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フジヤマは俵型ハンバーグの夢を見るか?

「なぁ、この食べ物なんだと思う?」


 同郷の友人に急に携帯端末の画面を向けられて覗き込む。なにかの料理のようだ。


「なんだ、これ? でかいミートボール?」


 世界の食文化が混ざり合い、どこに行っても世界中の料理が食べられるようになって久しい。この国に移り住んだ今でも地元の料理が食べられるのは安心感があっていい。


「いま、バズってるんだよ、なんだったかな、サワヤカ?」


「サワヤカ?」


「そう、サワヤカって料理らしい」


 ひき肉を丸めて焼いたものにソースがかかっている。網状の焼き目が食欲をそそる見た目だ。


「それは、どこの食い物だ?」


 ちょうど昼時だ。思わず聞くと、友人は携帯端末に視線を落とす。


「うーん、シズオカ……? あぁ、あれだジャパン」


「ジャパンのどこだよ、前にホッカイドウ観光でえらい目にあったの忘れたのか?」


「フジヤマのところだと」


「あー、それならミツヤの出身じゃないか?」


「あいつはヤマナシだろ?」


「そうだったか? まぁ、ジャパン料理ならきっとこの辺で食べれる場所もわかるだろ」


 話をしながらミツヤにバズっていた写真と料理名を送る。返信はすぐに来た。


「説明がややこしい。行くから待ってろだと」


「ややこしい?」


 友人が料理の写真をもう一度見る。俺もつられてみるが、どこがややこしいのかわからない。

 そう思っていると、追加でメッセージがもう一つ来た。


「……これはハンバーグらしい」


「ハンバーグ? パンはどこにったんだ?」


「あ、奥に見えないか? 別添みたいだな」


 ハンバーグと言ったら、パンに野菜やチーズ、肉を挟んだあれだ。

 これは見るからにパンに挟んで食べるものではない。

 二人で首を傾げていると、ミツヤが合流してきた。


「ミツヤ、サワヤカ? ハンバーグ? が食えるところ。近くにないか?」


 挨拶もそこそこに切り出すと、ミツヤは苦い顔をした。


「いや……その前に誤解を解かないといけないんだ」


 首を傾げる俺たちにミツヤは言いにくそうに口を開く。


「……その写真は、ハングリータイガーだ」


「サワヤカじゃないのか?」


 俺たちはことの重大さがわからず、問い返す。


「あぁ、サワヤカはジャパンのシズオカ、ハングリータイガーはジャパンのカナガワの料理だ」


「似た郷土料理があるってやつだな! 味付けが違うのか?」


 友人がそう言うと、焦った顔のミツヤに口を押さえられる。


「お前! 軽々しくそんなことを言うな! 俺が、ヤマナシ出身だからよかったが、シズオカかカナガワ出身のやつに聞かれたらことだ」


 サイタマもまずい。そう続けて、ミツヤは携帯端末を触る。

 どうやらこのサワヤカ? ハングリータイガー? と言う食い物は難しい問題を抱えているらしい。


「ハングリータイガーならある。そっちでいいよな?」


 ミツヤの言葉に俺たちは揃って頷く。


「おぉ、この写真はハングリータイガーなんだよな」


「あぁ、さわやかはシズオカに行かないと食えん」


「いつか、シズオカ旅行に行ってサワヤカも食ってみたいな!」


「フジヤマを見たいって言ってたよな」


 俺が言うと、ミツヤが少し不愉快そうな顔になる。


「フジヤマはシズオカじゃないのか?」


 間違っていたら困る。そう思って聞くと、ミツヤの眉間にシワが現れる。


「ヤマナシでもある」


――でも、登るならシズオカ。


 ミツヤのつぶやきに俺たちは顔を見合わせる。

 どうやらフジヤマも難しい問題を抱えているらしい。

結局みんな美味しいです。

読んていただきありがとうございました。

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