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大地震ってなんだよ! (3)

 何か兜のようなものをかぶっている感覚がエイムにはあった。そう思っているうちに目の前の光が晴れて、目の前に……ゴブリン!


「クソっ!」


 棍棒で殴りつけられて……防御すら取れなかったエイムを殴りつけたその棍棒は、あっけなく砕け散った。痛くもかゆくもない。何なら殴られた感覚すらない。

 どう言うことだ?

 わからない。しかし、その答えを探している場合ではない。


「この野郎!」


 エイムは立ち上がると、すぐさま、その棍棒で殴りつけてきたゴブリンの顔面を、拳で殴りつけた。


「えっ?!」


 信じられないスピードで放たれた自分の拳で、目の前のゴブリンの顔面が拉げた。と、思った瞬間、弾け飛んだ。頭だけが吹き飛んだ。

 頭をなくしたゴブリンの身体が、その場で力尽きて倒れ込んだ。

 エイムに襲いかかろうとしていたその様を見ていたゴブリン達が、一斉に足を止めて後ずさる。


 エイムがゴブリンの頭を吹き飛ばした自分の拳を見ると、ゴブリンの血でまみれてはいたが、白い籠手のようなものを着けている。


「装着者の身体能力が不足しています。安全のため、出力を十パーセント以下に制限します。」


 なんだ?どこから聞こえてくるんだこの声は……と、その答えも見つけられないうちに、今度は視界の端に文字が浮かんだ。


『安全装置作動』


 なんだ?どうなっている?何が起こってる?

 混乱しているエイムに向かってきたゴブリンに、今度は蹴りを放って応戦すると、そのゴブリンは上半身と下半身が生き別れになった。


「エイム。」


 あの妖精の声だ。どこから聞こえてくる?


「あなたの纏っているレビルオン・スーツが、あなたの身体能力を強化しています。あなたの身体がその反動に耐えられるレベルで出力が抑えられていますが、それでも十倍近くの力で攻撃できます。筋力だけではなく、視力、聴力などあなたの持っているあらゆる能力全てを強化します。」


 十倍?!普段なら何の冗談だと思っていただろうが、この状況下では、今できていることを信じるしかない。


「オフィーリアに、敵、接近中!」


 その声に反応してエイムが振り返ると、視界の中のオフィーリアの後ろ姿に緑の、そして、彼女を追いかけている狼に乗ったゴブリンに赤い印で示された。


「やらせるかよ!」


 何がどうなっている?もうそんなことはどうでも良くなっていた。振り向きざま、エイムはオフィーリアに向かって駆けた……と言うより飛んだ。二度、三度しか地面を蹴った感覚はない。振り返ったときは、小さく見えたオフィーリアがあっという間に目の前まできて、そして、そこで再び振り返る。

 移動している間に魔法力が回復している実感もあった。いける!


「レイ・ボウ!!」


 光の矢が飛ぶ!しかも、一本ではない、何本もの光の矢が一斉爆ぜて、最も近づいてきていたゴブリンたちを狼ごと吹き飛ばし、さらにその後ろから迫っていた魔物も次々と絶命させた。


「ま、マジか?!」


 これならいける。この力があれば……そう思った瞬間、エイムはめまいを覚え、同時に身体に激痛が走った。


「装着者の身体に深刻なダメージを検知。これ以上の出力の制限は不可。安全のため、あと三分で強制解除します。」


 妖精の声ではないその声と同時に、エイムの視界の右端に『百八十』という文字が赤く浮かび上がる。


「くっ、どう言う意味だ?」


「あと僅かな時間しか、この力は使えません。これ以上はエイムの身体が耐えきれないとスーツが判断したようです。」


 冗談じゃない。まだ村が蹂躙されかねない数の化物が残っているのに、ここで力尽きてどうする。行く場所もなくして、帰る場所までなくしてたまるか!肉体的にも、精神的にも追い詰められたエイムに頭に、最後の手段が思い浮かんだ。


「さっき、俺の身体が耐えられないから力を制限したって言ったな?だったら、俺の体力が上がれば、もっと力が出せるのか?」


「その通りです。」


 だったら……


「ストレングス!」


 自分の身体に体力強化の魔術を施したエイムは、いつもの比ではないくらい爆発的な体力の上昇を感じた。


「装着者の身体能力が規定値を突破。安全装置を解除します。」


 エイムは飛んだ。狼やゴブリン、ホブやオークまでいる。それも、数え切れないその魔物達を見下ろす位置で、エイムは最後の力を振り絞る。


「俺の帰る場所に、俺の大事な人たちもいる故郷に、魔物風情が手を出すんじゃねぇ!みんな消し飛べ!!レイ・ボウ!!!」


 再び光が爆ぜた!数え切れないほどの光の矢が、魔物達のいる大地に雨のように降り注ぐ。光の矢の爆発の一つ一つが、次々と魔物達の断末魔へと変わっていく。

 そのことを感じながら、エイムは気が遠くなっていくのを感じた。

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