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ピアノが繋ぐ物語
スズエは芸術系も得意なんですよね。
「カナ姉……大丈夫?」
カイトが心配そうにカナエを見ている。しかし、彼女はうつろな瞳のまま。
「……カイト」
カナエが同じ色の髪を撫でる。カイトは涙を浮かべながら「元気、出して……」と告げた。
「……うん、そうだね」
ギュッと、カナエは抱きしめる。この弟だけは、絶対に死なせない。
リビングにあるピアノが目に入る。祖父母が生きていた時はよく弾いていた。
久しぶりに触ってみる。カナエの今の心情を表しているかのように、悲しい音色だけが部屋に響いた。
「なぁ、スズエ。ピアノ弾いていいか?」
マミがうきうきした様子で声をかけてくる。スズエは「えぇ、いいですよ」と微笑んだ。
「なぁなぁスズ姉。あとでピアノ弾いてくれよ」
「えー?シルヤの方が得意じゃん」
「それ、言うと絶対驚かれんだよ……」
シルヤがガックリしているのを見て、エレンとスズエが笑った。
マミが弾くピアノは、未来を拓く強い力があった。