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霊術訓練

少し短いです。

伊織が退魔士組合に加入してから数日が経過し、五月へ突入した。

今はゴールデンウィーク中で、伊織は毎日のように白雪から退魔士についてのあれこれを教わっている。


白雪から色々と教わっている日々であったが、変わらず妖魔には襲われている。

しかし一つ変わったことがあるとすれば、妖魔を倒したときにお金が貰えるようになったことだ。


「お、また振り込まれてる」

「良かったね伊織君」

「あぁ、シアナも結構食べる方だし本当に助かるよ」


妖魔を退治すると、伊織の持っている退魔士カードに自動で情報が送信され、退魔士組合へと直ぐに伝わるような仕組みになっている。

報酬は即日振り込まれる事になっているので、伊織の家計は大助かりだ。


退魔士になった伊織だが、白雪との関係も少し変化があった。


「そういえば白雪の階級ってなんなんだ?」

「ん~?そうだね~、内緒!」

「え、なんでだよ、教えてくれてもいいじゃん」

「ミステリアスな女性って素敵でしょ?」


そうドヤ顔しながらいう白雪にミステリアスな感じは一ミリも無い。


「そうか?」

「そうなのです!」


白雪は満面の笑みでそう答えながらさりげなく伊織の手を握る。

最近白雪からこういったアプローチが激しくなっていた。


「あの、白雪、手」

「だめ?」

「ダメじゃないです」

「んふふ~」


白雪は伊織の手を握りながら心底幸せそうな表情をしながら歩く。

その後も伊織は白雪に依頼について聞いていた。


「妖魔の退治依頼があるって聞いたけど、どんな感じなんだ?」

「そうだね~結構力のある妖魔が現れたりすると、退魔士組合から依頼が発生するんだよ」


退魔士組合では、全国各地で発生した妖魔の情報が集約されている。

そして妖魔を探知できる術を持った退魔士も在中しているため、妖魔が発生した瞬間に直ぐ退魔士が出動できるような環境になっていた。


「例えばどんな妖魔がいるんだ?」

「ん~そうだね~、有名なのだと天狗とか鵺が出てくると確実に依頼が発生するね。」

「へ~、本当に天狗とかって居るんだな」


伊織も今まで数々の妖魔や幽霊を見てきたが、未だそう言った有名な存在は見たことが無かった。

いつか見る機会もあるのかなと思うが、出来れば会いたくないなという気持ちもある。


「後は力ある存在が死後悪霊になっちゃう事もあって、その時も依頼がでるね~」

「力ある存在って?」

「退魔士的な人たちの事だよ」

「あ~なるほど」


退魔を生業にしている人々は、通常より霊力が多い。

そのため死後強い念を持っていると、普通ではあり得ない力を発揮する霊になってしまう事がある。

そう言った存在は総じて強い殺意や嫉妬などの悪感情を持っており、人類に害をなす。


「私も依頼で見たことあるけど、本当に強いんだよねそういう霊って」


白雪はかつて退魔士組合からの依頼で、そう言った存在の除霊を行ったことがあった。

その時相手をした悪霊は、生前退魔士組合の中でもかなり力のある存在だった。

そのため任務は合同で行われ、数多くの退魔士がいる中に白雪も参加していたのである。


「そうなのか、よく白雪が忙しいって言ってた時はやっぱり退魔士の依頼が入ってたからなのか?」

「そうだよ~、そうじゃなかったら伊織君の誘いは絶対断らないよ」

「そ、そっか」


そんなことを手を握られながら言われたので伊織は少し恥ずかしくなる。

白雪は相変わらずニコニコとした表情を浮かべていた。


「そ、そうだ、退魔士が妖魔を退治するのってどうやってるんだ?」

「ん~?そうだね~、大きく分けて二つあるよ、一つは霊術って言って自分の霊力を使って水とか火とかを出して妖魔を退治するの」


これは普段クシナが使っている術がそうだろうなと伊織は考える。

クシナは炎を使うことができ、伊織はよくその光景を見ていたので容易に霊術を想像できる。


「そしてもう一つは札術って言って、お札に術式を書いたものに霊力を流すことで色々な力を使うことが出来るんだよ」

「ふ~ん?例えば?」


札術は全く聞いたことが無かったのであまり想像できない。


「例えば道を照らしてくれる火の玉を出したり、霊力を代償に力を貸してくれる存在を呼び出す召喚術式とか、霊を祓う為のお祓い術式とかだね」

「へ~、そんなのがあるんだ」

「伊織君は妖魔と契約してるし、この辺はゆっくり学んでいけばいいよ」

「分かった、ありがとう白雪」


退魔士の事を聞きながら歩いていると、白雪と別れる道までたどり着いた。

伊織は名残惜しくもあったが、白雪の手を放して帰り道につく。


「じゃあね伊織君、また明日」

「あぁ、また明日」


伊織は白雪と別れた後、クシナへ話しかける。


『なぁクシナ、前に霊術を教えてくれるって言ってたけど、今日教えてもらう事って出来るか?』

『えぇいいわよ?たっぷり教えてあげるわね?』

『ありがとう』


退魔士になったこともあり、伊織はクシナやシアナに任せっぱなしは良くないなと考えていた。

そして白雪から退魔の方法を聞いたので、霊術を得意としているクシナにお願いする。

家に到着した伊織は早速クシナに霊術について教わる事にした。


「じゃあクシナ、よろしく頼む」

「は~い、任せてね?」

「まず何をすればいいんだ?」

「最初は自分の霊力を認識できるようになることね」

「自分の霊力...」


伊織は今まで霊力の存在を感じたことは無いが、霊力自体はかなり多く保有している。

自分の中に意識を向けてみるが、あまり違和感は感じられない。


「最初から自分で認識するのは凄く難しいの、だから私が流して上げるわね?」


そういいクシナは伊織の手を取り、伊織の中に霊力を流す。

すると、不思議と温かいものが伊織の手から流れ込むのを感じた。


「なるほど、これが霊力ってやつか」

「そうよ?それで霊力は丹田と呼ばれる場所で作られているの。だからそこに意識を向けみて?」

「分かった」


クシナに霊力を流してもらい、少しは霊力がどういったものか理解できた伊織は自分の丹田に意識を向けてみる。

すると、少しだが確かになにか温かいものが感じられた。


「あった、これが霊力か」

「そうよ、霊力は多く感じるかしら?」

「ん~?いや、少ないかな?」


伊織は自分の霊力は多いとクシナから聞いていたので、自分の感じる霊力が少ないことに疑問を持つ。


「そうね~、主様はずっと霊力が多い状態で過ごしてきたから、少し感覚が麻痺しているのかも知れないわね。でも霊力を感じる訓練を続けていけば、そのうち正確に分かるようになるはずよ」

「分かった、頑張ってみるよ」


そして伊織の霊術訓練が始まった。




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