こいつ失礼すぎるだろ……
ママ友関係の話。
スズエちゃんの場合、普通にこんなこともありそう……。
「あ、こんにちは」
幼いフウと公園まで連れてきたスズエは先に来ていた女性に挨拶をする。
「こんにちは。今日もいい天気ですね」
「そうですね、子供も楽しそうで……」
いわゆるママ友というもので、スズエは多忙なファートルの女店主にも教えられるように彼女の双子も一緒に連れてきていた。
「蓮さんも大変ですよね、いつもいつも」
「そうですね、かなりのお嬢様みたいなので……」
まさかその「蓮さん」が成雲家の元ご令嬢様だとは思うまい。
それはさておき、子供達を見ながら話していると「ちょっと!!」と明らかに厄介そうな女性が出てきた。
「うちの子供が作った城を壊したんだけど!」
「え?ちゃんと見ていましたけど、そんな様子はなかったハズですが?」
「まったく、若い人は言い訳が得意ね!」
いや、あなたも若いですよね?とは言わなかった。
「本当に貧乏人は汚らわしいわ!」
「ちょっと、あなた!この人を誰だと」
「いいですよ、言わせておけば」
ママ友がいら立ちを隠せないのか立ち上がろうとするが、スズエは優しく止める。女性はそれが面白くないらしく、その時は去っていった。
それは、フウの通う幼稚園での出来事。研究所にも託児所はあるが、こういう集団にも慣れさせた方がいいだろうと話し合って決めたのだ。
その時は用事ごとの話し合いだったため、旦那であるユウヤも来ていた。スズエは所長として忙しい身、突然来ることが出来なくなってしまうかもしれないためこうして来るのが当たり前になっている。
「あら?この人が旦那さん?」
話し合いが始まる前、絡んできた女性がニヤニヤしながら近づいてきた。
「スズエ、この人は?」
「知らない人です」
ユウヤが聞いてくると、スズエがため息をつきながらそう答える。どうやら同じ幼稚園に通わせていたらしい。子供に悪影響がなければいいが……と思っていると、
「出世できなさそうな顔ねー。金銭面で苦労してそう、私の旦那なんて有名企業の役職よ。それに、あなたの子供障害を持っているみたいね?かわいそー、近付きたくないわぁ」
そんな失礼なことを言ってきたのだ。それにスズエから何かキレた音が聞こえてきた。
「ちょっと、何言っているの!?」
慌ててほかの保護者が彼女を止める。「でも、事実でしょ?」となおも笑っていたが、
「彼女、ホープライトラボの所長さんとその旦那さんよ!いつもよくしてくれて助かっているの!」
その言葉を聞いて、彼女は動きが止まった。
「えぇ。なのであなたの理論でいくとボクはあなたの旦那より上司ということになりますね。それから、その会社はうちとも取引している場所ですよね?そこの担当がボクなんですけどね?」
「え……?」
その反応を見て、スズエがため息をつく。「ちょ、ちょっと待って……」と女性は慌てる。
「お、お願い、許して……あの時だって許してくれたでしょ?」
懇願する彼女にスズエはニコッと笑う。
「……別に、私の悪口についてはどうでもいいですよ。
でも、大好きな旦那と子供の悪口を言われて許せると思います?」
あ、かなりご立腹みたいだ。
ここまで怒っているスズエなど初めて見た。相当許せなかったらしい。
「あー、怒らせてはいけない人怒らせちゃったね……」
ほかの人達は憐みの目を向ける。
後日、ユウヤが「これ、奥さんが無礼を働いてしまったお詫びだって」とカステラを持って帰ってきた。
「んー?旦那さんは知らなかったみたいだから気にしなくていいのに」
まぁありがたくもらっておこうとスズエはそれをフウのおやつにした。