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報告

二人は車に乗り組合を目指していた。

流石に疲れを感じているのか、行きとは違い会話はあまり無かった。


「それにしても、中々伊織さんの札術は良かったですね」

「そうですか?」

「はい、特に身体強化の札術は助かりました。まぁあまり守れなかったのですが...」


楓は伊織をあまり守れなかったことで少し卑屈になっていた。

せっかく美月が伊織に沢山アピール出来るようにと依頼へ同行させてくれたのに、これではむしろ好感度が下がったのでは無いかと内心思っていた。


「そんなこと無いですよ、最初はシアナもあまり動けなかったので楓さんが守ってくれて凄く助かりました」

「そうですか...」


本心でそう伝えたのだが、伊織は優しい性格をしているので気を使ってそんなことを言ってくれていると勝手に勘違いをする。


夜十九時を過ぎた頃二人は組合に到着した。

車を降りて組合の中に入ると沢山の退魔士の目が二人に向き、同時に安堵の表情を浮かべる。


「伊織君よ!伊織君が帰ってきたわ!」

「あぁ、良かったです伊織様...」

「怪我は無いかしら?」

「伊織きゅん...」


ざわざわと退魔士達が伊織の事を見ながら話す。


「なんか騒がしいですね」

「おそらくあの化け物が現れたことは組合で把握しているんだと思います。その場所が伊織さんの依頼があった場所なので救援要請などが出ていたのかも知れないですね」


楓の推測は当たっている。実際に上級の退魔士に救援要請が出ていた。

そして何処から話が漏れたのか、それは組合の中に居たほとんどの退魔士がそのことを把握していた。


「伊織さん!あぁ良かったです。ご無事ですか?」

「結衣さん?えぇ、なんとか無事です」


支部長室に向かって歩き始めようかといった所で結衣が話しかけて来た。

その顔は心配と安堵が混ざったような表情をしていた。


「どこかお怪我などはされてませんか?」

「はい、楓さんとシアナのおかげで何処も怪我はしなかったです」


伊織の手を取りながら怪我が無いかを確認していると、結衣の知らない名前が出てきた。


「シアナ...ですか?」

「あぁ、僕の契約している妖魔です」

「なるほど、確か伊織さんは妖魔と契約して退魔士になったのでしたね」


実はこの事は退魔士の中で有名であった。

伊織が初めて組合を訪れたときその傍らに妖魔が居たことが目撃されており、東京支部に在籍する退魔士には新しく男性の退魔士が誕生したことが連絡で回ってきていた。


「救援要請が来たので私も向かおうとしたのですが、間に合いませんでした...」

「いえ、その気持ちだけでありがたいです」

「っ!」


伊織が優しい笑みを浮かべながらそう答えると、結衣にクリーンヒットした。

今まで男性の退魔士にここまで優しくされたことのない結衣は、半場口を開けながら伊織の顔を見つめてしまう。


「んん!!伊織さん、そろそろ支部長の居る部屋まで向かいましょう」


その光景をみた楓は流石にマズイと思ったのかインターセプトする。


「あ、そうですね。すみません結衣さん、支部長に報告をしなければいけないので」

「わ、私こそ呼び止めてしまって申し訳ありませんでした」


結衣と別れた二人は支部長室へ向かう。

エレベーターに乗り十階へたどり着いた二人は扉をノックする。


「美月さん、楓です」

「空いてるわよ~」

「失礼します」


部屋の中へ入ると、いつものように笑みを浮かべているが若干疲れた様子の美月が座っていた。


「二人とも良く無事に帰ってきてくれたわ、座って頂戴」

「分かりました」


伊織と楓は部屋にあるソファーに座る。それを確認した美月が話し出した。


「組合の方でも強い妖魔が出たことは分かったのだけれど、実際どんな感じだったのかしら?」

「楓さんと合流した後現場に向かって呪物を発見したんですけど、それを回収しようとしたときに笑い声が聞こえてきたんです」


今回は伊織がメインで受けた依頼だったので伊織が報告を開始する。


「笑い声?」

「はい、何故か楓さんは聞こえ無くて僕だけにしか分からなかったんですけど」

「そうなの、続けて?」


呪物が意思を持つことは数は少ないが事例はあるため、美月は納得する。


「それで呪物を封印袋に入れようとしたときに、人形の髪が伸びて襲いかかってきました」

「それは二人ともにかしら?」

「いえ、私が見た限り伊織さんにだけ髪は向かっているようでした」

「そう、伊織君にだけ...」


美月は少し考える。呪物とは込められた想いを叶える為の物だ。

今回の呪物が人に対して強い恨みのあるものならその場にいた楓にも何かしら被害があったはずなのだが、予想とは違い伊織にだけ髪が向かったという。


「(分からないわね、何故伊織君だけを狙ったのかしら?)それで?」

「その攻撃からはシアナが助けてくれたのでなんとかなったんですが、髪がドンドン伸びて部屋を巻き込み始めたので楓さんと外へ避難しました。それで外へ出た後、巨大な髪の化け物が出てきたんです」

