お出かけ ユウヤ編
最終日です。
ユウヤさんはもらった手袋をずっと大事にしてそう、というより絶対してる。
学校から帰ってきたスズエはすぐに着替え、ユウヤとの待ち合わせ場所に向かう。
「あ、スズエさん」
「ユウヤさん、遅れてすみません」
「大丈夫。むしろ連絡が遅くてごめんね」
ユウヤはスズエに任されていた仕事を終えた後に連絡したのだ。それを見たのが放課後だったため、慌ててきたというわけだ。
「どこ行きたい?」
「どこでもいいですよ」
「だったら、少しブラブラしようか。行きたい場所があったら言ってね」
そう言って、二人は歩き出す。不意にユウヤの手が赤くなっていることに気付いた。
「ユウヤさん、寒くないんですか?」
「うん?大丈夫だよ。実家ではこれぐらい寒いのは当然だったし」
そう言って笑うユウヤに、スズエは少し考えた後カバンを見た。そして、
「これ、よかったら使ってください」
緑の手袋をユウヤに渡す。
「え、いいの?」
ユウヤが驚いて尋ねると、「はい、いつものお礼です」とスズエは笑った。
「ありがとう、スズエさん」
早速つけてみると、とても暖かかった。
「これ、スズエさんのおすすめ?」
「はい、安いのに意外と破れにくいですし、暖かいんですよ。重宝しています」
スズエと同じ種類の手袋……それを考えただけでユウヤの心は踊った。
「あ、コンポタありますよ。買いましょう」
自動販売機を見つけたスズエがユウヤに呼び掛ける。「そうだね」と笑ってユウヤは二つ買った。
「えへへ……温かい……」
「うん。……どうだった?お出かけは」
尋ねると、スズエは「楽しかったです」と即答した。それならよかったとユウヤは思う。
「ねぇ、ユウヤさん。まだ一緒に行きたいところがあるんです」
「うん?どこ?」
スズエに手を引かれ、ユウヤは頬を染めながら微笑んだ。
白い雪が、二人を穏やかに包み込んだ。




