プロローグ2
大盛り上がりの次の日
黒竜がいるとされる黒の茨の道に4人が集まっていた。
甲冑の男
武闘家の女性
聖職者の女性
荷物持ちの男
「えー本来ならば昨日に行く予定だったが色々あって今日討伐に行くかなになったが、何か言うことあるか?」
「もっと酒飲みたかった。」
「もっと休みが欲しい」
「もっといろんなもの食べたかったです。」
「揃いも揃ってバカか!!俺らの目的を忘れたのか!時間がないって状況なんだぞ!!」
その言葉に3人はキリッと顔を変えて真面目になった。
「…わかったなら良い早く行くぞ。」
「「はい」」
「うす」
3人の一向はそこから話すことなく茨の道を進む。
一方場面は変わって村のギルド
昨日の馬鹿騒ぎに引き続きいつも通り盛り上がっていた。
そんなギルドに1人走る陰。
「新聞のお届けでーす!」
「はーい。」
大きな腰バックを付けた男が両手に箱をもって訪れた。
「はーい一部200ガルドです。」
「おい!また値上がりしたのかよ!」
「田舎の分輸送費がーー」
「これ以上上がるならもう買わねえぞ!」
そんな会話を聞きながらギルドの受付嬢が新聞を広げる。
その内容は新技術の開発やら有名人のスキャンダル、冒険者のコラムなどとたくさんでさまざまな情報がある。
「平和ね〜国同士いざこざは起きないしやばい魔物が出れば精鋭たちがすぐに倒しに行く。いいことなんだけどやっぱり刺激を求めちゃうよね〜」
新聞紙を捲りながら冗談混じりに呟く。
新聞紙を捲っていると挟まっていたチラシなどが自然落下で下に落ちてしまう。
しかし、受付嬢はそれを拾わず新聞紙を読み耽る。
「先〜輩、毎度毎度落とした上で拾わないのやめてくださいよ。拾うの私なんですから。」
「だって面倒だし拾ってくれるんだもん♡」
「だもんって…いい年してなに可愛こぶって………ッああああ!!」
「おいこら後輩…誰がいい年だって?」
「ちがっ!…力強っ…痛い痛い!!ギブギブです!…て言うかそれじゃなくてこの紙にも驚いて!」
コブラツイストを喰らいながらも後輩はチラシを見せる。
「なんだなんだ?」
「おっ…ここ名物の受付嬢ちゃんのパワハラだ。」
「手配書?」
冒険者たちがゾロゾロと集まり後輩の手元にある手配書に注目が集まる。
「こ…こいつら」
「昨日の!」
その手配書には
甲冑の男
武闘家の女性
聖職者の女性
と3人の顔が載っていた。
場所は戻り茨の道
茨の道には魔物は存在しない。
それが魔物の本能なのかは知らないが、茨の道には魔物は近づかない。
茨は破壊が不可能。どんな材質で出来ているのか全くわからないあらゆる技術で分析しても何も出来なかった。
かつては一度軍を使って破壊を試みたが傷一つつかなかった。
いつしか人は諦めたのだ。
黒竜が現れるのは茨の道の果てであるためそれを逆手にとって観光地としていつしか栄えたのだ。
「はーい!観光ツアーの登録はこちらでーす!」
「学生達の就学旅行はここで決まりですな。」
「来る道中危険な目に合いましたし親御さん達から絶対クレーム来ますよ。」
4人は少なくとも自分らは戦いに来たのだと思っていたが、思っていたよりも賑わっていた事に肩の力が抜けそうになる。
「なんて言うか…思ってたのと違うわね。」
「確かに…観光地だと言うのは知ってはいましたがここまでとは。」
「なんにせよだ。このまま進むぞ。」
「おい!じじい!この銃威力弱えぞ!イカサマだ!!」
「あ?…ここに書いてあるだろうがこの銃で落とせない景品はありませんってな。ってことはお前の技量が無いだけだ。」
「んだと!訴えてやる!」
遠くからそんな声が聞こえてきて甲冑の男は肩を落とす。
そしてその元凶の元へと向かい全力で拳骨を落とす。
げん
こつッ!
