、それぞれ炭火炉の前に陣取り、
熱した串を槍のように構える。
「ねぎま隊、前へ!つくね班、後詰め!ししとう隊は左翼を守れ!」
源之助の声に合わせ、一斉に炭火が燃え上がり、
城砦内の炭焼き場から香ばしい煙が天へ立ち昇る。
香りを嗅いだ魔獣たちは思わず鼻をひくつかせ、一瞬足を止める。
「この香ばしさ…うまそう…」
だがゾルグ=ドレッド配下の魔導師が号令を飛ばす。
「気を取られるな!ねぎまの香りに屈するな!!」
開戦!串烈火の陣
夜空を裂く魔力の弾幕。
魔導師たちが放つ漆黒の火球が炭火の砦を襲う。
「放て!串火槍!!」
源之助の号令一下、兵たちが炭火で焼いた特製の巨大串を投擲。
串の先端は赫く燃え、ねぎま・砂肝・ししとうを連ね、
飛来する火球を撃ち落とす。
バシュゥゥン!!
無数の串が夜空を飛び交い、魔導の炎を撃ち消す光景は
もはや壮観。
ユリカが両手で焼き場を守り、
アルカ=レインが魔法結界を張り、
タケシは串手裏剣を投げ続ける。
「来い、ゾルグ軍ども!この香ばしさの中で炭になるがいい!」
魔王の切り札
しかし、その時。
ゾルグ=ドレッドが放った究極呪符串**“死黒炭串”**が闇の空を裂く。
「これが貴様の炭火の終焉よ!」
呪詛まみれの黒き串が、砦の中央炭火炉に向けて一直線。
当たれば、全ての炭火が呪いの黒煙に変わり、王都は終わる。
殿様、奇跡の一突き
源之助は宙に跳び上がり、ねぎまノ串を握り締めた。
「泰平を…串の志を…守るのはこの余よ!」
赫く燃え上がったねぎまノ串が流星のごとく降下し、
呪符串に激突。
ドゴォォン!!
天地を揺るがす衝撃。
黒き呪符は霧散し、赫き串火だけが夜空を裂いて残った。
砦内は歓声と涙の嵐。
「殿様ぁぁぁー!!」
ガルドが膝をつき、タケシも感極まる。
「殿、串の誓い…守ってくれたっす…!」