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幕が開ける

当然であるがあーん三連続を見た白雪も行動を起こす。

自分の頼んでいたコーヒーを手に持ち、伊織の方へ差し出した。


「はい伊織くん、私のも飲んでみて?」

「え?でもそれって…」


それを見た伊織は困惑する。

何故ならそれは自分と同じコーヒーであったからだ。

そう、白雪は伊織と同じ物を飲みたいという気持ちから伊織と同じコーヒーを注文していた。


「それ、同じやつだよね?」

「うん?そうだよ?はいどうぞ」


白雪の差し出すコーヒーを見て疑問を感じた伊織はそう問いかけるが、白雪は全く変わらない笑顔で差し出し続けている。


「(確かに私のは伊織くんと同じ物、でもだからといって他の三人が伊織くんにあーんしたのに私だけやらないなんて考えられない)」


初めにシアナが伊織へパンケーキを食べさせた時、戦いの幕が切って落とされていた。

シアナに続き結衣、楓が伊織に攻撃を仕掛ける中、自分だけ何もしないなど敗北を認めたも同然。

それならば、例え同じ商品であっても伊織に仕掛ければならないと白雪は考えていた。


しばらくの間、無言で見つめ合う。

その間シアナはひたすら幸せそうにパンケーキを頬張り、結衣はニコニコとした表情で二人を見ており、楓は未だ間接キスショックから立ち直っていなかった。


「えっと…」

「私のは伊織くんのと砂糖の配分とか違うから飲んでみて?」


コーヒーを飲む気配のない伊織に対して白雪は新たなカードを切る。

確かに同じ物を注文していたが、コーヒーの中に入れた砂糖やミルクの配分は違っている。


全く引く気のない白雪の様子を見て、伊織はカップを受け取ってコーヒーを飲んだ。


「確かに、俺のよりちょっと甘いな」

「でしょ?」


果たして伊織の感じた甘みは砂糖なのか、それとも白雪が飲んでいたコーヒーだから甘いと感じたのかまでは分からない。

伊織からカップを返してもらった白雪は嬉しそうな表情をしている。

ここで突如勃発した女の戦いが幕を下ろした。


「ん、満足」


そしてそれと同時に、シアナがパンケーキを食べ終わる。


「美味しかったか?」

「ん!また食べたい」

「また今度来ような」

「ん」


シアナがパンケーキを食べたいと言ったのでカフェへ来ていたが、その目的が達成されたのでこの場は解散となる。


「それでは伊織さん、楽しいひと時をありがとうございました」

「あ、ありがとうございました!」

「はい、それではまた」


結衣と楓はまだ組合でやることがあるらしく、カフェを出たあたりで別れる。

伊織、白雪、シアナと三人で歩いているときに、シアナからある要望が口にされる。


「ん、白雪」

「なにシアナちゃん?」

「また着物着たい」

「うん?着付けを手伝ってほしいの?」

「ん」

「もちろんいいよ!」


シアナは昼に伊織からまた着物姿が見たいと言われていたので、丁度いいと白雪に着付けをお願いする。

白雪としてもまた伊織の家に行くことが出来るので当然のようにそれを了承した。


「時間的に大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ」


組合では札術を試した後にカフェへ寄っていたので、時刻は既に十八時を回っておりいつもであれば白雪は帰る時間であった。

しかしこれには理由があり、白雪の母である六花は娘が退魔士ではない男性と仲良くするべきではないと思っていたので門限を厳しくしていた。

ただ伊織が退魔士になったことでその門限も全てなくなり、六花からは泊ってきてもいいとさえ言われていた。


「そっか、じゃあ悪いけど頼む」

「任されました!」


笑顔を浮かべる白雪と共に三人で伊織の家を目指して歩く。

組合から電車に乗り、家の最寄り駅についた時には既に日も落ちていた。


「時間も遅いし、ご飯食べてくか?」

「そうだね~、せっかくだし食べていこうかな?」


白雪にしては願ってもない提案だったので直ぐに了承する。

伊織が半一人暮らしをしていることを知っていたので、もしかしたら伊織の手料理が食べられるのではないかとワクワクした様子を隠しきれない。


「(んふふ~、楽しみだな~)」

「(なんか楽しそうだな白雪)」


そんな白雪の様子を眺めながら歩いていると、突如として肌がざわつくような感じがした。


「うん?なんだこれ?」

「これは...」

「ん?」


初めて感じた肌を何かが這いまわるような感覚に伊織は首を傾げる。

白雪とシアナも違和感を感じているようで、特に白雪は警戒を強めていた。


「(これは...探知?でも誰が...)」

「見つけたぞ......」


そして伊織たちの前に突如として一人の妖魔が現れた。

いきなり現れたその妖魔に驚いた伊織であるが、その姿を見て驚きが深くなっていく。


「五尾の...妖狐...」

「伊織君!下がって!」


その妖魔は五本の尻尾を携えており、組合から連絡で回ってきた妖魔の姿にそっくりだった。

その姿を確認した白雪は直ぐに伊織の前に出て立ちふさがる。


「いい霊力だ....それを私に寄越せ!」


伊織を凝視していた妖狐が霊力を求めて襲い掛かってきた。


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