過保護すぎる人達
スズエに対しては過保護になります、この人達。
「所長さーん、これ取ってくださいー」
社員が困ったようにスズエを呼ぶ。彼女は脚立を持ってきて、
「はい、どうぞ」
それを渡そうとするが、バランスを崩してしまい、
「きゃあ!?」
「ちょ、所長さん!?」
脚立から落ちてしまった。
「……で、全治三週間の捻挫をしてしまったと」
「滅相もございません……」
ため息をつく兄にスズエは苦笑いを浮かべる。
あの後、ユキナから連絡が来たエレンは大慌てで病院に向かったのだ。
「エレン君、スズエが無理しないように見張っててね」
「了解です、ユキナさん」
「違和感があったり痛みが酷い時は来るんだよ。あと安静にね」
ユキナの指示を聞いた後、車に乗って家に戻る。
その日の夜。
「……あの、ユウヤさん?別にそこまでなら歩けますよ?」
「ダメ。君は絶対に無理するから」
なぜか恋人にお姫様抱っこでリビングまで連れてこられていた。
「スズエはそれぐらいされた方がいいよ」
「そうそう。じゃないとお前、絶対治り遅くなりそうだし」
いつもは止めるレイとランもそう言ったため、止める人がいなくなった。
「……あの、お風呂は」
「一緒に入るようユウヤに頼みます」
「いやさすがにアウトじゃないですかそれ」
「恋人だからオッケーです」
「アウトです」
この兄の基準が分からない。
「じゃあ、学校は」
「しばらくは送迎します。大学内もシルヤとラン君についていてもらいますから大丈夫です」
「仕事は?」
「事務仕事だけなら許可しましょう」
ダメだ聞く耳持ってくれなさそうだ。
「諦めろ、スズエ」
「恨むならボク達を呼ばずに怪我した自分を恨んだ方がいいよー」
シンヤとアイトに言われ、スズエは避けることの出来る大きな怪我は絶対しないと心に強く誓った。