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霊術の才能

伊織が霊術訓練を開始してから数日が経過し、その間伊織は白雪に霊術のコツなどを聞いていた。


「白雪、霊力を操るコツとかってある?」

「ん~、私は凄く小っちゃい頃から練習してたからあんまり覚えてないんだけど、動け~って念じてたら動いた記憶があるよ?」

「やっぱりそうだよな~」


霊力を操る訓練は暇さえあれば行っているのだが、伊織は未だに満足に霊力を動かせていなかった。


通常であれば、才能があまりない人でも数日あれば少しは霊力が動かせるようになるのだが伊織は全くと言っていいほど動かせていない。

クシナの目から見ても、普通だったら既に霊力を動かせていい程の時間は使っている。

それでも未だ動かない伊織の霊力を見て流石にクシナもおかしいなと思い始めていた。


「なぁクシナ、霊力ってこんなに動かせないものなのか?」

「そうね~、本当だったら念じればある程度は動かせるはずなのだけど、主様は本当に少ししか動いていないわね...」

「そっか...」


伊織は悲しそうな顔をしており、その表情がかなり心に来るがクシナは心を鬼にしてあることを告げる。


「主様、霊術ってね?霊力を凄く繊細に動かす必要があるの」

「あぁ」

「だから霊力をまともに動かせないと霊術を使うことは出来ないの、それでここ数日主様の訓練を見ていたのだけれど...申し訳ないけど主様には霊力を操る才能が無いわ」

「そう...だよな...。そっか~、才能が無いか...」


伊織は霊力が多いため、ごく僅かしか動かせないがそれでもかなり多くの霊力が動いていた。その霊力を繊細に操れるようになる保証は無い。

伊織は凄くしょんぼりとした顔をしており、クシナはその顔を見た瞬間伊織を抱きしめる。


「ごめんなさいね主様、せっかく楽しみにしていたのにこんな結果になってしまって」

「いや、クシナのせいじゃないよ。仕方ないさ」


伊織は魔法のようなものが使えるかもしれないと期待していたため、かなり残念であるがこれ以上訓練しても仕方ないと割り切り、霊術を使うことを諦めた。



次の日大学へ向かっている途中に白雪へ霊術を使うことを諦めた話をする。


「って感じで、俺には霊力を操る才能が無かったから霊術は使えないっぽいんだよね」

「そうなんだ、残念だね...」


少し悲しそうな顔をして伊織が話しているので、白雪の心が少し痛む。


「あぁ、霊術って魔法みたいなものなんだろ?少し憧れがあったから使ってみたかったんだけどな~」


その言葉を聞いた白雪はふとある事に気が付いた。


「伊織君は少しでも霊力が動かせるんだよね?」

「ん?あぁ、本当にちょっとだけだけどね」

「じゃあ、札術なら使えるんじゃないかな?」

「札術?この前言ってたやつか?」


以前白雪から退魔の方法を聞いたときに、札術というものがあると軽く説明を受けたことを思い出す。


「そうだよ、札術はね?術式をお札に刻んだもので、一定の霊力を流せば誰でも霊術を使えるんだよ」

「へ~、そんな感じなのか」

「うん、霊術は苦手だけど札術は凄く得意な退魔士とか居るから、伊織君はもしかしたらそのタイプなのかも」


実際に退魔士の世界にはそう言ったタイプの退魔士が存在している。

お札を作る事を生業としている家や、自らお札を作ってそれで妖魔たちを祓っている退魔士もいる。

そして基本的には霊術より早く発動できるため、霊術が使える退魔士でも札術を使う者は多い。


「ちょっと興味あるかも」

「じゃあ講義終わったら退魔士組合に行って教えてあげるね?」

「あぁ、頼む」


こうして伊織は白雪から札術を教わることになった。


講義が終わり二人は退魔士組合へと足を運ぶ。

カードをかざして中に入ると、相川らず沢山の退魔士達が働いていた。


伊織が退魔士組合へと来るのは、退魔士として登録して以来だ。

あの時は何がなんだか分からない状態で組合へと来ていたので周りを見る余裕が無かったので、改めて中を見回してみると確かにかなり女性が多かった。


「見て、白雪様よ」

「あぁ、今日も美しいわ...」

「何故隣に男の子が居るのかしら?」

「お、男の子よっ!」

「あの子見たことないわね」

「白雪様が笑っているわ!?」


伊織は中にいる退魔士達が自分たちの方を見ながらひそひそと話していることに気が付く。


「なぁ白雪、なんか俺たちの方を見ながら皆話してないか?」

「あぁ、無視して大丈夫だよ。退魔士は女性が多いって話をしたでしょ?だから多分男の子が珍しいんだよ」

「あ~、なるほど?そんなに男が少ないのか?」

「少ないよ~、だから気を抜くと悪い女に伊織君は攫われちゃうかもね」