「その様子だとかなり大きかったようね」

「そうですね、正確な大きさは分からないんですけど大体家一個分くらいはあったかと思います」


伊織たちの戦った化け物は家の屋根に陣取っていたが、大きさとしては大体そのくらいであると推測できる。


「そんなに大きかったのね」

「はい、それで楓さんが攻撃を仕掛けたんですけど、何故が僕の方へずっと化け物の攻撃が来ていました」

「ふ~ん、なるほどね?」


最初の攻撃もそうだが、話を聞く限りその化け物は伊織に執着しているように感じられる。

つまり今回の呪物は伊織に対して何かしらの想いがあるものだと推測できる。


「それで楓さんが戦っていたんですけど、攻撃を当てても直ぐに再生していました」

「楓ちゃんの攻撃を食らっても直ぐに再生するなんてよっぽど再生能力が高かったのね、相性が悪かったでしょ?」

「はい、正直な所かなり相性が悪かったです」

「それでその後、シアナにお願いして戦いに参加してもらいました」

「話の流れからするに、その化け物は妖魔ちゃんが倒したのね?楓ちゃん、妖魔ちゃんの戦いはどうだったかしら?」


美月も以前シアナの姿は見かけていたが、実際の所の強さまでは読み切れていなかった。美月の考えでは二等星から一等星の間くらいの強さがあるのではと予想していた。


「そうですね、シアナさんの戦いを見た感じですけど、低く見積もっても一等星になり立てレベルかと思います」

「あら?そんなに強かったのかしら?」

「はい、正直私が戦っても手も足も出ないと思います」

「そう...」


楓は二等星であるが、その階級の中でも最上位の実力を持っている。

その楓が何もできないと言っているシアナの実力は相当高いものだと分かった。


「それでその後、シアナが化け物と戦っていると中から呪物が出てきたので、回収して封印袋に仕舞いました」

「そうなのね...」


報告を聞き終えた美月は様々な考えを巡らせる。

今回の呪物がイレギュラーで会ったことは間違いなく、何故伊織を狙っていたのか、そして伊織の契約している妖魔は何者なのか。

そんなことを考えながらであるが伊織と話を続ける。


「伊織君、ごめんなさいね?初めての依頼でこんなことになってしまって」

「いえ、楓さんから事前に退魔士の依頼では何があるか分からないと聞いていたので覚悟はしていました」

「それにしても今回はイレギュラーが過ぎるわ。この件は組合がしっかりと調査するわね。それで回収した呪物を出してもらっても良いかしら?」

「あ、はい。これです」


伊織が美月に封印袋を渡す。


「それじゃあこれで依頼完了よ」

「分かりました」


その言葉を聞いた伊織はホッとする。

呪物を美月に渡した後、伊織は支部長室を後にする。こうして伊織の長い一日が終わった。



SIDE:美月


伊織君が部屋を後にした後、私はお札を取り出して部屋に結界を張る。


「美月さん?」

「ちょっと確かめたいことがあってね?」


そして私は封印袋の中から呪物を取り出す。


「美月さん!?」

「大丈夫よ、抑えるから」


なるほど、確かに直接見てみるとかなり強い力がこの人形には籠っている。

今も暴れだそうと私の手の中で暴れようとしているが、私はそれを霊力で押さえつける。


「本当に強いわねこの呪物、改めて良く無事だったわね?」

「正直私だけだと伊織さんを守れませんでした...」


楓ちゃんは相当落ち込んでいるようだ。

まぁ気になっている男の子の事をあまり守れなかったのだから仕方ないかもしれない。

私もアピールするように楓ちゃんに言ったのだけど、この様子だとあまり上手く行かなかったのかしら?


「それにしてもこのレベルの呪物を五等星級と見誤るなんてね~」


上級の呪物を下級の物と見間違えるなんてまずあり得ない。


「その呪物を感知した退魔士はなんと言っているのですか?」

「それが姿が見えないのよね~」


実は事件が発覚した後直ぐにこの呪物を探知した退魔士を呼び出そうとしたのだけれど、連絡が一切つかなくなっていた。


「え?ちなみにその退魔士はどの傘下(・・・・)なのですか?」

「春名の分家よ」

「そう...ですか...」


春名家に対しては抗議をするつもりであるが、おそらくそこまで反応は無いだろう。

それにしても何故伊織君を狙ったのかが気になる。


「ちょっと詳しく調べてみる必要があるわね~」

「そうですね、私も出来る限りの事をさせてください」

「頼りにしてるわ」


最近の春名家は少し動きが怪しいところがある。

六花に頼んで少し調査に協力してもらおうかしら?

私は色々と考えながら指示を出していった。




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