「いってぇぇぇ!なにしやがんだーー」
「何してるはこっちのセリフだ荷物持ち。何呑気に遊んでんだ。」
「…げ…現地調査ですよ〜」
「買い物片手に射的で遊びお面を頭につけてか?随分と楽しそうだな?」
「そうよ荷物持ち!私達は人生変えにきてるんだから」グビグビ
「あまり時間はありません早く行きましょう。」モグモグ
「貴様らも何呑気に楽しんでんだ!」
「「「祭りの雰囲気に呑まれまして。」」」
「貴様らなんかもう知らん!」
その捨て台詞で甲冑の男は1人歩いて行ってしまった。
「ちょっと男子〜怒って行っちゃったじゃない謝りに行きなよ〜」
「女子だって騒いでただろ〜」
武闘家と荷物持ちは一芝居するが聖職者はため息をついた。
「まぁ、ふざけるのもそれくらいで行きましょうか。拗ねて本当に1人で挑んでしまうかもしれない。」
「「はーい」」
そうして祭り会場を突き抜け3人は後を追った。
そして3人は甲冑の男と合流して黒竜の元へと辿り着いた。
ギルド内
「んで?…あいつらなにやらかんしたんだ?」
「うーんと、あの武道家の女性は……名前はカリナ・イーラ…銀等級の二つ星。代々と続く武闘家一家の生まれで一人娘なんだけど、どうやら家の当主は男性しかならないらしくて勝手な政略結婚やらされそうになって挑んでくる男どもを片っ端からしばき倒したんだって。そして、その中で何人か殺しちゃったんだって。」
「同情出来るが人は殺しちゃダメだろ。」
「人殺しは即極刑だもんな。」
「てか、いまだにそんなふざけた習わしあるのが信じらんない。女性差別だ!」
「男女平等で能力ある奴が評価される、それが当たり前なのにな。」
「はいはい…次行くね。あの聖職者の女性は……名前はメリス・ローレン…こちらも銀等級の二つ星。元々は教会で働く見習いだったらしいけど危険思想で追放受けてるみたい。その後立ち上げた教団で洗脳した信者の金を巻き上げて豪遊してたみたい。信者の中で何人か死んでるみたいだし家庭崩壊も多かったみたい。」
「何を信じるかは自由だけどこれは普通にヤバいやつね。」
「可愛い顔してやることえげつなっ!」
「怖いわね〜」
読み上げられる内容にギルド内は話し合いが始まりそれぞれが自分の意見を言い合い見た目に合わず割と頭の良いことを話し始めていた。
「そんで〜最後の1人はっと……あの甲冑の男ね。名前はタルロス・ミーグ…銀等級の三つ星。冒険者育成学園の副校長みたいね。実戦無しで座学のみの教育方針に異議を唱え無断で実地訓練を始めて怪我人を出して戻ってきた。その後保護者によるクレームが多大に寄せられて懲戒処分を受けた。……うわ…まじか。……クレーム入れた親子共々全員を殺害。だって」
「怖い怖い!あいつめちゃくちゃヤベェ奴じゃん!」
「うーん、殺人は絶対に駄目だけどさ。冒険者育成学園で座学のみって実際どうなの?私には新米達が死にまくる未来しか見えないんだけど。」
「そうだな、殺人は絶対に駄目だが俺らから言わせれば座学でなんとかなる程冒険者は甘く無いって事だな。」
「座学のみって確か親が子供に怪我させたく無いからって出来た奴だよね?冒険にはケガはつきものだよね?めっちゃ矛盾してない?」
「冒険者を知った気になった知ったかぶりどもの声は無駄にでかいからな。世論はそっちに動きやすいんだよ。恥知らずの行動は目立つからな。」
その後も各々が議論し始めた中で受付嬢はあることに気づく。
「あれ?…こんな奴らと一緒にいるあの荷物持ちくんは指名手配されてないわけ?」
「ん?てか…荷物持ちくんの顔ってどんなのだっけ?」
「そういえばあいつフード被ってたから顔見たやつ居るか?」
「私見てない。」
「俺もだ」
全員が頭を抱えて思い出そうとするが誰も思い出せなかった。
「まぁ、とりあえずさ指名手配犯どもの連絡ギルド協会に入れとこうぜ。」
「そうね」
立ち上がった受付嬢の手元にあった新聞から一枚の手配書が落ちた。
そうして場面は再び4人へと戻る。
「「「「………デッカ」」」」
4人は口を揃えて言う感想しか出てこなかった。
