心優しき少女(スズエorラン編)
スズエは本当に優しい子なんや……(泣)
「こ、壊さないの……?」
スズエが手当てした後、マイカは怯えたように尋ねた。
「……っ」
スズエは一瞬泣きそうな表情を浮かべた後、マイカを抱きしめた。
「壊さないよ……っ!だって生きたいんでしょ……?」
「で、でも、私は人形だから……いなくなっても……」
「違うよ!」
スズエははっきりと否定する。
「あなた達だって、人間なんだよ……!だからいなくなってもいいなんて、そんな悲しいこと言わないでよ!」
その大きな瞳からは、大粒の涙が流れていた。
あぁ、こんなに大事に思われている。
一度は関係を壊しかけたというのに、それでもこうして泣いてくれるなんて。
「もう、誰かが死ぬなんて嫌なんだよ……!」
――あぁ、本当に、子供なんだなぁ……。
年相応の反応に、マイカはどこか安心した。
彼女は最期まで、心優しい子だった。
血に染まって息絶えている少女の亡骸を見て、マイカは涙を流す。
私、まだあなたに恩を返せていないよ。
私達を人間だって認めてくれたの、あなたしかいないよ。
ねぇ、なんで……あなたが死なないといけなかったの?
ペアの身代カードを盗んで、自分の命と引き換えに助け出した少女の表情はどこか、満足そうだった。
……私、あなたに助けられてばかりだったよ。
ごめんね、頼りなくて。ちゃんと、生きていくから。
その誓いとともに、胸の奥で何かが動き出した音が聞こえてきた。