ハイキングに行こう! (3)
日も沈みかけて、空も色を変える頃になって、ようやくエイムは帰ってきた。自分の身体の何倍もある大岩を抱えて。
「さすがにこのサイズの岩抱えて、制限時間内には帰ってくるのは無理があるな。」
「それでも、一度の変身時間が五分弱、半日で四、五回でしたら、許容範囲内です。今日はしっかりとお休みになってください。」
そんな会話をユダと交わしながら、空いた場所にその岩を下ろして、エイムは変身を解いた。
「お疲れ様でした。エイム様。」
「まあ、確かに疲れたね。あの山のてっぺん近くまで登って、上で岩盤をいくつか掘り出して、これ抱えて降りてくると、さすがに。」
「今日はもうゆっくりなさってください。これから、私とユダで作業に入りますので。」
「これ、俺がレビルオンになって砕くんじゃないのか?」
「探すのはあくまで植物の球根です。レビルオンのパワーで砕いたら、球根ごと潰れてしまいかねないので。」
「じゃあ、どうすんだ?」
「私が割ります。」
「お兄ちゃん、こんなおっきな岩、持ってきたの?レビルオンのパワーってすごいんだね。お疲れ様。」
え?と言う顔をしているエイムに、今度はナディが労いの言葉をかけてきた。
「どうかした?」
「いや、ちょっとリアとこれからどうするか?って話を聞いていただけなんだが……」
「お兄ちゃん、お昼も食べないでお腹すいてないの?リアさんも、まずは腹ごしらえしてからにしようよ。」
そう言って、薪を囲んで、いつものようにエイムの右にレオン、左にナディ、前にリアが座って、宝物が埋まってるかもしれない大岩を四人で眺めながら、夕食を取りはじめたころには、あたりにはすっかり夜の帳が下りていた。
「エイム、大丈夫?」
「ああ、一日目でへばってたら、この先が思いやられるからな。心配しすぎだ。レオン。」
その返事を聞いても、レオンはじっとエイムの方を見続けていた。
「ありがとな。ほんと、大丈夫だ。」
「うん、わかった。」
そうして、皆でナディが用意してくれた夕飯を全て平らげると、リアはユダと相談しながら、何やら大岩に印をつける作業を始めた。それをエイムは火の番をしながら眺めていた。
飽きるまで随分長い間、見ていたが、それでもリアは作業を止めるそぶりを見せなかったので、とうとうエイムから声をかけた。
「リアも、まだ作業を始めてから一日目だぞ。そろそろ休んだらどうだ。」
「はい、しかし、暗いうちにしておいた方が効率のいい作業がございますので。あともう少しだけ。もうご迷惑をおかけしないようにはいたします。」
「迷惑だなんて思ってないよ。たとえ球根が見つからなくても何も思わねえよ。」
「え?」
「だってそうだろう?冒険者がいちいち宝の地図の場所に宝がなくて腹立ててたんじゃ、身が持たねえよ。」
エイムの言葉に驚いて、リアの手も止まった。
「それにだ。リアもナディも初めてのクエストだし、俺もレオンもそんなに豊富に経験があるわけじゃない。ここまで来て無事に帰れれば、ハイキングがてらいい訓練になったと思えば十分だ。」
エイムのその言葉で、確かに肩に入っていた力をリアは認識した。そして、それが少し軽くなったように思えた。
「ゆっくり行こうぜ。たとえこれがうまくいっても、いきなりシルバーやゴールドの冒険者になれるわけじゃない。一生楽に暮らしていけるわけでもない。そんな人生、簡単じゃないことくらいは、俺でも分かる。」
そうして、リアがやっと手を止めた。
「その優しさで、レオン様やナディ様を心を射止めたのですね。だめですよ。その優しさを私なんかに使っては。」
そう言ったリアは、今まで見たことのないかわいいいたずらを見つけたような微笑みを浮かべていた。
「分かりました。私ももう寝ます。」