彼らは見上げるその存在に抱くものは恐怖だった。
その大きさは経験した事のない存在で寝ているだけなのにその威圧は十分だった。
「やるぞ」
「「ええ」」「はい」
彼らは後には引けなかった。
それぞれがすでに逃げ道がないことを理解していたからだ。
決意の顔をして今一度気を引き締めた。
「作戦通りに行くぞ!荷物持ちは後方でーーー」
甲冑の男性もといタルロスはここまで来るまでに対黒竜用の作戦を幾度と考えてきて様々な魔獣相手に試して試行錯誤を繰り返してきた。その自信が顔にも出ており黒竜を恐れていた先ほどまでの姿は無かった。
それは他2人もそうであった。
1番に気づいたのは荷物持ちの隣に立っていた武闘家の女性もといカリナであった。
「………え?」
何が起きたのか理解ができなかった。確かに風を感じたのだがカリナの隣にはもう誰も居なかった。
ゆっくりと後ろを見ると黒い茨が煙を上げていた。
そして何かを察してカリナはまた前を向くと黒竜の瞳孔のないその瞳が彼らを覗いておりその瞳を向けられた彼らはまさに蛇に睨まれた蛙の如く動けなかった。
そして、最初に痺れを切らしたのはカリナであった。
「…あ…ああああ!!」
焦って飛び出して高く飛び上がって拳に魔力を乗せる。
その一撃は山をも抉り取る威力を誇る。
ブォン
その拳が届く前に振るわれる黒竜の前足はカリナの両足を引き裂き空中でバランスが取れず攻撃も不発に終わり地面に落ちる。
「カリナ!」
聖職者の女性もといメリスはすぐさまカリナの元に走り止血の魔法を施すが、目の前の黒竜が口を大きく開けてその中は高熱が溜まっていた。
「メリス!最大防御だ!ブレスが来るぞ!!」
「!…URシールド」
メリスの魔法により黒竜との間に半透明な白の壁が顕現する。
「ああああああああっ!!」
そして放たれたブレスは半透明な壁にひびを入れるどころか触れた途端に破壊されて業火がメリスを燃やし尽くす。
その場には黒く炭となったメリスの跡が地面に残っていた。
明らかな実力差を見せつけられるがその間を使ってタルロスは剣を天高く突き上げていた。
その剣には徐々に煌々とした光が宿り巨大な刃顕現する。
「メリス!カリナ!お前たちの働きは無駄にはしない!」
「URスラッシュ」
巨大な剣が天高くから振り下ろされその刃が黒竜に迫る。
対して黒竜もその刃に自身の前足を合わせるように振りかぶった。
両者が触れた瞬間に刃が消滅してそのまま前足がタルロスの頭上から振り下ろされて地響きを鳴らす。
肉片と赤い血が飛び散る。
そして、少し離れたところでもぞもぞと動く者がいた。
「あああ…痛い…足が……死にたくない。」
足を失いながらも這いずるカリナのその姿があった。
メリスはブレスが当たる直前にカリナを魔法で遠くへ飛ばしていたのだ。
「私……悪いことなんてしてないのにぃぃ。……悪いのは…あいつらなのにぃぃぃ…」
涙を流しながらも少しずつ這いずり逃げるカリナ。
その間黒竜はいつでも彼女を踏み潰すなり何なりと出来るはずなのだが、そうはしなかった。
黒龍の見つめる先は一点であった。
最初に飛ばした人間の場所であり茨から出ている煙であった。
当然だが黒竜同様過去に何度も何度も破壊を試みた者がいたが誰も傷をつけられずずっとあったのだ。
当然だが煙が上がることなんて無いのだ。
そうしてまたギルドへと場面は戻る。
受付嬢が落とした一枚の手配書を後輩が拾い上げた。
「もう一年経ちましたか。」
「ん?…ああその手配書ね。新しいのと変えといて〜」
「わかりました……そう言えば今年で千年経っているってことですよね?…生きてるかも分からないのにまだ掲示するんですね。」
「王様たちも千年生きてるんだからそんな珍しい話じゃ無いでしょ。」
「それもそうですね。」
そうして後輩は手際良く手配書を張り替えた。
錬金術師の弟子
ユイト
特徴:黒髪に金のメッシュが入っている。
桃色の刀を携えている。
「ずいぶん遠くまで飛ばされてしまったよ。」
場所は戻り黒竜の巣。
