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旅行計画2

いつも通り講義を受けた後、白雪と共に組合へと向かう。


「伊織君は旅行先で何かやりたいこととかある?」

「やりたいこと?う~ん、そうだなぁ~」


そう言われてふと考える。

以前白雪と旅行に行ったときは観光がメインだった。


今回行こうとしている鹿児島県は色々と美味しいものが多いらしい。

観光はしつつも、普段食べれない物を食べたいなと思った。


「何か美味しい物とか食べたいかな」

「おぉ、グルメ旅行も良いね!それならバーベキューとかもしたくない?」

「バーベキューか、めっちゃやりたいかも」


伊織はあまりバーベキューをしたことがなかったので、白雪の提案はかなり魅力的だった。


『主、バーベキューって何?』

『外で食材を好きに焼いて食べる事かな?肉とか魚とか野菜とか、好きなものを焼いて食べるんだよ』

『好きなものを焼く……主、バーベキューやりたい』

『あはは、じゃあ出来るように予定立てておこうか』

『ん!』


どうやらバーベキューがシアナの琴線に触れたらしく、やってみたいという気持ちが強く伝わってきた。



その後も白雪とあれをやりたいこれをやりたいと話していると、いつの間にか組合に到着していた。

組合の中に入ると、相変わらず多くの視線が伊織に集中する。


伊織の事を見ながら小声で話している様子はいつもと変わらない。

変わらないのだが、何故だか視線の種類が少しだけ違ってるように伊織は感じていた。


『なんか、いつもと違う?』

『そうね、でも良いことだと思うわ』

『そうなの?』

『えぇ、あまり主様が気にすることでもないわ』


少し気になるところではあるが、何故かクシナの機嫌が良いので悪いことではないかと気にしないことにした。



いつも伊織が組合に来ると、その場にいる退魔士達は珍しい男の退魔士である伊織を見ながらあれやこれやと話しをしていた。

優しそう、妖魔と契約しているらしい、妖魔が可愛い、白雪とはどういう関係なのか?……などその内容は多岐に渡る。


そして視線の種類も、純粋な興味からくる視線が多かった。

しかし今日は興味からではなく、畏怖の籠った視線が伊織に向けられていた。


実はこの場にいる退魔士の多くが厄星討伐に参加していた。

つまり伊織が契約しているクシナやシアナの姿を実際に目にし、さらに伊織が緋冥と契約する瞬間を目撃したものも多い。


今までは男の退魔士と言うことで興味を持って見ていたが、あの戦いを経て伊織に対する認識が変わったものが多かった。


一部の者を除いて……。


以前より伊織に対して熱狂的な想いを向ける退魔士が存在していた。

彼女らの目的は伊織の事を見守り、何か不測の事態が起こった時にすぐさま手を差し伸べられるように守護すること。


彼女たちは自らの事をSSIと名乗り、伊織が初めて組合に来た時に結成され徐々にその勢力を伸ばしつつある。


【LI3:組合に伊織様がお見えになられました】

【LI9:こちらも確認しました。あぁ、今日も伊織様はお美しい…】

【LI10:それにしても、他の皆が伊織様を見る目が変化していますね】

【LI2:大変良い傾向かと、一人でも多くの人が伊織様の偉大さに気が付きますように】


SSIには独自のチャットアプリ【KTI】が存在しており、SSIに所属する退魔士の一人が開発したアプリだ。

SSIに所属していなければ使うことが出来ないが、それを使って瞬時に情報共有が成されていた。


その機能も全て伊織を見守る事に特化している。

いつどこで伊織を見かけたかを入力すると直ぐにアプリ内の地図に反映され、誰でも伊織の行動を把握することが出来る。


やっていることは度を超えたストーカーであるのだが、あくまで本人たちは伊織に直接手出しをするわけではなくただ伊織を見守るだけ。

それがSSI【好き好き伊織】という組織だった。




そんないつもとは違った視線にさらされながら組合を歩いていると、ソファーに座り何やら難しい顔をしている結衣を発見した。


「こんにちは結衣さん」

「あら?こんにちは伊織さんに白雪さん。厄星討伐お疲れさまでした」


先程まで難しい顔をしていた結衣だが、伊織が声をかけると顔をあげながら笑顔で挨拶を返してくれた。


「お疲れ様です、結衣さんも討伐に参加してたんですか?」

「えぇ、とはいっても私は後方霊術部隊でしたのでそこまで出番はありませんでしたが、伊織さんは凄かったですね。なんでも龍種と契約を結んだとか」

「あ~、そうですね。仮契約ですけど成り行きで…」


結衣も厄星討伐に参加していたので、伊織が緋冥と契約した場面を目撃していた。

それ以外にも、黒龍を打撃だけで仰け反らせたシアナやあり得ないほどの霊力が込められた白い炎を操るクシナを目にしており、まさか伊織の契約している妖魔がここまで強いとはとかなり驚いていた。


「今日は何か御用があって組合に?」

「えぇ、ちょっと結衣さんに相談したいことがありまして…」

「私にですか?どのようなご相談でしょうか?」

「実は……」


伊織はクシナやシアナを含めた皆で旅行に行きたいこと、白雪に鹿児島県をお勧めされたことを結衣に説明した。


「なるほど…話は分かりました。鹿児島県は夏空家の本拠地がありますからね、それにこれからの季節は丁度旅行するのには良いかもしれません」

「白雪からも同じ理由で鹿児島県をお勧めされました」

「そうですね、もう少し詳しくお聞きしたいので良かったらカフェで少し話しませんか?」

「是非お願いします」


急な相談だったのに嫌な顔一つせず話しを聞いてくれている結衣を見て、何かお礼がしたいなと思いながら伊織たちはカフェへと移動した。


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