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討伐に参加する一等星

「おはようございます、美月」

「あら六花ちゃん、おはよう。来てくれて嬉しいわ」


伊織のもとを後にした六花は美月の所へ向かっていた。

この二人は長い付き合いのためお互い気安い形で話しができる。


「先程初めて久遠伊織君と会ったのですが、彼は凄いですね」

「そうでしょ?男の退魔士なのに凄いのよ伊織くん」

「えぇ、まさか私や美月よりも霊力が多いとは思いませんでした」

「貴女も感じたと思うけど多分伊織くんは全退魔士の中で一番霊力が多いわ」

「はい、先程同じことを思いました」

「ただ、霊力が多すぎるあまり霊術が使えないのが凄く残念ね」

「あそこまで多ければ並大抵の制御能力では無理なので仕方ないと思いますが、それに彼は妖魔と契約するタイプの退魔士なのでしょう?」

「えぇ、貴女も見たかしら?彼の契約妖魔を」

「いえ、まだ見てません」


伊織が現場に入った時、まだシアナやクシナは伊織のブレスレットに変化していた。

だから六花は二人の姿を見ることが出来ていない。


ただ伊織からとんでもない気配を感じ取っていた。

まるでこの人に手を出せばどうなるか分かっているか?そう圧をかけるような気配が伊織の右腕からしていた。


その圧を前に六花は少し息を飲んだので、彼の契約している妖魔が本物であることは予想がついていた。


「きっと生で見たらもっと驚くわよ~」

「確か九尾と猫耳の女の子でしたか?」

「そうそう、流石に九尾が出てきたときは私も肝を冷やしたわ…」

「私も九尾は文献でしか見たことがないので、気持ちは分かるかも知れませんね」


美月と六花は共に一等星という地位についているが、それでも九尾クラスの妖魔に出会ったことはほとんどない。


存在こそ文献で学んでいるものの、やはり実際に目にしてみないことには分からないことが多いので六花は伊織の契約している九尾を見てみたいと思っていた。


「まぁ、間違いなく今回の戦いで伊織くんを守るために姿を見せるでしょうからそこで彼女がどれほどの存在なのか分かるわよ」

「そうですね、楽しみにしておきます」

「それはそうと、あれ(・・)は持って来たかしら?」

「あぁ、あれ(・・)でしたら白雪に預けてあります」

「白雪ちゃんの練習の為に?」

「えぇ、あれ(・・)を使うレベルの妖魔はそうそう現れませんから良い機会です」

「そうね、確かにその通りだわ」


六花は今回の戦いで切り札になるであろう物を白雪へ預けていた。

本来冬木家当主である六花の許可がなければ使用できない物であるが、今回はその六花も討伐に参加しているため予め白雪の判断で使っていいと許可を出していた。


六花は次期冬木家当主として白雪にはもっと経験を積んで欲しいと思っていたので、今回の討伐で自分は白雪のサポートに回ろうかと考えている。


「おはよう、美月さん、六花さん」

「あら紅葉ちゃんおはよう」

「おはようございます、紅葉」

「なんの話しをしていたんだ?」

「今回の討伐についてちょっとね」


今回の討伐について話し合っていた二人に話しかけてきたのは安倍紅葉であった。

彼女もまた今回の討伐に参加している。


「美月さん、少し聞きたいことがあるのだが」

「何かしら?」

「久遠伊織の居場所を知らないか?」

「あら、どうして?」

「いやなに、最近妖狐の事件などがあって会えていなかったからな。彼に会いたいという乙女心が抑えられないんだ」

「どうせ九尾が見たいだけでしょう?」

「ふむ、そうともいうかもしれない」


実際紅葉が伊織に会いたい理由のうち七割は九尾を見てみたい、そして叶うなら戦ってみたいという理由だった。

ちなみに残りの三割は本当に伊織と話しをしたいという理由だ。


「だめよ、もし貴女が九尾の不興を買えば今回の討伐自体が滅茶苦茶になってしまうわ」

「むむむ、なら討伐が終わった後ならいいか?」

「貴女が絶対に伊織くんに迷惑をかけないって条件を守ってくれるなら、考えてあげなくもないわ」

「分かった、安倍家に誓って久遠伊織に迷惑をかけないことを約束しよう」

「分かったわ、その言葉忘れないでね?」

「あぁ」


紅葉が非常に真剣な表情で安倍家の名前まで出して約束したことで、美月も少し安心できた。

ただ紅葉はテンションが上がると暴走する癖があるのでそこだけが不安要素だ。


「一等星でまだ来てないのはあの子だけね」

「まぁそのうち来るのではないですか?」

「あら、遅れちゃったかしら?」


今回の討伐に参加する一等星は全部で四人だ。

美月、六花、紅葉と揃っている中であと一人を待っている状況だった。


ちょうどその話をしていた時に一人の女性が話しかけてきた。


「いいえ、大丈夫よ。丁度あなたの話しをしてたところなの」

「ふ~ん?なら良かったわ」


その女性はピンク色の長い髪をツインテールに結び、肌の見えている箇所が全て包帯で覆われている女性だった。


「久しいな、春名菫(はるなすみれ)

「えぇそうね、最後に会ったのは半年前だったかしら?」

「そうだな、丁度そのくらいになるか」


この女性は春名菫(はるなすみれ)、退魔士名家の一角である春名家の長女である。

伊織たちと同じくらいの歳であり、若くも一等星の位置にいる一人だ。


「そうだ美月さん、少し聞きたいことがあるのだけれど」

「何かしら?」

「今回の討伐に久遠伊織って奴が参加してるのよね?」

「……、えぇそうよ、それがどうしたの?」

「男の退魔士の癖に前線に出るなんて、どうかしてるんじゃないの?」

「それについては星詠みの一族からお告げがあったのよ」

「ふ~ん?ま、ちょっと興味があるから後で顔を見に行ってみるわ」

「そう、分かったわ」


紅葉に比べたら菫は常識的な人間なので、美月も素直にその提案に頷いた。


「さて、それじゃあそろそろ作戦会議をしましょうか」


そして今回の討伐に向けて一等星の四人は会議を始めた。




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