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久野市さんは忍びたい  作者: 白い彗星
第一章 現代くノ一、ただいま参上です!

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第27話 服を買いに行くための、服がない



 結局、その日も久野市さんを泊めることになった。俺の命を守ってくれた相手を、もう追い出すことなんかできなかった。

 というか、狙われた事実がある以上、もう久野市さんは断固として、ここを動かないだろう。


 ちなみに、俺のピンチにタイミングよく久野市さんが現れた理由だが……



『主様に危険が迫っていると、第七感が発動しまして!』



 とのことだった。それは第六感ではないかと思ったが、突っ込むのはやめた。

 落ち着いてから、久野市さんと火車さんが示し合わせて、あの演出をしたんじゃないか、と一瞬思ったが……以前言っていたように、そんなことをして久野市さんに得はないし。なにより火車さんの態度は演技に見えなかったことjから、疑うのは止めた。


 久野市さんにメシを作ってもらって、昨日のように風呂を貸して、やはり目のやり場に困る格好になられて……ただ、その時はとても疲れていたので、邪な気持ちは浮かばなかった。

 考えることは、いろいろあったが……横になると、すぐに寝てしまった。


 翌日、今日は休日だ。本来なら、休日にはバイトを昼から入れているのだが、今日は違う。


「え、今日はお休みなんですか!」


「う、うん」


「じゃあ、一日中主様と一緒にいられる! わーい! わーい!」


「……っ」


 昨日のことがあり、今日は生活に必要なもの……というか、久野市さんに必要なものを揃えるために、急遽休みをもらった。

 当日に休みの連絡を入れるなんて、初めての経験。というか休むの自体が初めてだ。今まで風邪も引いたことはなかったし。


 当日休みの連絡を入れ、さぞ迷惑をかけてしまっただろう。店長は、高校生ならそういうこともあるさ、と優しい言葉をくれたが……申し訳ない。

 むしろ、バイト開始から数ヵ月とはいえ、無遅刻無欠席の俺が当日休みの連絡を入れたので、なにっかあったのではないかと心配されたほどだ。いやほんと申し訳ない。


「今日は、久野市さんの服とか、買いに行こう」


「ふくぅ?」


 今後、久野市さんをどうするか。住むところを見つけるにしても、あまり候補に入れたくはないが俺の部屋で暮らすにしろ。服は必要だ。

 目に毒だし、あんな格好で外をうろつかれてはたまったものではない。職質や、ナンパの心配もある。


 ……まあ、久野市さんにナンパとかの心配はいらないと思うが。


「服なんて、別に新しく買わなくても、忍びの正装があれば充分です。

 お風呂の後は、主様の服を借りるのは、心苦しいですが……」


「……まずは自分の危うさに自覚を持ってくれ」


「?」


 今、久野市さんは俺の服を着ている。例によって、Tシャツに短パンという姿なのだが……

 ……昨夜は確かに、疲れが勝っていて、その、邪な気持ちは湧かなかった。だが、それは昨夜の話。


 一晩経てば体力も回復しているし、なにより……あれだ。男の朝ってのは、いろいろ大変なんだ。無論、俺以外の男もみんなそうなのか、聞いたことはないが……そうなのだと、なんとなくわかる。

 要は、朝にそんな無防備な姿を見せるなってことだ。


 今だって、襟元から鎖骨がチラチラ見えているし、短パンから伸びた白い脚を嫌でも目が追ってしまう。


「と、とにかく。服はいくらあっても困らないから」


「……主様が、そう言うのでしたら」


 なんで俺は、いきなり現れた女の子の衣類事情を真剣に考えているのだろう。

 はぁ、バイトを休んだ理由が、要は女の子の私物お買い物、と知られたら俺の評価は地に落ちてしまいそうだ。


 それに、こうでもしないと、彼女は自分にお金を使わなそうだ。


「あとはまあ、服以外にも食器とか、できれば布団とか。

 足りない分は、俺が出すし……多少蓄えはあるから。助けてもらったんだし、これくらいは……」


「ふふ、主様とお出掛け、ですね」


「んぬっ……」


 とにかく、今日出かけることを決め、久野市さんの作ってくれた朝メシを食べる。

 とは言っても、昨日の残りのハンバーグではあるがな。朝からハンバーグとはなかなかに豪華な。


 料理は、とてもうまい。それに、俺を慕ってくれてるし、かわいいし……こんな女の子と、こんな生活することになるなんて、思わなかったな。


「しかし、主様……それほどまでに私のことを気にかけてくださるのは嬉しいのですが。

 私は、今後ともこの部屋に住んでよろしいのですか?」


「……住む場所が決まるまで、な。公園で寝泊まりしろとは言わないけど、さすがにずっとひとつ屋根の下ってのも……」


「私は、全然構いませんが」


「お、俺が構うの! なんにしても、生活用品は必要だから買いに行く。久野市さん一人じゃ心配だし。

 そりゃ俺だって、昨日のことがあるから、できれば近い所に住んでほしいとは思ってる。それなら、久野市さん的にも安心……」


 ハンバーグを割り、口に運び、それをおかずにご飯を口の中にかきこむ。幸せな時間を堪能していたところだが、とんでもないことに気付いた。

 久野市さん一人では、危ういから俺は、わざわざ休みを取って買い物に着いていく。それはもう決めたことだ。


 だが、ここで一つ問題がある。

 今回の買い物の目的の一つに、久野市さんの外出用の服を買うというものがある。あんな痴女みたいな恰好でうろうろさせられないからな。

 あの痴女服で出歩く……ということは、現状では久野市さんが持っている服は、あの痴女服しかないわけで……


 でも、あんな服でまた外出させるわけにはいかない。まして、今回は俺もいる……一緒にいる女の子に、あんな服を着せる変態野郎だと思われてしまう……

 って、ことはだ……要は……


「服を買いに行くための、服がない……!」


「?」


 あんまり気づきたくなかったが、それでも気づかなければいけなかった事実に気づいて……俺は軽く、絶望した。

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