リアからの依頼 (1)
とりあえず、その日は、みんなで閉まりかけていた村の酒場に押し入って、時間ギリギリまで祝杯を挙げて、次の日は村で食材を買い集めて、買ってすぐ食べられるもので、昼食も済ませると、午後からはナディが豪華な夕食のための準備を始めた。レオンとリアはナディの手伝いをしつつ、エイムが始めた家の掃除も手伝ってくれた。
そうして、一段落してから、順に風呂にも入って、テーブルを囲んだ。
「そんなに手の込んだものはできなかったけどね。」
「十分すぎるだろ。少なくともここ十日では一番豪華だ。じゃあ、乾杯だ!」
全員でグラスを合わせて、早速、ナディが作ってくれた数々の料理に手当たり次第、手を付けていった。
「うまい!」
「ふふっ。お兄ちゃんにそう言ってもらえるのが、やっぱり一番嬉しいな。いっぱい食べてね。」
ナディの作る料理はいつも美味しい。ただやはり、ベランメルの麓で野営していたときは、さすがに食材にも限りがあったが、その制限がなくなると、さすがは村一番の料理上手 マイアの一番弟子である。
「うちのお母さんの味ともちょっと違うのよね。でも、美味しい。ナディの味がする。」
「私はマイア様の料理も、ナディ様のもどちらも美味しいです。大好きです。」
「みんなありがとう。」
そうして、昨日以上に食べて、飲んで、大いに話して一段落した夜も更けたころ、エイムは麻袋から取り出した二十枚の金貨を、それぞれ五枚ずつ、ナディとレオン、そしてリア、そして、自分の目の前に積んだ。
「ギルドの評価はないのは残念だけどな。今回の報酬だ。それぞれ、受け取ってくれ。」
「私はお兄ちゃんの奥さんだから、お兄ちゃんが預かって。」
「僕もそれでいい。その代わり、マルタに戻ったら、何かプレゼント、欲しいな。」
「あ、それいい!私も。何でもいいからお兄ちゃんが選んでね。」
「ほんとにいいのか?それで?」
『うん!』
二人は顔を見合わせてから、声を合わせて返事をした。そして、今度はリアにエイムは目を向けた。
「リアは受け取っといてくれよ。」
それを聞いて、リアは神妙な面持ちでその金貨五枚を、エイムの前に押し戻した。
「おい!それはだめだって。今回の一番お手柄だったのは、そもそもリアで、それなのに等分ってだけでも申し訳ないんだから。」
エイムの言葉を聞いてもまだ表情を崩さないリアがこう切り出した。
「違います。預けるのではなくて、この金貨で、皆様に私からの依頼を受けてもらえませんでしょうか?」
その一言で、打ち上げの和やかな雰囲気は消えていった。
「依頼?……って何だよ?」
「私をリオキリルに連れて行っていただきたいのです。」
「どう言うこと?リア、ちゃんと教えてくれないかな?」
「私がどうやってここにやって来たのか?その真実を私は知らなければなりません。」
それがレオンの質問へのリアは答えだった。
「そのために……それがリオキリルに行けば分かるって言うこと?」
レオンはリアの答えの真意を理解しかねていた。
「リオキリルがどんな惨状になっているかも分かりませんし、あれから数ヶ月経った今でも、余震が完全には収まっていないと聞きます。そんな被災した中心地に行く危険は心得ているつもりです。」
リアは表情を変えなかった。そこに曲げることはできない意志をエイムは感じた。
「ただ、私は一人ではリオキリルに、おそらくたどり着けません。お願いします。力をお貸し下さい。」
そんなリアの依頼内容を聞き終わってもエイムの表情は変わらなかった。
「だから依頼って何だよ?俺たちパーティだろ?仲間が行きたいって言うなら一緒に行けばいい。金なんていらない。」
「エイムの言うとおりだよ。どうしたの?リア。」
「リアさん、そもそもこのお金は、お兄ちゃんも言ったみたいに、リアさんの思いつきがきっかけで手に入れたものなんだから、何ならリアさんから分け前もらう立場なんだよ、私たち。私たちもそんな他人行儀にしたほうがいい?お兄ちゃんの言うとおり、依頼だなんて言わないで、行きたいなら行きたいって、素直にそう言って。」
リアの表情から緊張が取れた。
「仲間?パーティ?」
「まぁ四人でリオキリルに行くなら、それなりに費用も必要だろうが、それはマルタに戻って、ギルドで依頼でも探せばいい。荷物運びか、その護衛とか、そういうのがあるだろう。」
そして、リアはぼろぼろと涙を流し始めた。それを隠しもせずに涙を流し続けるリアに、そっとレオンが寄り添って抱きしめた。
「いいよ。嬉しくて泣き始めたら止まんないんだよね。僕にも経験があるから、分かるよ。好きなだけ泣いたらいいよ。」
「れ、レオン様。」
「パーティとか、仲間とか、そんなんじゃない。僕はもうリアを大事な家族の一人だと思ってるよ。」
そのレオンの言葉で、リアは剥き出しになった。もう声を上げることも厭わずに泣き続けた。一番付き合いの長いエイムですら、この時、初めて本当のリアを垣間見たような気がしていた。