「えっ?」

「でも大丈夫、私が守ってあげるから」


そういいながら白雪は伊織の腕を抱きしめる。伊織はその行動に少しビックリとしたが嫌な気持ちはこれっぽっちもないので、そのまま歩き続ける。


伊織を見る時の白雪の表情はかなりニコニコとしているが、伊織がこちらを見ていない隙を見て噂話をしている女性たちに目を向ける。


「(この人に手を出したら殺す...)」

「(は、はいぃぃぃ)」


そして伊織には決して見せられないような冷たい瞳で女性たちを睨みつける。

睨まれた女性たちは一様に首を縦に振っていた。


「白雪?」

「ん?な~に伊織君?さっ、早く訓練できる部屋に行こ?」

「あ、あぁ。分かったよ」


二人はエレベーターに乗って霊術や札術の訓練が出来るという部屋に足を踏み入れる。

部屋の中を見回すと、壁にはお札が張り巡らされており明らかに部屋の大きさが広がっていた。


「壁のお札が気になる?」

「ん?あぁ、凄い数だな」

「そのお札があるから中で霊術とか札術を使っても平気だし、空間を拡張する役割もあるんだよ」

「へ~、そうなんだ」


この部屋の中には伊織たちの他にも数人の退魔士が訓練をしていた。

皆一様に霊術や札術を使っている。


「五行水、水刃!」

「五行木、葉葉斬り(はばきり)!」

「皆前より精度が上がってるね、いいよ~その調子!」



霊術が飛び交うその光景に伊織は目を奪われる。


「すっご...」

「初めてみると驚くよね、まるで魔法だもん」


伊織が霊術に目を奪われながら白雪に先導されているとき、クシナとシアナも伊織には聞こえないように話をしていた。


『現代の陰陽術は初めてみたけど、あれならなんとかなりそうね』

『ん、クシナの妖術の方が強い』

『ありがとう、あの程度の術なら主様を守れるわね~』

『ん、あの退魔士達からはあまり力を感じない。主の横にいる女だけは分からない』

『そうね、確かにこの女は少し実力が読めないわね、上手く隠しているわ』


クシナとシアナは訓練室にいる退魔士を見て、現代の退魔士がこのレベルなら無事伊織を守れるだろうと推測していた。


『実力が読めなかったのだと、この女意外にもあの部屋にいた偉そうな女も分からなかったわね』

『支部長?って言ってた』

『えぇ、その人と隣にいた女も分からなかったわね、要注意よ』

『ん、分かった』


伊織の知らないところで、伊織を守るための作戦会議が行われていた。


白雪に手を引かれながら訓練場の一角に陣取る。

そして白雪は自分の鞄から一枚のお札を取り出した。


「はい伊織君、これがお札だよ」

「おぉ!これがそうなのか」


伊織が渡されたお札を手に取ると、そこにはよくわからない線や文字が書かれている。

そのお札をマジマジと見ていると白雪は説明を続ける。


「そのお札に霊力を流せば札術が発動するんだよ、やってみて?」

「あぁ、ちょっとやってみるわ」


伊織は僅かに動かせる霊力をお札に流し込んでみる。

少ししか動かせないものの、伊織の霊力は膨大なため少し動かしただけでも相当な量の霊力が移動している。


そしてそれは札術を発動するのに足る量であった。

伊織がお札に霊力を流すと、お札が白い炎に包まれて燃え上がる。


「うわっ」


その事にビックリした伊織は慌ててお札を手から離してしまうが、お札は地面に落ちず空中で止まっている。

その光景に驚いていると、白雪が笑いをこらえながら説明をする。


「ぷくく、伊織君、慌てすぎっ...」

「いや、仕方ないだろう!いきなり燃えたんだぞ??」

「でも熱くなかったでしょ?」

「ん?確かに熱くなかったな」


未だにお札は空中で燃え続けており、伊織はその光景を眺めている。


「そのお札は火の玉っていう初歩的なお札で、暗い道を照らしてくれるの。最初に札術を習う時に作ったり使ったりするものなんだよ」

「へ~、そうなんだ。じゃあ俺はちゃんと発動できたってことなのか?」

「うん、そうだよ。おめでとう伊織君」

「そうか、俺でも使えるのか...」


自分の手で札術を使ったことに伊織は感動する。

しばらくその感動に浸り火の玉を眺めていると、白雪が一冊の本を渡してきた。


「伊織君、これあげる」

「何これ?」

「札術の術式とか書き方とかが乗ってる本だよ。私も教えてあげるけど、家ではそれを読みながら色々勉強してみて?」

「なるほど、ありがとう白雪!」


白雪から渡された本をパラパラとめくってみるが、何を書いてあるか分からない。

これは本腰を入れて読んだ方が良さそうだなと思い、伊織は本を鞄へと仕舞った。


PV1000ありがとうございます!



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