子育て理論
スズエちゃんって本当に周囲をよく見ているよな……。
こういう上司が欲しい……。
ホープライトラボには、託児施設がある。
これは女性社員も気兼ねなく仕事できるようにするためだ。そのため、所長であるスズエも利用している。
そんなある日、珍しく食堂に来たスズエは子供が暴れているのに注意しない親を見かけた。
「あのさ」
スズエはその母親に声をかける。彼女は「どうしました?」と聞いてきた。
「子供が暴れまわってるけど、注意しないの?」
もちろん、スズエから注意するのは簡単だ。しかし、子供を叱るのも親の役目だとまず母親に伝える。すると彼女は「怒らない教育方針なんです」と告げた。
「怒らない?」
「はい、だって怒りすぎるのも子供に悪影響ですし」
それを聞いて、スズエは一つため息をついた。
「……あのね、確かに怒りすぎるのも子供には悪影響かもしれない」
「そうでしょう?」
「でもね、他人に迷惑をかけている時は怒らないと逆に非常識な子に育ってしまうよ。ほら、周りを見てごらん」
スズエの言葉に女性が見ると、迷惑そうに自分達を見ていることに気付く。
「それに、こんなことが続くのなら私もほかの社員のために別の保育園に預けるよう言わないといけなくなる。そんなことは避けたいから、出来たら子供が問題行動を起こした時は注意してほしいかな?」
でも、と反論しようとするとスズエの足元にフウとカナエが抱き着いてきた。
「おかーさん」
「どうしたの?フウ、カナエ」
「ぼく、いつもの部屋がいい……」
「そっか。だったら、料理長さんにご飯だけもらって戻ろうか」
スズエはそのまま二人を抱き上げ、「兄さん、ごめんだけど所長室に持ってきてくれる?」と伝える。そしてそのまま所長室に戻った。