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紅葉対シアナ

やる気満々のシアナであるが、一応は伊織の言いつけを守りかなり力をセーブした状態でまずは攻撃してみることにする。

地面を蹴り紅葉に肉薄する、それでも伊織の目にはギリギリ映るかといった速度であった。

紅葉の目の前に立ち、かなり力を抑えた状態で足を振るうが紅葉はそれを掴んで受け止めた。


「ふん、その程度か?」

「ん、そう?じゃあもう少し上げる」


つまらなそうにしながら掴んでいた足を放してそう告げる紅葉であるが、シアナの実力はまだまだこんなものでは無い。

少しだけギアを上げたシアナが正面から足や拳を放ち、時折紅葉の後ろへ回り攻撃を続ける。

しかし紅葉はその場から一歩も動かず、かなりの余裕を以て全ての攻撃を捌ききっていた。


「いいぞその調子だ、もっと私に見せてみろ!」

「ん」


その上から目線の言葉に少しムッとしたシアナであったが、伊織から怪我はさせないようにと言われていたので徐々にギアを上げながら攻撃を続けていく。

その動きは既に伊織の目で追えるものではなかった。

今までシアナはその圧倒的な身体能力を以て数々の妖魔を倒してきた。

力をセーブしているとはいえ、そんなシアナの攻撃を捌き続ける紅葉を見てこれが一等星の力なのかと驚きを露にする。


「す、凄いな...」

「ムカつく人だけど、実力は本当に凄いね」


ブスっとした様子で白雪がそう呟く。


「あれも身体強化を使ってるのか?」

「そうだよ、シアナちゃんの動きに合わせて紅葉さんも身体強化の度合を上げてるんだと思う」


大学に居る時伊織は紅葉の戦闘スタイルについて白雪から聞いていたので、それを思い出しながら問いかける。

身体強化が得意だと聞いていたが、まさかここまでだとは思わなかった。


「そうなのか、これが一等星か...」

「まぁ同じ一等星でもあそこまでの動きが出来るのは紅葉さんしか居ないけどね」


退魔士組合の中に何人か一等星がいるが、その戦闘スタイルは様々だ。

その中でも一番多いのは得意な霊術を以て圧倒的な力を発揮するタイプが多い。


「シアナは優勢なのか?」

「ん~どうだろう、なんか紅葉さん少し遊んでるような雰囲気だから何とも言えないな~」

「あ、あれで遊んでるのか...」


シアナの攻撃は既に妖魔を軽く倒せるほど重いものになっており、二人が衝突する度に物凄い音が訓練場の中に鳴り響いていた。

それを見ていた伊織であるが、まだ遊びの範疇かもしれないと白雪から言われ少し引き気味になる。


一方その頃、紅葉は段々と楽しくなってきていた。

最初の攻撃からシアナのスピードや攻撃力が上がり続け、未だその限界が見えないためだ。

一体どこまで上がるのか考えるだけで楽しくて仕方がなかった。


「はははは!お前とってもいいぞ!」

「ん...」


戦いの中に楽しさを見出す存在と初めて対面したシアナは少し面倒くさそうな顔をしている。

シアナもかなり力を出してきているのだが、これ以上力を出すとその余波で伊織に怪我をさせてしまう心配があったので、少しだけ攻めあぐねていた。

その様子に紅葉も気が付いたのか、大きな声を上げる。


「おい冬木の娘!私とこいつの間に結界を張れ!」

「むっ」


その上から目線な言葉に少しイラっと来た白雪であるが、これ以上の戦闘が起きれば伊織に危害が加わるかも知れないことが容易に分かるので、お札を取り出して結界を張る。


「二点結界」

「この結界は?」

「これは訓練場とかが壊れないように、たまに使う結界だよ」


その効果は物理防御と霊術防御が施される。

四点結界と似ているが、あくまで訓練の余波を外に出さないためのものなので人避けや認識阻害の効果は無い。


「おい妖魔、これでもっと力を出せるぞ」

「ん~...」


その言葉を聞きどうしようかと悩んでいるとき、ふと伊織の表情が目に入った。

心配そうな表情をしてこちらを見ている伊織の姿が目に入り、こんなにも自分を心配してくれる優しい心が嬉しいと感じると共に、そんな伊織を侮辱した紅葉への怒りが再熱する。

