リアの棺 (1)
リアが落ち着くのを待って、エイムたちは、リオキリルの側を流れるアガムーン川の川辺まで降りて、そこでテントを設営した。
「どうだ。リアは落ち着いたか?」
「うん。ただ、どうしたのって聞いても何も教えてくれない。夜、人気のない時を見計らって、あのくぼみの中心に連れて行ってほしいって。」
ここまでやって来て、もうリアが望むことに対して否やはない。
そして、間違いなく言えることは、そこにリアがこの地にやってきた理由がある。
「行くしかないよね?お兄ちゃん。」
「ああ。」
そこに何があるというのか?
エイムたちがテントを張った場所からは、あの地震がなければ、エイムが今頃、通っていたであろう魔法学院の建物が見える。正確には建物だった残骸が、まだ手つかずのまま残っている。
こんな場所に、しかも、瓦礫すら残っていないあの場所に何があるのか?エイムにはまったく想像もつかなかった。
そこから、さして会話もなく、どれだけ時が過ぎたろう。日も完全に暮れて、廃墟の街を弔うようにいくつか光を湛えていた灯火もずいぶん消えた頃になって、リアはテントから出てきた。
「リア。」
レオンがかけた声にも反応せず、静かに薪を挟んで、エイムの前にリアは腰を下ろした。
「まず今から、エイム様たちにどうやって私がここにたどり着いたかをお話しします。信じられない話だと思います。しかし、どうか最後まで聞いてください。」
エイムたちは顔を見合わせてから、エイムがリアに向き合ってうなずいた。
「あの星の輝く空の遠く向こうから、私はやって来ました。もともとこの大地で生を受けて育った人間ではありません。」
もう出だしから、エイムたちでは想像もしえなかったリアの話が始まった。
「この世界には魔法というものがありますが、私がいた世界には『科学』というこの世界とは異質な魔法があり、私たちはその力で文明を築き、発展しました。」
リアがいた世界は、魔物など人間の存在を脅かすような危険な生物は存在せず、またエルフやドワーフなど人間より優れた技術や能力を持つ亜人種もいなかったという。
その世界で『科学』という魔法の力で、ついには大地には住むところがなくなるほど増えた人間は、別の大地を求めて空へと旅立ったのだという。
「私はその人が生まれた大地を旅立った何世代もあとに生まれた人間です。」
新天地を見つけ、そこでまた人は増え続け、さらなる新天地を目指していた空のかなたを旅していたリアたち。
「その旅の中で、私たちは事故に見舞われました。空のかなたを旅する船に乗っていた私たちは……難破したのです。その難破した船から、緊急脱出した私は空のかなたをさまよい続け、たどり着いたのがここです。」
エイムたちは声も出なかった。あまりにも突拍子が過ぎて、信じる信じない以前の問題である。
「話だけでは信じてもらえないと思います。ですので、これから私がここにたどり着いた際に乗ってきたものをお見せします。」
「それがあのくぼみの中央にあるって言うのか?」
「ご推察の通りです。あそこへ私と一緒に付いてきていただけますか?」
そうして、日も暮れて月も出ていない闇夜の中、人目を避けながら、エイムたちはリアを連れて、くぼみのある廃墟の中心地へ向かった。




