表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/97

厄星顕現

菫に忠告した後クシナは満足したのか伊織の後ろに戻った。

先程の忠告が怖すぎた菫は青白い顔をしていた。


「だ、大丈夫ですか?クシナ、何かしたのか?」

「何もしてないわよ?ただ少しお話しただけ…そうよね?」

「っ!」


あまりにも菫が怯えていたのでクシナが何かやったのかと思いそう聞いたのだが、少し話しをしただけだという。

それを聞いた菫も首をブンブンと縦に振っていた。


菫の内心としては、ここでクシナに話しを合わせておかないと何をされるか分からなかったのでクシナの意見に従うしかなかった。


「あ、伊織君。インカムは付けた?」

「忘れてた、今付けるよ」


そんなやり取りをしているとき、白雪が伊織にそう尋ねてきた。

今回の討伐では大勢の退魔士が参加するので、伝達をスムーズに行えるようにインカムの着用が義務付けられている。


討伐に参加する退魔士は事前にインカムを受け取っているので、伊織も当然持ってきていた。

ただ日常生活においてインカムを付けたことのない伊織は存在を忘れていたので、白雪に言われてから慌ててつける。


「え~と、これで大丈夫かな?」

『現場についた退魔士は指示に従って行動してね~』

「この声は、美月さん?」

「そうだよ、今回の討伐では美月さんが指揮を取ることになってるからね」

「なるほど」


伊織がインカムを付けると丁度美月の声が聞こえてきた。


『妖魔はいつ現れるか分からないから、準備を怠らないでね』

「俺の位置ってここで大丈夫?」

「ん~、多分大丈夫だと思うよ。周りにも後方支援の退魔士が多いから」

「了解、ありがとう」


現場に着いてから伊織はあまり動いていないのだが、そこは丁度後方支援型の退魔士が集まる場所だったので問題ない位置であった。


「それじゃあ私もそろそろ前線に行くから、また後でね伊織君」

「分かった、またな白雪。え?」

「あら」

「ん?」


ちょうど白雪がその場から離れようとしたとき、この場にいる全員の退魔士が異変を感じた。


「なんだ、これ?」

『思ったよりも早かったわね、全員戦闘態勢に移って頂戴』

「ほら、来るわよ」


何か強大な、そして押しつぶされてしまいそうな気配を伊織は感じていた。

そして菫は先程まで怯えていた人物とは思えないほど凛々しい表情をしながら空を睨んでいた。


それに釣られて伊織も空を見上げてみる。


「え、えぇ!?空が、割れてる!?」


伊織は常日頃から妖魔に襲われているので、妖魔がこの世に現れる現象は見慣れている。

見慣れているはずだったのだが、今回はその規模があまりにも大きすぎた。


山の真上にある空が徐々に割れ始めており、その狭間から数多くの妖魔が姿を見せる。


「これが、厄星?」

「ううん、これは余波だよ伊織君。まだ本体が出てきてない」

「こ、この数の妖魔で?」

『霊術部隊に通達、術式の準備をお願い。結界部隊は急いで周辺を閉じて頂戴』


あまりに妖魔の数が多かったのでこれが厄星かと伊織は驚いていたのだが、本体は今だに現れていなかった。

美月の指示を聞いていた退魔士達は、本命の妖魔が現れたときにぶつける霊術の準備を始めている。


空の割れる規模に応じた結界を構築した時、ついに厄星が姿を表した。


「これは…!龍!?」

「あちゃ~、今回の厄星は龍種かぁ。これはちょっと厳しい戦いになるかもね…」

『厄星は龍種よ、皆気合を入れて頂戴。霊術部隊術式用意!』


割れた空から瘴気をまき散らしながら黒い龍が顔を見せる。

今まで見てきたどの妖魔より圧倒的に大きいその姿に、伊織は恐怖を感じていた。


空を泳ぐようにして現れた龍はついにその姿を全て露にした。


『霊術部隊、放て!』


そして龍が現れると同時に美月から号令が下され、一斉に霊術が龍へと殺到した。

次々と霊術が着弾しているのだが、龍はそれを煩わしそうにしているだけだった。


「き、効いてない?」

『霊術への耐性が高そうね、でも完全に効いてないわけじゃないからこのまま続けて頂戴』


龍種と呼ばれる妖魔は纏っている鱗が非常に高い霊術耐性を持っている。

そのため生半可な術は全て無効化されてしまうのだが、この場に集まっている退魔士は全員階級が高いため少しだけダメージを与えていた。


「五行水【水刃】」


白雪もまた二等星としてこの場に参加しているので、指示に従って霊術を行使する。

白雪は以前伊織からマッサージを受けており、既に一等星に比類する霊力を保持していた。


そんな白雪から放たれた霊術は僅かであるが龍の鱗を傷つける。


「白雪が霊術を使ってるところ初めて見た…」

「そういえば伊織君の前では使う機会がなかったよね、こう見えても結構強いんだよ?」


凄いでしょ?と言いたげな顔をしながら白雪はそんなことを言った。


「主、行ってくる」

「分かった、気を付けてな?」

「ん、風と共に!」


そしてシアナもまた行動を開始する。

どれくらい自分の力が通じるか分からないが、シアナは風を纏いながら龍へと接近した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