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一緒に料理

シアナに連れられて先に家へ帰ってきた伊織はリビングへ移動していた。

この日は組合へ行って札術の訓練をしたり、カフェで謎の戦いに巻き込まれ、そして帰りに妖狐に襲われたのでかなり疲れが溜まっていた。


ソファーに移動した体重を預けるように座り込む。


「ふぅ、白雪とクシナ大丈夫かな~」


二人がどういった話しをしているのか分からないが、出来れば二人にも仲良くしてほしいなと伊織は思っていた。


そんなことを考えながらボーっとしていると、シアナがトコトコと歩きながらテーブルに置いてあったテレビのリモコンを手に取った。

シアナはテレビが好きなのでまた何か見るのかなと思っていた伊織だが、シアナはリモコンを持ったまま伊織の方へ近づいてきた。


そしてそのまま伊織の膝へ座り込んだ。


「し、シアナ?」

「ん?」


突然の行動に驚いた伊織がシアナの名前を呼ぶと、伊織の顔を見上げるようにしながら首を傾げた。

いつもより間近で見るシアナの瞳に吸い込まれそうな魅力を感じながらも疑問を口にする。


「どうしたんだ?」

「座りたかったから、ダメだった?」

「いや、ダメじゃないけど」

「ん」


伊織からダメじゃないと言われたシアナは満足そうに一つ頷きながら前を向き、テレビの電源を付けた。


いくら妹のように可愛がっているシアナでも、しっかりと柔らかい感触が足から伝わってくるので伊織はドキドキしていた。

そもそも足に女の子が座るなど伊織にとって初めての経験だったので、どう対応すればいいか分からない。


どうしようかと伊織は悩んでいるが、シアナは全くそれに気が付かず上機嫌に尻尾を揺らしながらテレビを見ていた。


伊織も悩みながらテレビに目を向けると、丁度お菓子特集なる番組が放送されていた。

今は巷て流行っているお菓子を紹介している。

虹色の綿あめや、虹色のマカロン、虹色のロールアイスなど虹色尽くしだ。


それを見て正直全く美味しそうに思えなかった伊織は微妙な顔をしていたが、シアナにはそれが宝石のように見えるのかキラキラした目で紹介されたお菓子を見ている。


「食べてみたいか?」

「ん、食べてみたい」

「そうか...」


シアナは特にお菓子に興味を示しているので、いつも助けてもらっているお礼に出来るだけ食べさせてあげたいと思っている。

ただ都内の飲食店となるとシアナと一緒に食事をすることは難しいのでどうしたもんかと悩んでいた。


しばらく悩みながら、伊織は自分の料理スキルを上げて作ってあげるのが良さそうかなと思い始めたころ、玄関が開く音が聞こえてきた。


「お邪魔しまーす」

「ただいま、主様」

「むぅ」


そのあと二つの足音が聞こえ白雪とクシナがリビングへ入ってきた。

伊織へ帰ってきたことを知らせた二人であるが、クシナの言ったただいまという言葉に白雪は少し嫉妬を見せる。


「二人ともお帰り、話しは大丈夫だったのか?」

「えぇ、ちゃんと話してきたわ。色々と...ね」

「うん、大丈夫だよ。本当に...」

「そ、そうか」


伊織が話しの事を切り出すと、白雪とクシナはお互いの顔を見ながら意味深な言葉を発する。

これに対して突っ込んでいいのか少し悩んだ伊織であるが、これは下手に触れないほうが良いと心の中の伊織が警鐘を鳴らしていたのでひとまず聞かないことにした。


「シアナ、白雪が来たけど着物に着替えるか?」

「ん~、今日は疲れたからまた今度」

「まぁ疲れるよな、分かった」


シアナとしても初めて自分の力が通じない相手と戦闘したことにより、見た目より疲労が溜まっていた。

それこそもう伊織の膝から動きたくないと思うほどに疲れていた。


その感情が本当に疲れから来ているものなのか、それとも別の感情から来てるものなのかまだシアナには分からない。


「あら、そうなのね。それじゃあ用事も無くなったし貴女はもう帰っても大丈夫よ?」

「う、それはそうだけど...」


元々白雪はシアナが着物を着たいといったから伊織の家へお邪魔していた。

しかしシアナが着物を着ないのであればその用事が無くなってしまうので、伊織の家にいる意味がない。


そのことが白雪にも分かったのでクシナの言葉に反論することが出来なかった。

それでもせっかく伊織の家に来たのだからまだ居たいと思った白雪は助けを求めるように伊織へ視線を向ける。


「丁度夕飯の時間だし、食べてくか?」

「う、うん!食べてく!」

「ふ~ん?」


伊織からその言葉を聞いた白雪は喜び、そして勝ち誇ったかのようなドヤ顔をクシナに対して向けた。

それを受けたクシナは少し面白くなさそうな顔をする。


そしてそれに全く気が付かない伊織はシアナを膝の上から下ろして夕飯の準備を始める為に台所へ向かった。


「主様、お手伝いするわね」

「あぁ、助かるよクシナ」

「あ、じゃあ私も手伝うよ伊織君!」

「う、う~ん。だ、大丈夫だよ白雪、お客さんなんだしゆっくりしてて」


今日は簡単な食事にしようかと準備を始めた伊織に対してクシナが手伝いを申し出る。

実は最近クシナは伊織が食事の準備をするとき、料理の仕方を教えてもらいながら手伝っていた。


元々クシナは色々とハイスペックなため、伊織から教えられたことをドンドン吸収していき今では立派な戦力になっていた。


そしてそれに対抗するように白雪も手伝いを申し出たのだが、伊織は困った顔をしながらやんわりと断った。

これには理由があり、実は白雪は料理が出来なかった。


中学時代に調理実習の授業で何回か白雪と一緒のグループになったことがあるのだが、何故かは分からないが出来上がるものが全て非常に微妙な出来上がりになっていた。

別に食べられないほどマズイ訳ではない、ただお世辞にも美味しいとは言えない料理を白雪は次々に生み出し、調理実習に対する軽いトラウマを伊織に植え付けていた。


それを覚えていた伊織は白雪を傷つけないようにやんわりと断ったのだが、白雪は食い下がってくる。


「気にしなくていいよ伊織君」

「そ、そうだ!シアナの相手をしててくれないか?」

「え?うん、分かったけど...」

「(ふふ、貴女はそこで座ってなさい)」

「(む、ムカつく~!)」


名案とばかりに伊織はシアナを見てくれと白雪に頼んだ。

シアナの事は嫌いではない白雪は少し不満げにそれを了承するが、その様子を見ていたクシナの方が今度は勝ち誇ったドヤ顔を浮かべる。


その表情は白雪からしたら中々にムカつく顔をしていた。



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