リアの棺 (2)
建物ができ始めているところ以外は、まだ道も至るところ亀裂だらけで、陥没も手つかずのまま放置されたところがいくつもあった。瓦礫も道を塞ぐものを排除しただけで、至るところで山積みになっている。
建物から漏れる以外の光は消え失せたそんな廃墟に近しい場所で、レオンの小さく光らせたホーリー・ライト(聖光)だけが頼りに、くぼみに近づくと、それはかなりの深さで、さらにその底まで降りていくのに相当の時間を要した。
たどり着くと休みもせずに、リアがユダを呼び出した。
「ユダ、『ゆりかご』は起動できますか?」
「可能です。」
「なら浮上させて下さい。ゆっくり地表に顔を出すくらいで止めて下さい。」
リアがユダに命じてからしばらくすると、地面の一部が盛り上がりだした。
「危ないので少し離れて下さい。ユダ、ゆっくりですよ。」
「かしこまりました。」
せり上がった地面から丸みを帯びた金属か鉱石か区別が付かない、見たことのない材質で覆われたものが顔を出すと、それは次第にそれは次第に大きくなり、ゆうに人二人分くらいの直径のある大きな球体が出現した。
「これがここにたどり着くまで乗っていた、私たちの世界で通称『ゆりかご』と呼ばれるものです。」
「こ、こんな物が……まさか空から落下して……」
「そうです。制御を失って、地表に激突する寸前、緊急脱出装置が作動して、私だけ『ゆりかご』から放り出されました。そして、エイム様に見つけていただいた私だけが助かり、リオキリルの住人たちは、この『ゆりかご』の落下の衝撃と、その衝撃による岩盤破壊が原因で発生した地震で……」
いつの間にかリアは涙を流していた。それを拭おうともせずに、『ゆりかご』に近づいていった。
「ユダ、サバイバルキットを取り出せますか?」
「可能です。」
「では、サバイバルキットを取り出して、メモリーにあなたの記憶しているものをバックアップしてください。」
「かしこまりました。」
『ゆりかご』の扉が開き、その中からリアが取っ手の付いた大きな箱ようなものを取り出した。
「私はここで皆さんとはお別れです。」
『え?!』
「ユダ、あなたはこれからエイム様に付き従いなさい。」
そう言うとリアはいつもユダが入っている筒をエイムに手渡した。
「ユダがいれば、必要なときにレビルオンは呼び出せます。」
「ちょっとまて!お別れってどう言うことだ?」
「ユダ、私からの最後のお願いです。この『ゆりかご』をできるだけ深い海の底の沈めてください。」
「かしこまりました。」
ユダの了解とともに、『ゆりかご』は音も立てずにゆっくりと加速しながらどんどん上昇を続け、やがて真っ暗な空に溶けて見えなくなった。
「あの『ゆりかご』は私の棺になるはずでした。でも、私がここにたどり着いたために大勢の人が亡くなった。しかも、死ぬはずだった私だけが生き残って……この地で、私はその罪を償う道を探します。どうぞ、私のことは忘れて、ご夫婦三人で……」
「ふざけんな!それっぽっちの説明で『はい、そうですか』って言えるわけないだろ!」
「そうだよ。リアさん、そんな急に、たったそれだけで言って、さよならなんてずるいよ。」
「リア、教えて。あなたがここにあれを落としたの?違うでしょう?」
「ごめんなさい……ごめんなさい。」
「なんで謝るんだよ!謝るよりちゃんと教えてくれ!」
リアはそれ以上、何も言わなかった。ずっと下を向いたまま、泣き続けていた。
暗く重い時間だけが流れて、リアだけでなく、エイムもナディも、レオンも次の言葉が見つけられずに、その場から動くことができなかった。




