秘密にしといてくれるか? (4)
目を覚ますと、レオンはエイムの着ていた外套を着せられ、エイムに負ぶられていた。
「やっと気がついたか?もうちょっとで村につく。」
もう日も暮れ始めていた。そうして、辺りの様子が認識できるようになると、今度は右足が思い出したように痛みだした。ゴブリンたちの襲撃を受けて、エイムに助けられるまでの記憶が、順にレオンの頭の中に蘇ってくる。
エイムの背中から伝わってくる温かさが気を落ち着かせてくれたが、それでもまだレオンからは何も言えないでいた。
「どうした?泣いてんのか?」
「泣いてなんか……ない。」
「やっとしゃべってくれたな。」
そう言われて、レオンにも、さらに前の記憶が蘇ってきた。
助けを求めて、村に駆け込んできたオフィーリアからエイムが村の外で気を失って倒れていると聞き、そのエイムを家まで運んでくれた衛兵が、直前に空を飛ぶ白い騎士から無数の光の矢が降り注ぎ、村を襲ってきた魔物たちの群れを壊滅させたと聞いたことを、レオンは思い出した。
「村を守ってくれたの……エイムだったんだ。」
その言葉を聞いたエイムはすぐには返事をしなかった。
「村を救ったとか、そんなたいそうなことした覚えはねえよ。ただ、秘密にしてくれるか?あの鎧のこと含めて。あの鎧はリアの持ってた魔道具みたいなもんで、口止めされてるんだ。」
「リアって、オフィーリアさんのこと?」
「ああ」
物心が付く前からずっと一緒に居るのに、ずっと同じ距離感でいる自分に比べて、出会って数日で、愛称で呼ぶようになるほど距離を縮めているリアをうらやましく思うのに、いざ、エイムから抱きついてきても女の子らしい振る舞いもできない自分。
エイムがいつまでも目を覚まさないことに動揺するナディを、冷静を装って大人ぶって聡しなががら、エイムが男であることを意識させられると、子供のように恥ずかしがることができない自分。
全部いやだった。もうやめたい。少しずつでいいから……そんな事をレオンはあれから、そんなことをずっと考えていた。
「じゃ、僕にも口止め料欲しいな?」
「なんだよ。知ってると思うけど金ならねぇぞ。」
「そんなんじゃないよ。あの……あのね。僕を助けに来たとき言った言葉、もう一回……言って?」
レオンにはエイムの背中が少し熱くなった気がした。
「俺の大事な幼馴染みレオン。これでいいか?」
それでもレオンには嬉しくて仕方がなかった。
「なんかだいぶ違う気がするけど……いいや。これで秘密にしといてあげるよ。」
レオンはエイムの背中にぎゅっとしがみついた。ちょっとできた気がした。
そんなレオンの柔らかさを背中いっぱいに感じていたエイムは前が突っ張って歩きにくくて仕方がなかった。




