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勘定

作者: 長万部三郎太

社会人であれば誰しも経験するであろう、接待の会計。


「では、ここはわたくしどもが」

「いえいえ、ウチに出させて下さい」


週末の飲み屋街はこのようなやり取りで溢れている。

隣に座っているのはそんな御社と弊社の関係にある2人組だ。


一見、穏やかな飲み会に興じているようだが、お互いに小さな恩を着せたいと心に秘めている。



夜も更け、宴もたけなわ。いざお会計となったとき、小柄な男はこう切り出した。


「御社にはいつもお世話になっておりますので、今日は僕に払わせてください」


大柄な男は慌てたフリをしながらもこう切り返した。


「いえいえ、弊社こそいつも御社には頭が上がりません。ここはウチが」


レジの後ろで待たされ、この押し問答ですっかり終電を逃したわたしは少しだけ口出しをすることにした。


「お二方の言い分はわかります。どうでしょう、ここはともに納得する方法で解決しませんか?」


酔いのせいだろうか、2人はきょとんとしたままこちらを見ている。


「今夜のお支払いはあなたが済ませ、それをお互いの手帳に書き残します。次回からは交互に支払うということで、飲み会の前に互いに手帳を見直して判断するというのはいかがでしょうか」


2人はわたしの提案に賛同し、今回は小柄な男が支払う運びとなった。



「それにしても、夜のお付き合いで御社のお世話になっていると知ったら、わたしは上司からどやされるでしょうね」



そう言うとわたしは自分の伝票を彼に渡して店を出て、浮いたお金でタクシーを拾った。





(筆休めシリーズ『勘定』 おわり)

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