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第三章 串バトル大会、火蓋を切る

草原に設営された巨大な闘技場は、異世界クシルガルドの伝統と威信がかかった“串バトル大会”の会場。

観客席には、騎士や商人、農民、魔法使いまで老若男女が詰めかけ、異様な熱気に包まれていた。

中央には巨大な五芒星が描かれ、ここでの勝利者には王国の名誉と神器が授けられるという。


ユリカが隣で息を弾ませる。

「殿様…本当に、串一本で戦えるの?」

源之助は爽やかに笑い、ねぎまノ串を軽くくるりと回す。

「戦うとは、相手の心にも串を打つこと。武器は形じゃない、想いじゃ!」


タケシ精霊は源之助の肩で小躍りしながら呟く。

「殿、観客だけではない。王国中が余を見ておるぞ。こりゃ舞台も大きい!」


やがて大会が始まり、第1試合から剣士相手に串を抜く音が響く。

鋼鉄の斧を振るう男、魔法の盾を構える女、巨大なゴーレム…相手は様々。

だが、源之助は初戦から動じない。とはいえ火力が違う。


【第一試合:騎士 vs 串】

大会の開始を告げる鐘の音が、澄んだ空に高らかに鳴り響いた。


「さぁ!本大会開幕だぁぁぁ!!」


闘技場の観客席からは割れるような歓声が響き渡る。

砂煙が舞う中央の円形闘技場に、二人の戦士が並び立つ。


一方は、全身を重厚な鋼鉄の鎧に包み、腰に長剣を佩いた歴戦の騎士。

その名はガルド・ブラッドアイアン。


年齢は三十半ば、身長190cmを超える屈強な男。

幾度も戦場を駆け抜け、“鉄壁のガルド”の異名を持つ。


対するは、肩に鮮やかな打掛、手には一本の焼き鳥串を握った殿様・松平源之助。

異様な光景に、観客席からは失笑が漏れた。


「串一本で戦うだと?ふざけた真似を!」

ガルドは嘲笑を浮かべ、剣を抜き放つ。

鋭く磨かれた刃が陽光を反射し、煌めく。


源之助は悠然と微笑み、串をひと振り。

炭火のような赤い焔が、瞬時に串の先端に宿る。


「串なめるなよ」


ガルドが地響きのように踏み込み、剣を振り上げた。

剛腕から繰り出される一撃は、鉄柱すら容易くへし折る威力。


その刹那――。


源之助は一歩、軽やかに踏み出す。

まるで舞うような足捌き。

そして、ねぎまノ串を右手に逆手持ちし、目にも止まらぬ速さで下から突き上げた。


「秘技・串穿ち!」


パァン!!と乾いた破裂音とともに、

串の先端がガルドの剣を支える手甲の隙間を正確に突き、寸分違わずその間隙に突き刺さる。


「なっ……!」


剣が弾かれ、宙に舞った。


源之助は間髪入れず、空中の剣を串の背で叩き落とし、ガルドの喉元に焔を纏った串先を突きつける。


一瞬の沈黙。


闘技場を埋め尽くした観衆が、ただ呆然とその光景を見つめていた。

誰もが予想し得ぬ、一撃必殺の妙技。


ガルドは脂汗を浮かべ、ゴクリと唾を飲み込む。


「ば、馬鹿な……串一本で、俺の剣を……」


源之助はにこりと微笑むと、串を下ろし、懐から香ばしく焼けたねぎまを取り出した。


「敗者には、うまい焼き鳥がつきものよ。食え、ガルド殿」


差し出された串を、ガルドは震える手で受け取り、一口。


「……う、旨い……!なんだこのタレの香ばしさと炭火の香りは……」


その瞬間、ガルドの目から涙がこぼれた。


「俺は…この味を知らずに、ただ勝ち負けだけに縛られていたのか……」


観客席は大歓声。

「殿様ーッ!」

「串最強ーッ!!」


タケシ精霊も涙目で叫ぶ。

「殿、最高っすよ!!」


源之助はねぎまノ串を天に掲げ、満面の笑みを浮かべた。


「余の串、これぞ天下泰平の道なり!」


こうして第一試合、殿様の圧勝。

剣を捨て、串を受け取ったガルドは、その後殿様の側近となることになる。




【第二試合:巨岩ゴーレム vs 源之助】

第一試合の興奮冷めやらぬまま、闘技場は次なる戦士の登場に再びざわめいた。


「第二試合――!挑むは、我らが“串の戦士”殿様・松平源之助!!」


大歓声。串を高く掲げ、源之助は悠然と中央へと歩み出る。


「余の串、また一振り…いや、一串入魂といこうぞ!」


対するは、今回の大会屈指の強敵。

体長四メートル、全身を岩石で構成された巨体の魔物――

グランバルト・ザ・ロックゴーレム


地鳴りを立て、闘技場の砂地を踏みしめるたびに地面が揺れる。

顔の代わりに苔むした岩板に埋め込まれた二つの紅い魔石が、不気味に光る。


「ゴゴゴ……」


観客は息を飲み、ユリカも唇を噛む。

「殿様、相手は常人の剣でも歯が立たないわ!」


だが源之助は微笑むだけ。

「ふむ、硬さと大きさ…それだけで勝てるなら、この世は既に串王国よ」


タケシ精霊が肩口から叫ぶ。

「殿!あれは魔鉱石製だ、普通の刃でも割れねぇ!」


「問題無用、串こそ万能の兵法なり」


そして審判の号令が響く。


