慕われる理由
本編後です。ユウヤと結ばれているルートになっています。
そりゃ、スズエだけじゃ研究所の所長なんて出来ないわな……。
「いやー、実際さ、所長さんって理想的な女性だよなー」
とある男性社員がそんな話をしていた。もちろんそれだけならば、ほかの人も同調出来ただろう。
しかし、それが出来ない理由があった。
「ほかの女は愚痴とか言うし、料理も手抜きするし。その点、所長さんは……」
そう、ほかの女性社員のことを見下すような発言が目立つのだ。
「何?私達に魅力がないって言いたいわけ?」
「そりゃ、愚痴ばっかのブスに魅力なんて感じねぇだろ」
そんなことを言われてその部署の人達は気分が悪かったが、言い返したらうるさいため何も言えなかった。その部署のトップであるユウヤも困ってスズエに相談したぐらいだ。
「すみません、ユウヤ部長。この仕事を代わりにしてほしいんですが……」
ちょうどその時、スズエが兄とともに来てしまった。
「……うん?なんか雰囲気が悪い気がしますが……どうしました?」
もちろんそんな空気を感じ取れないはずもなく。スズエが首を傾げた。
「所長さんが理想的な女性だなって話してたんすよ」
渦中の男がニコニコしながらそう答えた。ほかの人達は睨んでいるのだが、それを気にする様子もなく。
「所長さんって愚痴らないし、何でもできるし、年収も高いし。本当に結婚したい女性っす。あ、おれと付き合うなんてどうっすか?」
一瞬、ユウヤから殺気が飛んできた気がする。スズエは「うーん」とうなって、
「無理」
と一蹴してしまった。
「だって、君の話を聞いている限りだと家の中でも愚痴を言ったらいけないんでしょ?無理無理、そんなの。私なんて毎日、家で兄さんと夜遅くまでワイン飲みながら愚痴を言い合ってるし」
ねぇ?とエレンの方を見ると「そうですね、いつもいろんな愚痴を言っています」と頷いた。
「それに、何でもできるって言っていたけど私も兄さんとかシルヤとか、いろんな人が支えてくれているから所長が出来ているのであって、そうじゃなかったら今頃所長なんてやっていないよ」
「え、でも所内では……」
「そりゃ、仕事だし。私が社員の前で愚痴ってもみんな困るだけでしょ?モチベーションも下がっちゃうし。そんなことも分からないの?」
「それに、そんな完璧な女性が仮にいたとして。年収が釣り合っていなければつきあいませんよね」
きょうだいに言われ、その男性社員は撃沈する。
「あ、そうそう。ついでに」
スズエはとどめとばかりにユウヤに近付き、
「私、ユウヤさんと付き合っているんですよね。だからあなたの望む「理想の女性」とやらにはなれませんね」
「そうそう。だから君、いつも恋人の前でそんな話をしていたんだよね」
ニコッと二人は笑う。男性社員は冷や汗を流した。
「今回は見逃してあげるけど、今度から部署の空気を悪くするような発言は慎みなさい。完璧な人なんていやしないんだから、理想を高くしすぎないこと」
あー、やっぱりいい所長さんだなぁ、とその場にいた社員達は温かくなった。
その日から、その男性社員は大人しくなったそうだ。




