タカシとペアだったら
そのままです。
つんけんしているスズエがいてくれたらいいな……。そしてユウヤと協力しているシーンが意外と珍しい……。
俺は緑髪の野郎に「死んだ」と言われ、理解が出来なかった。そんな実感はなかったが、人形だと言われてしまう。
なんかの箱に入れられ、蓋が閉じられる。どれぐらい経ったのか分からなかったが、不意に明るくなった。
目を開くと、茶髪の少女が覗き込んでいた。
彼女はスズエと言った。俺は彼女とペアらしい。……寂しげな表情を浮かべていた気がするのは気のせいだろう。
ほかの奴はこいつにかなり怯えていた。多分、あの緑野郎に「こいつのための舞台」なんて言われていたからだろう。でも、俺にはどうしてもこいつが悪い奴には見えなかった。
だって、こいつ親友が死ぬ時、兄貴が死ぬ時、あんなに泣いたんだぜ?どうでもいいのならそんなことしないだろ……?
どうしても悪い奴じゃないって信じたかった。
「タカシさん」
その時だった、スズエがこんなことを言ったのは。
「別に、無理して信じようなんてしなくていいですよ。信用出来ないのは当然なんですから」
その気持ちだけで十分だと言ったこいつはとても寂しそうだった。
「……それに、今はそっとしていてほしいの」
そっぽを向き、スズエは先に進んでいってしまう。あぁ、触れてほしくないんだとすぐに分かった。
不意に、手を握られる。驚いてスズエの方を見ると、
「こっちの方が、首が飛ぶこともないでしょう」
そう言ってゆっくり歩く。
スズエの心の傷を見てしまったのは、夜寝ている時だった。
スズエはずっとパソコンをかかっていたが、あくびをする回数が増えていた。
「おい……そろそろ寝ろ」
「ここまでやったら……」
「それ、さっきも言っていたよな」
どうしてもここまで終わらせたいらしい。しかし疲れがかなり見えている。
「……分かった、時間指定してくれたら起こしてやるから少し寝な」
「……それなら、三十分ぐらい……」
その提案にスズエはようやくベッドに横になった。
寝顔を覗き込むと、年相応の女の子って感じだった。
「……う……シルヤ……」
スズエの口から、親友の名前が聞こえてくる。
「会いたいよ……シルヤ……」
頬に光が見えた。
――あぁ、こいつ……。
ずっと、隠してきていたんだな……。
スズエはたびたび一人で過ごしていた。時々ユウヤとかいう銀髪と話していたり、ガキどもに構っていたりしていたが、単独行動が目立っていた。
スズエと二人になった時、俺は気になって尋ねた。
「お前さ、ほかの奴らと関わろうと思わないのか?」
それにスズエはキョトンとした後、目をそらして、
「……そっとしていてほしいので、別に……」
それだけ言って、パソコンの方に向き直った。
「……スズエ」
「気にしなくても、しばらくここから動かないので自由に行動してていいですよ」
もちろん、それは疑っていない。実際、何度か同じような場面になったが本当に動かない。トイレにも行っていないみたいだし、正直こいつ人間か……?と思ってしまうこともある。
「あ、スズエさん!またご飯食べてないよね!?」
……まぁ、銀髪のおかげでこいつがただ飲食していないだけだと分かったんだが。
「大丈夫ですって、ユウヤさん。人間食事抜いても数日間は生きてるし」
「そういう問題じゃないから!まったく……」
「まぁ、水は四、五日摂っていないと死ぬみたいですが」
「ダメじゃん!」
さすがツッコミ役、的確なツッコミだ。
なんて、そんなことを考えている暇はない。
「とっとと食ってこい」
「ここまで……」
「ダメだ、食え」
「しんどい」
「……おい、銀髪」
「了解でーす」
そこからは早かった。ユウヤがパソコンを素早く取り上げ、俺がスズエを抱き上げる。「おーろーしーてー」とジタバタしているが、体格差があるためそんなの関係ない。
「よし、行くか!」
「もうご飯の準備は出来てるからね!スズエさん!」
「なんで二人ともそんな笑顔なんですか!?」
なんでって、そりゃあお前に強制的に飯食わせるからだよ。
「スズエ、今回ばかりは飯食ってないお前が悪い……」
ランにまで言われ、スズエは大人しくなった。
どうにか飯を食わせた後、二人きりになったところでもう一度声をかける。
「なぁ、お前なんでそんな飯とか食わねぇの?」
その言葉に、スズエは目をそらす。
「……食べたくないですし……」
よく見ると、わずかに震えている。……なんかあるかもしれないな……。
「……なぁ、ここには俺しかいないから。なんかあんだったら吐き出してしまえ」
それに驚いたような目を向けられるが、やがてスズエの瞳から涙が流れ始めた。
「……もう、生きていたくない……」
「…………」
「ほん、とは死にたくて死にたくて……でも、カナクニ先生とか、兄さんとかに、約束したから……まだ、死ねない……」
……そう、か……。
「ごめ、なさい……本当は、言うべきじゃないって分かってるから……」
こいつにとっては、「生きること」こそが、呪いだったんだな……。
気付けば俺は、ギュッと抱きしめていた。
(大丈夫、俺だけでも……こいつを、信じる。こいつを、守ってやる)
そう、心に誓いながら。