「いざ――尋常に勝負!!」


■巨岩の猛撃


開始と同時に、ゴーレムが巨腕を振り上げ、地を叩き割る衝撃波が発生。

破片が宙を舞い、観客が悲鳴を上げる。


源之助は軽やかな足捌きで左右に跳躍。

砕けた岩の隙間を縫うように駆け抜ける。


「よし、串点検」


ねぎまノ串の先端を指で弾くと、串先が赫々と燃え上がる。

その光景はまるで刀匠が鍛え上げた刃のようだ。


■串の一突き


ゴーレムは拳を振り下ろし、地面を叩き割る。

その瞬間、殿様は地面すれすれを滑り込み、串を両手で構えた。


「穿つは一点、秘術・炎穿の突き!!」


ゴーレムの胴体の合わせ目、かすかな隙間に串が突き立つ。


ズバァッ!!


突き刺さった串から、瞬時に赫い炎が走る。

ねぎまとタレの香ばしい香りと共に、内部の魔鉱石を直接炙り上げると、

ゴーレムの巨体が内側から赤熱化。


「ゴ、ゴゴゴゴ…ッ!!」


観客、騎士団、ユリカ、皆が絶句する中

ゴーレムの巨体はまるで焼き上げられた石焼き芋のようにぱっかりと割れ、

中心から噴き出す熱風とともに崩壊。


辺りには香ばしい炭の匂いと、焼き鳥のような甘辛い煙が漂う。


■決着


タケシが飛び跳ねる。

「殿!やったぜ、完璧っす!」


ユリカも呆然としながら微笑む。

「串…恐ろしい武器ね」


源之助は崩れたゴーレムの残骸から、煌めく魔石を串の先で拾い上げ、

観客席に向かって誇らしげに掲げた。


「泰平の世は、この串の先に在り!!」


再び湧き上がる歓声と、串を模した旗の嵐。

観客「殿様ーっ!!串最強ーっ!!」


第二試合も、殿様の圧倒的勝利に終わったのだった。



【第三試合・決勝戦:狂気の魔女 アルカ=レイン vs 源之助】

夜の闘技場。

月が二つ、妖しく輝く。

観客席は今や満員御礼。

広場の焚き火は赤々と燃え、誰もが決戦のときを待っていた。


「いよいよ…来たわね」

ユリカは小さく息を呑む。


「殿、相手はマジでヤバいっす。こいつ、今まで誰にも負けたことねぇ…」

タケシ精霊も、珍しく震えていた。


名をアルカ=レイン。

この異世界クシルガルドで“狂気の魔女”と恐れられる女魔導師。

美しい白銀の髪、妖艶な微笑、そして無敗の記録を持つ。

精神魔法と幻惑術を駆使し、対戦相手の心を砕いてきた。


対するは、串一本で戦い抜いてきた天下泰平の男、松平源之助。

肩には炭火焼きの香り、手には赫く燃えるねぎまノ串。


審判が宣言する。


「決勝戦――尋常に、勝負!!」


■開幕・幻術の罠


アルカは一歩も動かず、妖艶に微笑む。

「串一本でこの私に挑む?愚かな男ね」


その瞬間、闘技場の空気が一変した。

源之助の目の前に、無数の幻影が現れる。

アルカの姿が幾重にも分身し、八方から笑い声が響く。


「余興よ。さあ、私を串刺しにできるかしら?」


観客には何も見えない。だが源之助の視界だけ、無数のアルカが踊り狂っていた。

脳に直接訴えかける精神幻術。普通の人間なら、ここで気を失う。


「くっ…これは…」


タケシの声も遠のき、闘技場が歪んでいく。

串を握る手に汗が滲む。


■精神集中と“炭火の境地”


だが、殿様は静かに目を閉じた。


「……違う、幻に惑わされるな。串打ちと同じ、肉とねぎを見極め、串を通す。その目は、迷いなく、一筋」


炭火の前で鍛えた集中力が、源之助の意識を研ぎ澄ませる。

やがて焚き火の残り香とともに、ひとつの違和感を感じ取る。


「いたぞ、本物…!」


串を逆手に持ち、真上へと跳躍。

幻影の海を飛び越え、一点を貫く。


「炭穿の一突き!」


赫く燃え盛る串先が、幻影の中のたった一人のアルカに突き刺さる。


ズガァン!!


闘技場を揺るがす爆音。

幻術が霧散し、観客の目にもアルカの姿が現れる。


「う、嘘……!私の幻術が…!」


アルカは膝をつき、串の先に赫く炭火の炎が揺らめく。


「勝負ありッ!!」


■アルカの涙


源之助は串を引き、そっと自らの炭火で焼いたねぎまを一本差し出す。


「勝者も敗者も串の下に平等。食え、うまいぞ」


アルカは、しばし串を見つめ、そして一口。


「……こんな旨いもの…知らなかった」


その頬に、一筋の涙が伝う。


「私…今まで、ずっと孤独だった」


源之助は優しく微笑み、肩に手を置く。


「誰もが泰平の世を求めている。ただ、串と心が届けばいい」


アルカは静かに微笑み、串を手に取った。


■優勝と、始まる改革の兆し


大会の優勝旗が源之助に授与され、闘技場は割れるような歓声に包まれる。


「殿様ーー!!」

「串最強ーーッ!!」


王国は串の力を認め、新たな時代へと舵を切る。

源之助の異世界改革は、ここから本格的に動き出すのだった。

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