王国改革編・第二章「魔王ゾルグ=ドレッドの陰謀」
平和を謳歌するクシルガルド王国。
串税は撤廃され、各地の炭火亭は香ばしい煙と笑顔で溢れ、子どもたちは串の歌を口ずさみながら走り回っていた。
「殿様バンザイ!串最高!」
だが、その平和の裏側で、暗く重い影が忍び寄っていた。
北方・漆黒の森
王国北方、漆黒の森。
そこは昼なお暗く、異形の魔物が巣食う禁断の地。
普通の者なら足を踏み入れれば、そのまま二度と戻れないと恐れられている。
森の奥深く、朽ちた神殿跡の地下。
禍々しい紫黒の魔力が渦を巻く空間に、一人の男が座していた。
全身を黒衣に包み、角の生えた頭蓋、深紅の瞳。
その名も――魔王ゾルグ=ドレッド。
「フハハ…串ごときで民心を得るとは…愚かしい」
魔王の周囲には、配下の魔族たちが跪く。
「殿様松平源之助…異世界より来たりし者…奴の炭火が民を繋げるなら、我が闇で燃やし尽くしてくれようぞ」
魔王の策略
ゾルグ=ドレッドは計画を発表する。
串炭に呪詛をかけ、炭火亭を次々暴発させる。
貴族残党と結託し、源之助暗殺を狙う。
国中に“偽の串”をばら撒き、民の信頼を失墜させる。
配下たちは凶悪な笑みを浮かべ、一斉に「御意…!」と声を揃えた。
串屋に忍び寄る影
その夜。王都の炭火亭では、串打ち名人のトミ爺が店じまいをしていた。
「へへ、串様のおかげで満席続きだわい」
だが裏路地の暗闇に、漆黒の魔族が忍び寄る。
その手には、禍々しい紫黒の呪符が握られていた。
呪符は炭火の上に投げ込まれ、一瞬にして黒煙が立ち上る。
ドンッ!!
次の瞬間、店は火の玉と化し、串台が爆発。
夜空に黒い煙が立ち込める。
「きゃあああああ!!」
民たちが悲鳴を上げ、逃げ惑う。
焼き鳥の香ばしさが一転、焦げと血の匂いへと変わる。
源之助、怒りの誓い
その報せは、源之助の元にも届いた。
王城の評議会室。
タケシとユリカも顔を青ざめさせる。
「殿!串屋が爆破されました!黒い炎だったと!」
源之助は拳を握り、目を赫々と燃やした。
「串を…泰平の象徴を…貶めるとは…許せぬ!」
その夜、源之助は国中に号令を発する。
「余は串と共に魔の者を討つ!炭火と信頼を取り戻すのじゃ!」
串治安隊を再集結し、武装貴族の残党も捕縛。
アルカ=レインも魔法結界を強化し、王都を守り抜く決意を固めた。