ナディの初夜♡ (1)
「ナディーン・フランツ、あなたはエイム・アービンを愛し続けることをここに誓い、愛され続けるよう努めることを誓いますか?」
「もちろん!」
「エイム・アービン、妻となるナディーン・フランツを愛し、守り続けることを神の前で誓う接吻を彼女に捧げなさい。」
ナディはほんとにどんどんきれいになる。それを確信させる白いドレスを着たナディは、かわいさももちろんだが、化粧をして少し背伸びしたように大人びていて、どこかの国のお姫様のようだった。そんなナディに、エイムはそっとキスをした。
「あとでもっとつよーいの、いっぱいしてね♡」
聞こえなかったふりをして、ゼスは一つ軽い咳払いをしてから、今度はレオンに問うた。
「レオン・ラインハート、あなたはエイム・アービンを愛し続けることをここに誓い、愛され続けるよう努めることを誓いますか?」
「は、はい。」
「エイム・アービン、妻となるレオン・ラインハートを愛し、守り続けることを彼女と神の前で誓う接吻を彼女に捧げなさい。」
びっくりしたのはレオンの方だった。普段は化粧どころか、髪を整える手間も面倒だからといって短めに束ねているだけのレオンが、美しく髪を整え、初めてしたという化粧をミネルバにしてもらったレオンは、名家の貴族のお嬢様のようだった。
そんなレオンをエイムが見つめる。
「あんまりジロジロ見ないで。はずかしいから。」
エイムにしか聞こえないくらいの小さい声で、そんなかわいいことを言うレオンをそっと抱きしめて、エイムはレオンに初めてキスをした。緊張で硬くなって震えていたレオンを、腕の中に感じながら少しだけ力を込めると、レオンはその身をエイムに任せてくれた。
「ここに、一人の男と、二人の女が立てた誓いをどうか神が見届けてくださいますよう、皆で祈りを捧げましょう。」
こうしてエイムとナディ、そして、レオンの三人の結婚式は、それぞれの家族とリアに見守られて、つつがなく執り行われた。
「うちのナディ、そして、うちの息子になったエイムと、娘になったレオンの結婚を祝して、かんぱーい!」
年末の宴に続いて、再びやミネルバが音頭を取って祝宴が始まった。
エイムの家のリビングのテーブルを、またもや埋め尽くす料理の数々。
「しかし、マイアさん、大丈夫か?俺の分も含めて、三人分の衣装を用意して、料理の準備まで。」
「お姉ちゃんの衣装は、ママが着た花嫁衣装を、私のはマイアさんのを手直しして作ったみたいだから、一から用意するよりは、大分、楽だったみたい。」
「ミネルバさんも衣装作りは手伝ってくれたみたいだし、料理はナディも、リアも手伝ってくれたし。そんなに急がなくてもいいよって言ったんだけど、僕の一生に一度のことだからって、早いほうがいいに決まってるって、聞かなくて。」
祝宴が始まって間もなく、マイアは食べるだけ食べて、飲むだけ飲んだところで、そのまま燃え尽きたように潰れてしまった。
その横で、ゼスとミネルバが、昔話に花を咲かせていた。
「いいお母さんですね。レオン様。」
そうリアに言われると、マイアを介抱しながらレオンはとても照れくさそうだった。
「うん。でもこんなに嬉しそうなお母さん、僕も初めて見たよ。」
そんなにバタバタとしながらマイアが用意してくれた料理の数々は、いつもと同じくらい、いや、それ以上に美味しかった。
「お母さんがね。エレノアさんの分まで祝福しなきゃって。自分はエイムのお母さんになるんだからって。ほんとに嬉しそうに言ってた。」
母 エレノアが亡くなってから、エイムはこれからずっとたった一人で生きて行くんだと思っていた。
しかし、ここ数日、娘の、そして、エイムの結婚式の準備のためにずっと寝る間も惜しんで忙しくしていたマイアの、すべてをやりきって幸せそうに眠る姿を見て、マイアだけではない、自分の幸せを心の底から願ってくれる人の存在を、エイムは今更ながら感じずにはいられなかった。
なんだかんだと面倒を見て、叱るときには叱ってくれるミネルバにしても、きっと同じなんだろう。
ずっと見えていなかったものが見えてきて、止まっていたものが、エイムの中で動き始めたような気がしていた。
この新しい家族を、何よりナディとレオンを、何が何でも幸せしてあげたい。どうすれば二人を幸せにできるか、それはすぐにはわからなかったが、その欲求がエイムを前へ前へと動かす新たなエネルギーとなった。
「僕、お母さんとお父さんを連れて帰るよ。」
「引き続き私はミネルバさんの家に泊めてもらってよろしいでしょうか?」
「うちの娘婿が面倒みるって言ってんだい。なに遠慮することがある?」
そう言って、概ね後片付けもすんだところで、ミネルバはリアを連れて帰っていった。
そうして気がつけば、ナディと二人きりになっていた。




