パワハラ、ダメ絶対
パワハラは絶対にダメです。
「所長さん……」
ある日、社員がスズエに相談しに来た。
「どうしたの?」
「実は……部長がパワハラしてきて……」
「なるほど……詳しく教えて」
促すと、彼は事のあらましを教えてくれた。
「なるほど……それは完全なパワハラだね。労基には伝えた?」
「いえ……」
「そっちにも情報共有してもらっておこうか。今度からはすぐに労基の方に相談して。そしたら調査しに来てくれるかもしれないからさ」
「え、でも……」
「こういうのは容赦しない方がいいよ。奴らは自分の地位が安定していることをいいことに無理難題を押し付けてくるんだから。今日は私も聞いたから、一緒に行こうか。改善しない場合は間に入ってもらおう」
そう言ってスズエは立ち上がり、車を出してくれた。
数日後、その部長が再び無理難題を押し付けているとスズエがやってきた。
「何しているの?」
「これは所長さん。いえ、私は彼らの成長のために……それに上司の命令は絶対でしょう」
また都合のいいことを……と睨んでいると、スズエはため息をつく。そして、
「まぁ、パワハラについてはやってもいいよ」
「え?」
「ただし、あなたも私の言うことは絶対に聞いてくださいね?」
「え、いや……」
「はい、は?」
「は、はい……」
「よし。じゃあ早速これとこれをしてもらおうかな?あ、今日中にお願いね?」
スズエがニッコリと笑って大量の仕事を押し付ける。そして「あ、もしもし?レイさん、何か仕事あります?」と電話で聞いていた。
「いやぁ、実は今日中に終わらせてくれるみたいで。あるなら持ってきてくれます?」
「あ、あの」
「なあに?上司の命令は絶対、でしょう?」
「さ、さすがに、この量を一日でなんて……」
「頑張れば出来るんでしょ?ほら、やってごらんなさいよ」
「こ、これはパワハラだろ!」
彼が叫ぶと、スズエは「はぁ……」とあきれた声を出した。
「分かった?あなたが彼らにやっていたのはこういうことなの。嫌だったでしょ?」
「あ……」
「これに懲りたならやめなさい。次やったら、今度はそれ相応の処分を与えるからね」
スズエはそう言って、自分がやる分の仕事を持つ。同時に、レイが仕事を持ってきた。
「すず……所長さん、持ってきたけど」
「あ、彼にやらせておいて。少し懲らしめておかないと繰り返すと思うので」
「了解。じゃあ見張っておくから」
「はいはーい。じゃあ私はレイ部長の分、やっておきますね」
「すぐ終わるからやらなくていいよ」
あ、許されていなかったと気付くまであと数分。