カリナの真上から聞き覚えのある声が聞こえた。
「…荷物持ちくん?……生きてて……」
「ええ、なんとか生きてましたよ。…ささっと片付けますので少しお待ちください。」
「な…何言って…逃げなきゃ殺されーーー」
「大丈夫ですよ。師匠を超えるために帰ってきたのだから。」
その言葉と同時に巨大な青色の魔法陣が浮かび上がり黒竜のブレスを防ぐのであった。
「元素精製″赤″
元素精製″青”
元素精製”黄”
元素精製”緑”
元素精製”橙”
元素精製”藍”
元素精製”紫”」
腕に一つずつ色のついた魔法陣が浮かび上がりそれが並んでいる。
「元素合成、対消滅」
並んでいた色のついた魔法陣は一斉に重なり荷物持ちは腕を後ろに引いた。
黒竜のブレスは以前と続いているが青い魔法陣が完璧に防いでいた。
「”7色 消滅砲”」
引いていた腕を前に突き出すと重なっていた魔法陣が前に現れてその瞬間に放たれる白の光線は轟音と共に黒竜へと向かって行く。
向かう途中にある青の魔法陣も触れた途端に消して黒竜のブレスも消してそのまま勢いが落ちることなく黒竜を飲み込む。
そして、白の光線はそれでもまだ止まらず黒竜を飲み込んだ後にそのまま後ろに突き抜けて茨を消し飛ばし光線の通った跡に何も無い道ができた。
「こ…こんなことって……」
一部始終を見ていたカリナは目の前の光景が信じられなかった。
「こ…こんなのどう見ても私達より遥か上の実力者…誰にも知られないなんてあり得ない。」
「ハァ〜終わった終わった…疲れた〜」
放ち終えた荷物もは尻餅をついた。
その際に来ていたローブのフードが外れた。
黒色の髪に金のメッシュに黒と黄色のオッドアイ。
そして若い男性でカリナはその顔を写真で見たことがあった。
「手配書と同じ顔ーー」
「あ…息苦しかったから付けるの忘れてた。」
そう言って懐から仮面を取り出して顔に装着すると機械音を立てて仮面が装着された。
「さてと、……痛みは一瞬だけだ。…ちょっとくすぐったいかもね。」
「え?…なにをーーー」
ユイトはカリナの背中に触れると魔法陣が浮かび上がり
「”再生”」
「あああぁぁぁぁぁッッ!!」
カリナの悲痛な叫びと共に失った足が生えたのだ。
「馴染むまで時間がかかるからゆっくりしてると良いよ。僕はそれまでにやること済ましとくから。」
そう言ってユイトは歩き出し黒竜が消えた地点へ歩き出す。
黒竜は跡形もなく亡くなったがその地点には人骨が落ちていた。
「………あれ?……なんで…」
ユイトの瞳からはポロポロと涙が流れ出して胸が締め付けられるようだった。
その人骨も一瞬の風が吹いた途端にボロボロに崩れて空へと飛んでいった。
ユイトはその場で手を合わせて黙祷を行う。
「……ん…これは…」
人骨があったところに指輪が落ちていてそれを拾う。
指輪には薔薇のマークが付いていて何を表しているのかは分からないがとりあえずそれをポケットにしまった。
茨が崩れたことで黒竜が守っていたであろう場所に洞窟が現れた。
その洞窟はさまざまな水晶やクリスタルが光りながら道を照らしていた。
進んだ最奥で開けた場所に出た。そこは天井が空いており空から太陽が差し込んでいた。
「おお…なかなか幻想的。ここで食べるご飯は美味しそうだな。」
そんな感想を言葉にしながら鑑賞に浸って歩く。
その歩く先にはど真ん中に堂々と置いてある大きな棺であった。
「材質とか全部未知の奴だな。流石師匠。」
真っ黒な棺は押しても引いても開かず更にはその硬度はどの物質よりも硬く簡単にはいかなかった。
「クッソ〜千年も前に作った師匠のやつが未だに解析出来ないとかチートだろ!こんなん!」
あらゆる手段を行うが全く変わらずただただ時間だけが過ぎていく。
「ん?…この窪み」
あらゆる手段通じないこの棺に唯一の傷のようなものを発見したと思えばそこには薔薇のマークが付いていた。
「……くそっ!時間を無駄にした!!」
すぐさまポケットの指輪を窪みにはめると棺が動き出して蓋が外れた。
その中に居たのは1人の少女であった。




