愛の巣を作ろう! (4)
部屋に戻ると、ナディは自分の荷物の中から水晶玉を持ち出した。ナディが軽く念を込めるとそれは淡く光り出した。ま、まさか、これは……
「ママ、いる?聞こえる?」
「なんだい?三日やそこらで、もう行き詰まったのかい?」
そこから聞こえてきたミネルバの声に「うそ!」と声を上げるほど驚いたレオンとは対照的に、「へぇすごいですね。」とリアの反応は意外とより薄かった。
エイムも初めて見たがコミュニケート(念話)の魔道具である。
一発ものの、使ったら終わりのスクロール(巻物)などと違って、何度でも使えるものが多い魔道具というのは、すでにその製法が失われているものなどもあったりするために基本、大変高価なものである。
テレポーテーション(転移)の魔道具などは特に論外で、価値すらつけられない代物で、それほどではないにしろ、このコミュニケートの魔道具も売れば、並の冒険者が頑張っても一生で手にできるか、できないかというような金額におそらくなる。
そんな貴重品を娘に持たせていたのか?エイムが驚愕を覚えたのはそこだった。
「ちがうの。リアさんがね。クリストル草を探しに行こうっていうの。」
「クリストル草?冒険者になりたてのあんたたちが?正気かい?」
あんたに言われたくないとエイムは危うく口に出しそうになった。
「お忙しいところ夜分に申し訳御座いません、ミネルバ様。実は、エイム様からクリストル草のことを教わって、ちょっと気になることがございまして。」
「ほう。そりゃなんだい?」
「ギルドの資料室にあった採取記録を見ていると、発見された場所に共通点があって……大きくは、冬にはこの地方でも山頂付近には雪が積もるような標高の極めて高い山、そして、そのすべてが火山ではなく岩山。かつ銀が採掘される鉱脈が近くに存在する、もしくはしていたことです。」
その他、現時点でリアが気付いて共通点を事細かく、すべてミネルバに伝えた。
「面白いこと言うね。それで。」
「三件しかこちらでは記録を見つけられなくて、ただの偶然ということも十分、考えられます。そこで他にクリストル草が発見された記録などミネルバ様ならご存じないかと。それにミネルバ様の忌憚のないご意見もお聞かせ願えれば。」
水晶の向こうで、ミネルバが考え込んでいるような間が空いた。
「私の記憶にはないが、ちょっと調べてあげるから明日、また連絡もらえるかい?」
「こちらでも明日、また他の記録を探してみますので、よろしくお願い致します。」
「それじゃあママ、よろしくね。これからお姉ちゃんたちとお風呂行ってくる。」
「ふふ、なんだい、まだまだ余裕そうだね。それに元気そうで何よりだ。まかせときな。」
そう言うと、ナディとレオンはリアを連れて、今日は公衆浴場に行くと言って部屋を出ていった。
一人残ったエイムがミネルバに話しかけた。
「師匠、最後に俺から聞いていいか?この魔道具売ったら、俺たち、当面は遊んで暮らせるんじゃないのか?」
「若いうちから楽することばっか考えるんじゃないよ!一人前の男になるんだろ!うちのナディをやったんだ。つまんない男になるんじゃないよ!」
やっぱりか……
「聞いただけだ。ナディは俺の力で幸せにしてやる。」
「それでこそ、私の弟子。うちのナディの見込んだ男だ。期待してるよ。」
ミネルバがそう言うと、水晶に宿っていた光はふっと消えた。