そして再び紅葉に向き直り言葉を一つ呟く。


「ん、風と共に」


そしてシアナは風となる。

今まで徐々に上がっていたスピードであるが、それが急激に上昇したので紅葉は一瞬見逃してしまった。

気が付いたときには既に紅葉の目の前まで来ており、対応が遅れてしまう。


「ん!」


そしてシアナが拳を振るうと初めて紅葉に攻撃が当たった。

倒れはしないものの、あまりに重い攻撃だったため後ろに飛ばされる。

そして動きが止まった後、紅葉はそっと自分の攻撃された腹を撫でる。


今までずっと攻防を続けていたため激しい音がなっていたのだが、二人が動きを止めたことで静寂が降りた。

あんなにも笑っていた紅葉が黙り込み、俯きながら攻撃された箇所を撫でている様子を見てもしかしたら怪我をさせてしまったのかと伊織は心配になった。


伊織が声をかけようとしたとき、紅葉がゆっくりと顔を上げるとその顔は獰猛に笑っていた。

そして次の瞬間、紅葉から爆発的に霊力が噴き出る。


「ふっ、凄いな。私が攻撃を貰ったのは久しぶりだぞ」

「ん...」


その霊力量は伊織には及ばないものの、普通の退魔士と比べると圧倒的な物であった。

紅葉から噴き出した霊力は徐々に紅葉を包んでいく。


「つまらなければ直ぐ終わらせるつもりだったが期待以上だ」


あれだけ噴き出していた霊力が全て紅葉の器に収まる。

そして初めて紅葉が構えを取った。


「次は私から行くぞ?」


そして爆音と共に紅葉の姿が消える。

そのあまりに強い踏み込みのため地面が砕け、一瞬にしてシアナの目の前まで接近する。

まさか人間がここまでのスピードを出せると思って居なかったシアナの反応が遅れる。


「お返しだ!」

「んっ!」


咄嗟に手をクロスさせガードしたシアナであるが、あまりの攻撃力に吹き飛ばされてしまう。


「シアナ!!」


初めてシアナが攻撃を食らった所を見た伊織に焦りが生まれた。

吹き飛ばされたシアナであったが、衝撃を上手く逃がしており綺麗に着地する。


「ん、だいじょぶ」

「よ、良かった...」


小さいシアナが攻撃を貰って吹き飛ばされる様は心臓に悪いものがあったが、本人はピンピンしているためひとまず安心する。


「ほう、あまり効いていないようだな。ならもっと行くぞ!」


そして紅葉が苛烈に攻めだした。

先程まではシアナが攻め、紅葉が守る構図であったが今では全く逆になっている。

紅葉の攻撃は荒々しく、拳を振るうたびに揺れる長い髪はまるで獅子の鬣の様であった。


最初こそ動きに驚いたものの、よく見れば余裕を以て捌けると分かったのでシアナは落ち着いていた。


「これでもまだ余裕があるか!」

「ん、ちょー余裕」

「ならば、これでどうだ!」


紅葉は今までとは少し違う霊力の使い方をした。

それは霊術を発動するための物であった。


「五行土【土槍乱舞】!」


紅葉が大きく踏み込むと同時にその言葉を発すると、数多くの土で出来た槍が地面から生えシアナに殺到する。


「ん、無駄」


ちらりとそれを見たシアナはくるりとその場を回り蹴りを繰り出す。

たったそれだけの行動でシアナ目掛けて襲い掛かって来た槍は全て破壊される。

既に伊織にさえ見せたことのない力を振るっているシアナの前ではこの程度の霊術など無いに等しい。


「ははは!これも聞かぬか、貴様化け物だな!」

「ん、レディーに化け物は失礼」


今の状況で出せる中でも最高の霊術を使った紅葉であったが、まさか足を一振りしただけで全て壊されるとは思っていなかったので笑いが込み上げてくる。


既に紅葉の限界が見え始めてきたシアナは決着をつけることにする。


「最後に一つ教える」

「何だ?」


そう言葉を呟いた後、シアナが紅葉に接近する。

既に身体能力は上がり切っており、紅葉の目に追えるものではなかった。


「ん、お前より主の方が凄い」

「ふっ、そうか...」


そう諦めたような笑みを浮かべる紅葉に拳を叩き込む。

その衝撃は凄まじいものがあり、紅葉の意識を刈り取るには十分な物であった。

一応は手加減をしたシアナが怪我をさせないようにそっと紅葉を横たわらせる。

そして伊織の方を向き一言。


「ん、終わった」

「そっか、良かった...」


こうして紅葉対シアナの戦闘は幕を下ろした。


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