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深夜、ある時間で

深夜:都内高校


夜更けの時間、ある高校の一室で三人の少女たちが一つの机を囲みながら何やら話をしていた。


「ほ、本当に大丈夫かな?」

「大丈夫よ、みんなやってるし」

「楽しみだな~」


一人は不安そうに、もう二人は早くやろうといった感じが伺える。

少し話をした後一人の少女が机の上に紙を敷きだした。

その紙には五十音が記載されており、中央上には鳥居が書かれていた。

そして十円玉を取り出し鳥居の上に置く。


「よし、これで準備完了!さぁ指を十円玉に乗せて?」

「う、うん」

「はーい」


一人、また一人と十円玉に指を置いていく。

三人が指を置くと一人の少女が呪文を唱える。


「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。

 もしおいでになられましたら、鳥居からお入りください。 

 入られましたら「はい」へお進みください」

『...』


そう呪文を唱えるとひとりでに十円玉が「はい」へ動き出した。


「だ、誰も動かしてないよね?」

「凄い!」

「勝手に動いたね~」


誰も動かしていないのに、勝手に十円玉が動いたことに驚きながら儀式が成功したことを喜ぶ。

この儀式は質問をすると答えてくれるものなので、少女たちはそれぞれ聞きたかった事を言っていく。


「佐々木先輩の好きは人は誰ですか?」


年頃の彼女は気になっている相手がいた。

その相手の想い人が誰なのか気になった一人の少女が質問をすると十円玉はひとりでに動き出しひらがなをなぞる。


「り、つ、こ...って私!?本当に!?」

「やったね律子ちゃん!」

「明日にでも告白しようよ~」


質問をした少女はまさか自分の名前が帰ってくるとは思わなかったので驚きを露にする。

続いて別の少女が質問をした。


「私の将来の夢は叶いますか?」


そう質問を問いかけるとまたしても十円玉が動き出す。


「か、な、う。やった!」

「良かったわね!」

「これからも頑張ろ~」


その質問を投げかけた少女は将来医者になることが夢であった。

ただ医者はかなり狭き門のため、本当にこの道に進んでいいか少し悩んでいたので叶うと答えられた少女は安心する。


「じゃあ私は~、将来結婚できますか~?」


最後に質問した少女は、今まで恋愛をしたことがなかった。

ただ結婚に夢を持っているので、恋愛したことのない自分でも将来結婚できるか不安だったのでそう問いかける。


「で、き、る、よかった~。私でも結婚できるんだ~」

「そりゃ出来るでしょ、あんた可愛いもん」

「そ、そうだよ。絶対できるよ」


その後もあれこれ質問をしていき、あらかた聞きたいことも無くなってきたのでこの儀式を終わらせる。


「こっくりさん、こっくりさん、どうぞお戻り下さい」


普通であればここで十円玉が鳥居まで戻るのであるが、呪文を唱えても動かなかった。


「あれ?」

「う、動かないね」

「もう一回言ってみる?」

「う、うん。こっくりさん、こっくりさん、どうぞお戻り下さい」


もう一度呪文を唱えてみるが、先程と同じように十円玉は動かない。

そしてその時、何者かが呟いた。


『ふむ、不完全な儀式でこの私を呼び出したか』


その者は狐耳を生やした男性で六本の尻尾が生えていた妖狐であった。

この妖狐はこっくりさんで召喚された妖魔である。

始めの呪文で現れ、しばらくは術式により縛られていたが儀式が不適切であったためその呪縛が解けてしまった。


『であれば、対価を頂こう』


妖狐が一人の少女に手を伸ばす。

この三人の少女たちは霊感など持っていなかったので、妖狐の存在は見えもしないし声も聞こえない。


妖狐が何かを掴むように手を握ると、一人の少女が椅子から崩れ落ちた。


「律子ちゃん!?」

「大丈夫~!?」


慌てて駆け寄った二人は十円玉から手を放してしまった。

儀式を途中で中断してしまったので、さらに妖狐は自由が戻る。


『思ったより霊力が低いな、これでは足りん』


そう言った妖狐はもう一人の少女へ手を伸ばし、掴む動作をする。

すると友人を心配していた少女の一人がバタンとその場に倒れてしまう。


「え?な、なんで?何が起きてるの!?」


友人が二人も倒れてしまったことにパニックを引き起こす。

元々この儀式を少し不安に感じていた少女は後悔しだした。


『足りん、足りんな。もっと寄越せ』

「やっぱりこっくりさんなんてやらなければ...よか...」


そして最後の少女も崩れ落ちた。

その場を静寂が支配する。


『ふん、この私を呼び出しておいてこの程度しか霊力がないとは』


三人の霊力を奪った妖狐は未だ満足していなかった。

その体を渇きが襲う。

今すぐにでも霊力を欲していた妖狐は周囲を探知し始める。


『久々にこちらの世界に来たが、あまり霊力の強い存在は居ないな...。む?』


目を瞑り意識を集中させていた妖狐であるが、周囲に彼が満足できるくらいの霊力反応は感じられなかった。

そのことに少し落胆した妖狐であるが、ある方角から何人もの強い霊力を薄っすらと感じ取った。


『いい反応だ。これならば私の渇きも癒えるだろう』


妖狐は反応のあった方角へと歩き出す。

そしてその方角とは退魔士組合のある方角であった。


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