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新たな存在

その女性の姿は異様なもので、髪は長く表情は伺えない。

未だにゆっくりと伊織の方へ近づいていく。


「な、何だあれ...」

「なにかしら?」

「ん?」


伊織はその姿に若干の恐怖を感じており、クシナやシアナは不思議そうに眺めていた。

そしてさらに一歩進んだところで動きが止まる。


どうしたのかと思っていると次の瞬間、猛烈な勢いで伊織の方に走り寄ってきた。


「アァァァアアアアアアアッ!」

「うぉおおっ!」


手だけを使い凄い勢いで突撃してくるその存在に驚き、伊織は大きな声を上げてしまう。

そのスピードは中々に早く、伊織の悲鳴が終わるころには既に目の前に居た。


「ん」

「アァ!?」


しかし今の伊織の傍には頼もしい二人がいる。

伊織に害をなそうとしたその存在をシアナが蹴り飛ばした。


「び、ビックリした...。ありがとうシアナ」

「ん、後でなでなで」

「分かったよ」


ちゃっかりと助けたことに対する要求を伝える。

そのことを了承した伊織が改めて吹き飛ばされた存在を見てみると、全身が露になっていた。

最初は気が付かなかったが今よく見てみると、下半身が無かった。

その存在に心当たりのある伊織が呟く。


「まさか、テケテケ?」

「ん、テケテケ?都市伝説の?」


シアナは以前都市伝説の番組を見ており、そこでテケテケが特集されていたので知っていた。

だが伊織からは都市伝説は存在しないと言われていたので少し驚く。


「主様、テケテケって何かしら?」


クシナはその番組を見ていなかったので伊織に問いかける。


「確か下半身を求めて人間を殺して奪い取る都市伝説だったかな?」

「そう。人間を殺す...ね」


先程までは不思議そうにテケテケを眺めていたクシナであるが、伊織が殺されるかもしれないと聞いた瞬間一気に戦闘態勢に入る。

そこまで話したところでテケテケの方も体制を整え終わり、再び伊織の方へ駆け出す。


「ん」


伊織からしたら動きはまだ見えるもののその速度は凄まじく早いように感じていたが、シアナに取っては止まっているに等しい。

先程と同じようにテケテケを蹴り飛ばす。


「消えなさい」


そして吹き飛ばされたテケテケに向かいクシナが指を一つ鳴らすと炎がテケテケを襲う。


「アァアアアアアア!?」


テケテケは何も出来ないまま消滅した。

それを見届けた伊織はホッとした後二人に感謝を伝える。


「ありがとう二人とも、助かったよ」

「いいのよ主様。早く帰ってアイスを食べましょ?」


少しアクシデントはあったもののアイスを楽しみにしているクシナがそう言った。

その後帰り道を歩いているときにシアナが疑問を口にする。


「主、前に都市伝説はいないって言ってた」

「確かに言ったな~」

「ん、でもテケテケも都市伝説」

「そうなんだけど、あれは妖魔じゃないのか?」

「そうね、妖魔の気配ではなかったわ」


日頃妖魔に襲われている伊織は、テケテケも妖魔なのではないかと疑ったがクシナ曰くどうやら妖魔では無いらしい。

であればテケテケはどういった存在なのか?本当に都市伝説は存在するのか?そう言った疑問が湧き上がる。


「とりあえず帰ったら白雪に聞いてみるか」


こう言ったときは退魔士の先輩である白雪に聞くのが早いと思い、帰り道を急いだ。

家に到着した後、アイスが溶けないように冷凍庫に入れ白雪に連絡を入れてみる。


「今日テケテケに襲われたんだけど、何か知ってる?...っと」


そしてメールを送った数秒後、白雪から電話が掛かってきた。


「もしもし」

『もしもし伊織君、テケテケに襲われたの?』

「あぁそうなんだけど、あれって何なんだ?妖魔とは違うのか?」

『そうだね、巷で都市伝説って呼ばれてるものを私たちは怪異(・・)って呼んでるんだよ』

「怪異?」


どうやら本当に妖魔とは違う存在らしい。

新たな存在に疑問を覚えた伊織であったが、続けて白雪が説明をした。


『怪異はね?沢山の人の想いが形を成した存在なの』

「人の想いによってか、呪物みたいなものか?」


白雪から聞かされたその在り方が以前聞いた呪物の存在に似ていたのでそう問いかける。


『う~ん、似てるようでちょっと違うんだよ』

「そうなのか?」

『うん、呪物は人の願いを叶えるために存在する物で、怪異は自分の願いを叶える存在なの』

「なるほど」


呪物は人の願いによって作られる物で、その人の願いを叶えるために力を振るう。

対して怪異は怪異自体の願いを叶える為に行動する。

今回伊織が遭遇したテケテケであれば、人間の下半身が欲しいという願いの元行動していた。


「それじゃあテケテケ以外にも都市伝説は存在するのか?」

『するよ、そういった話が広まると姿を見せるんだよね』


ちょうど先日都市伝説を特集した番組が放送されていた。

おそらくその番組から話しが広がり、怪異が姿を見せたと推測できる。

本来であればこういった番組の放送自体止めたほうが良いのだが、退魔士の存在は公に出来ないため止めることは難しかった。


『テケテケが現れたって事は、他の怪異も姿を見せるかも知れないからここ数日の間は少し注意が必要だと思うよ』

「分かった、少し注意するよ。ありがとう」

『また何か分からないことがあったら何時でも聞いてね?』


白雪からしばらく注意が必要だと言われた伊織は、気を引き締める。

そうして電話を切った。

先程白雪から説明されたことを二人にも伝える。


「っという感じで怪異って存在がいるらしい」

「なるほど、そういうことだったのね」

「ん、怪異からも主は守る」


クシナは妖魔では無い存在を不思議に思っていたので、怪異について教えられ納得する。

シアナは例え怪異が伊織を襲おうとも守り切ると気合を入れ直す。


「それで数日間はまた怪異が現れるかも知れないから注意が必要だとも言ってた」

「分かったわ、何が来ても安心してね主様?私たちが居るから」

「ん」

「ありがとう二人とも、それじゃあアイスでも食べるか」


そして話しが終わったので皆でアイスを食べようと支度を始めた。




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