表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
久野市さんは忍びたい  作者: 白い彗星
第二章 現代くノ一、現代社会を謳歌する!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/83

第56話 デートのお誘いかと思ったんだけどな



 ――――――



「おじゃましまーす」


「ど、どうぞ」


 学校ではルアや火車さんにからかわれたが、最終的に応援してくれた。


 そして今、週末……桃井さんを部屋に招いている。

 もちろん、事前に桃井さんには予定がないことは、確認済みだ。


 私服の桃井さんが、部屋の中を確認する。

 短めのスカートを履いているため、ちょっと目のやり場に困るが……まるでモデルみたいだな、桃井さんは。


「うんうん、部屋はちゃんときれいにしているみたいね」


「まあ、一応は……」


「……また、忍ちゃんにきれいにしてもらってるの?」


「そ、そんなことはないですよ!?」


 ふーん、と、どこか桃井さんは疑いの目を向けている。

 うぅ、前科があるからなぁ……信用されないのも仕方ないっていうことか。


「……ふふっ、冗談だよ冗談」


 けれど、桃井さんはすぐに笑う。

 その楽しそうな表情に、一瞬きょとんとしてしまう。


「ちょっとした意地悪。そもそも、忍ちゃんが木葉くんの部屋のお掃除をしていたからって、私には関係ないことだし」


 な、なんだろう……言葉にちょっと、トゲがあるような、ないような?


 だけど、今回は桃井さんを招くために、俺一人で部屋をきれいにしたんだ。

 そこのところは、ちゃんと本当だ。


 ちなみに久野市さんは、火車さん協力の下、外出してもらっている。

 久野市の嗅覚、聴覚なら、隣の部屋でなにが起きているかすぐに察しそうだし。

 一応ご退場してもらった。


「それにしても、プライベートで木葉くんの部屋に来るのは、あの時以来だね?」


「……そうですね」


 部屋の中を見ながら、桃井さんが思い出すのは……

 俺も、忘れもしない。火車さんが殺し屋だとわかって、久野市さんが俺を守る忍びで、諸々の事情を桃井さんに話したのが、この部屋だ。


 とりあえず、あの話をしたおかげで、桃井さんには俺と久野市さんの関係を誤解なく説明できたはずだ。


「とりあえず、どうぞ」


「ありがと。

 ……それで、今日はなにか用があって、呼んでくれたのかな?」


 俺は床に座布団を敷き、その上に座るようにと促す。

 桃井さんは、ゆっくりと座布団の上に腰を下ろしながら、部屋に呼ばれた理由を聞いてくる。


 俺はキッチンに移動しつつ、招いた理由を説明する。


「今日は、桃井さんに日ごろのお礼をしたいと思いまして」


 冷蔵庫を開き、材料を用意しながら、俺は話す。

 桃井さんと目を合わせるのは、なんだか恥ずかしい。


「……お礼?」


「はい。いつもお世話になってる、お礼です」


「そんな……私は、大家代理として当然のことをしてるだけだよ」


「だとしても、俺が感謝の気持ちを伝えたいと思ってるのは、本当ですから」


 確かに、アパートの大家と住人……その関係性ならば、住居の提供と家賃の支払いという間柄から、ある程度距離が近くなることはあるかもしれない。


 ただ、いつもおすそ分けだと言って料理を持ってきてくれたり、バイト先のコンビニで帰りを共にしたり……他にも、いろいろあるけど。

 それらをひっくるめて、お礼をしたいと思っている。


「なにか、プレゼント的なものを渡そうとも考えたんですけど……情けないことに、なにを渡せばいいのか、わからなくて

 なので、料理はどうかって。篠原さんからアドバイスももらいまして」


「料理? 木葉くんの?」


「はい」


 バイト先の先輩、篠原さんに……桃井さんへのお礼はなにがいいかと相談した。

 その結果手料理はどうかと、アドバイスをもらったのだ。


 幸運なことに、桃井さんの好きなものは火車さんが知っていた。なので、オムライスを作って振る舞うことにしたわけだ。


「だから昨日、お昼は食べないでって言ってたんだ」


「はい。お昼代わりに、お礼を受け取ってもらえたらなと」


「なぁんだ。私はてっきり、二人でご飯食べに行こうって、デートのお誘いかと思ったんだけどな」


「でっ……」


 お……っと、いかんいかん。あまりに動揺して、割った卵に危うく殻が入るところだった。

 ど、動揺してるんじゃないぞ俺。卵を混ぜて、心を落ち着かせろ。

 おかずも、事前に刻んでいたものを冷蔵庫から出して、と。


 てか桃井さん、彼氏いるじゃないですか……と言おうと思ったけど、堪えた。

 今のは桃井さんなりの冗談だ、マジレスしてどうする。


「やだなぁ、冗談よしてくださいよ」


「……」


 なので、明るい感じで言葉を返したのだが……なぜだか、それに対する反応はなかった。


 熱したフライパンに、溶いた卵を流し込んでいく。

 じゅう……と、卵が熱していく音が、部屋の中に響く。あまり火が強すぎると、卵が固くなってしまう。ちょうどよく、調整して……


「へぇ、結構うまいねぇ」


「わぁ!」


 ふいに、後ろから声をかけられた。まったく気配を感じなかった。

 首だけで振り向くと、そこには桃井さんの姿が。い、いつの間に……


「桃井さん? あの……座って、待っててもらっても……」


「えー、だって男の子が料理するところなんて、初めて見るんだもん。興味深くて」


 そ、そうなのか? 桃井さんの彼氏、料理しない人なのか……


 これまでにオムライスの練習は重ねてきたが、さすがにこんなガン見されながら作るのは緊張する。まあ久野市さんも見てきたけど。

 あぁ、なんかいいにおいもするし……いやいや、集中しろ!


 炊きあがっていたご飯を卵の上に。さらにケチャップで味付けをして、細かく刻んでいたおかずを混ぜていく。


「んん、おいしそうなにおい」


 においは、どうやら合格点。

 まあオムライスなんて、焦がしてもしない限り変なにおいにはならないはずだ。


 問題は、味……果たして、ちゃんと桃井さんに喜んでもらえるか。


「……ふぅ」


 なんだか、いつもより神経を使う。

 けど……


 なんとか、オムライスが完成したぞ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