ホワイトデー ユウヤバージョン
本命その一。
この初々しさが好きです。
「スズエさん、どこか出かけない?」
ユウヤに誘われ、スズエは「いいですね、どこ行きます?」と駆け寄った。
「そうだね……映画館とかはどう?」
「どんなのが上映されているんですかね?」
映画館に向かいながら、そんな話をする。不意にユウヤがスズエの手を握り、頬を赤く染める。
「ゆ、ユウヤさん?」
「んー?恋人だし、ちょっとぐらいね」
ニコッとわずかに顔を赤らめながら、ユウヤは告げる。それに一つコクッと頷いた。
映画館に来ると、アクションものがあったのでそれを見ることにした。ポップコーンや飲み物を二人で共有しながら映画を鑑賞していると手に触れた。
「…………」
「…………」
思えば自分達のしていることって間接キスみたいなものでは……?と思い至り、二人は火が出るのではないかと思うほど顔を真っ赤にする。
鑑賞し終わり、映画館から出る。
「は、恥ずかしいね……」
「そ、そうですね……」
この二人、まだキスすらしたことがないのだ。
人気のないところまで歩いていると、
「……や、やってみる?その、キス……」
ユウヤが小さな声で聞いてきた。スズエがコクッと頷くと、木陰に隠れてユウヤが優しく抱きしめる。
吐息を感じるほど顔が近付いたと思うと、人の声が聞こえてきてビクゥ!と震えた。
「…………」
「…………」
「……家でしようか」
「そ、そうですね……」
そう言いながら、ユウヤはスズエの手を触る。そしてポケットから腕輪を取り出して、スズエに着けた。きれいな月の飾りがあって、スズエは見とれていた。
「それ、ホワイトデーのお返し」
「あ、ありがとうございます」
「あとでマカロンを買って帰ろうか」
「はい、そうしましょう」
そんな約束をしながら、ユウヤは誰にも渡さないと強く抱きしめていた。